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FOMCのドットチャート

 ドットチャートとは、米連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者が、米国の政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利で適切と考える水準を、それぞれ点(ドット)で示して散布図にしたものです。米連邦準備理事会(FRB)が年4回公表する政策・経済見通し(SEP)に含まれます。
 今後2~3年の金利見通しの他、長期視点でみた緩和的でも引き締め的でもない金利(中立金利)見通しも示します。ドット分布の中央値から、市場は年何回の利上げが実施されるかを予測します。FRBはドットチャートが政策意図を示す手段ではないと説明していますが、市場にとっては金融政策の先行きを予想する重要な指標と考えています。
 昨年12月のFOMC会合では2024年末の政策金利見通しの中央値が4.6%となりました。2023年末の予想(5.4%)との差を考慮すると、2024年に0.25%の利下げを3回織り込んでいることを示唆しています。9月時点の予測より利下げ幅が拡大したため、市場では早期利下げ観測が強まり、株高や国債利回りの低下につながりました。
 3月21日のFOMC会合では、2024年の利下げについて0.25ポイントを3回という従来予想を据え置きました。一方で2025年については、最近見られるインフレの上振れを踏まえて予想する利下げの回数を3回と、昨年12月時点での4回から減らしています。
 利下げ時期については直接的な回答は避け、初回利下げは年内のある時点で行う可能性が高いという従来の発言を繰り返しました。1,2月のインフレの上振れを示す最近のデータについては特に重大視せず、インフレが目標の2%に向かっているとの見解を示しています。利下げは、インフレ関連のデータをみて確信した時期に行われるのでしょう。
 FOMC参加者の予測中央値では2024年末の政策金利見通しの中央値が4.6%となりましたが、参加者の個々の予想は割れています。ドットチャートでは、年内に0.25ポイントの利下げが3回実施されると10人が予想した一方、2回以下と予想した当局者が9人もいました。バランスシートに関する議論も行われ、量的金融緩和の縮小は毎月最大950億ドルの縮小を継続する方針ですが、圧縮ペースの減速については、すぐにでも行われる見通しとパウエル議長は記者会見で述べています。
 今回の予測では、長期における金利水準の予想が若干上向きに修正され、中央値は2.6%と、従来の2.5%から引き上げられました。2024年のインフレ率と経済成長率に関する予測も、基調インフレ率が従来予想の2.4%から2.6%へ引き上げ、経済成長率も従来予測の1.4%から2.1%に引き上げられました。2024年の失業率は、従来予測の4.1%から4%へ若干引き下げられました。当局者の予測はあらかじめ決まった計画を示すものではなく、今後入手するインフレと労働市場のデータによって個々の予想は変化しますが、米国経済成長率の強さは予想以上なのでしょう。

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