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日本企業のROEを高めるには

 日本経済新聞によると、2024年3月期の上場企業の自己資本利益率(ROE)は9.7%前後と前期比0.5ポイント上昇する見通しです。これは2008年の金融危機後で2番目の水準となります。円安や値上げによる利益の押上げが資本効率を改善させています。
 しかし、日本の上場企業は近年8%付近で推移しており、欧米の上場企業と比較すると低水準です。その原因は、売上高利益率(ROS)の低さにあります。
 東証は、プライムとスタンダード両市場の上場企業全社に対し、資本効率や株価を意識した経営を行うよう通知しています。欧米企業に比べ低い日本企業の資本効率にメスを入れ、持続的な企業価値向上につながる経営改革の加速を促す狙いです。
 一般的に、ROEは8~10%を超えると優良企業だといわれます。日本企業であれば、8~10%を超える自己資本利益率を確保できていれば、経営の収益効率性は高いといえるでしょう。
 日本企業のROEを向上させるには、売上高に対する利益率を高める、少ない総資産で大きい売上高を達成する、資本調達における自己資本の比率を下げるなどの方法があります。ROEを高めるポイントは、ROEを売上高純利益率、総資産回転率、財務レバレッジという3つの要素に分解してみることです。これらの要素はそれぞれ、企業の収益性、効率性、安全性と捉えることができます。
 ROEの向上が目指すことは「資本コストを上回るROEを実現することで企業価値を高めること」です。 そのため、ROE向上は売上高利益率の向上を通じて行われるべきです。売上高純利益率を向上させるには、値上げ、販売数量を上げる、原価を下げるなどの方法がありますが、値上げの浸透がいちばん事例として多いと感じます。
 ROEを高める方法としては、当期純利益を増やす、コストを削減する、財務レバレッジを高めることがあります。経営者は自社の状況にあわせて、その時々にこれらの施策を行います。
 財務レバレッジを高めるには、負債を増やして投資を行い、利益増を企図します。この方法では自己資本比率の低下を招き、株主はより高い資本コストを企業に要求するようになります。
 マーケティングの分野では、新規顧客獲得コストは既存顧客の5倍のコストがかかるという「1:5の法則」と呼ばれる考え方があります。新規顧客の獲得には、広告や訪問などのアプローチ方法が必要で、既存顧客のリピート購入やリピート来店に比べると手間もコストもかかります。新規顧客は獲得コストが高いにもかかわらず利益率が低いため、新規顧客の獲得以上に既存顧客の維持が重要です。
 マーケティングの法則からいえることは、新規顧客の獲得よりも、既存顧客の維持に目を向けるほうが、より効率的に事業成長を遂げることができます。日本企業のROE向上に営業やマーケティング側にワントゥワンマーケティングを定着させることが最重要課題であり、最優先課題ともいえます。このことを経営者が学び、理解しなければなりません。ワントゥワンマーケティングを浸透させるのは経営者自らが先頭に立たなければならないからです。


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