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#01 川と橋


 ニューヨークは川とブリッジに囲まれた島だ。なぜか橋の下、いや、たもとでばかり住んだり、仕事をしたりしてきた。最初に住んだのはブルックリンのダウンタウン。まだ橋の間際ではなくて、ホイット・スケルマホーン駅からすぐのブラウンストーンの家に間借りしていた。

 そこから西に10分ほど歩くとブルックリンハイツがあった。対岸のマンハッタンを見渡す遊歩道がある、ブルックリンで一番ハイソな(当時)エリア。今ではブルックリンやクイーンズの川沿いはほぼ遊歩道化されており、珍しくもないが、当時はハイツ、遊歩道(プロムナード)、と聞くと、いつかそんなところに住んでみたいものだ、と思わせる優雅な響きを醸し出していた。

 そして、ブルックリンハイツやダウンタウンエリアから少し北に行くと、マンハッタンへ歩いて渡れる橋、ブルックリンブリッジがあった。なぜか2月の雪が残る晴れた日、念願叶ってブルックリンブリッジを歩いて渡った。当時ブルックリンブリッジと言えば映画「ソフィーの選択」で、撮影はこの辺りだったかな〜、とか考えながら。

ブルックリンブリッジが目の前、DUMBO地区

 その後、マンハッタンのど真ん中、西57丁目に住むことになったが、すぐに映像制作プロダクションを始め、会社のオフィスとして借りたのが、まだ開発前で安かったDUMBO/ダンボ地区の一室。結局マンハッタンから毎日ダンボへ通うことになった。オフィスを出て一分も歩けば、川。昔の線路跡が残る石畳、ブルックリンブリッジのあの優雅なワイヤーと鉄骨建築、重厚な石作りの橋桁が日常の風景になった。

 20年住んだ57丁目から、次に引っ越したのがウィリアムズバーグ。昔、ウィスキー工場だったという白い大きな建物を改築したアパートは西の端がイーストリバーに片足突っ込んでいる状態。昔は船着き場がそこにあり、出荷や荷下ろしをしていたのだろう。そのウィリアムズバーグは再開発が急ピッチで進み、あっという間に高級コンドが建ち並び、レストラン、ブティックが進出してソーホーの出張所かという趣に。

 次に引っ越し、今も住むのが、ジョージ・ワシントン橋のすぐ近く。うちを出れば橋が目の前。窓からも橋が見えるというアパートだ。別に川沿いでなければ、と条件を付けて引っ越している訳ではないのだが、なぜかイーストリバーとハドソン川という2つの大きな川の近くを渡り歩いてきた。でも、川があるとビルで遮られない風景があり、川沿いの公園をいつでも散歩できて、水の流れを見ると何となく癒される。次に引っ越すとしても(NY内なら)、やっぱり川沿いかなぁ。マンハッタンのハドソン川沿いはハドソンヤード始めすっかり高級エリアになったが、ハドソンハイツのこの辺りはまだまだ古いニューヨークが残っていてお気に入りだ。何度も歩いて渡ったブルックリンブリッジと同じく、ジョージワシントン橋も歩いて渡れるのだけど、行き先はニュージャージー、それにブルックリン橋より長そうで、まだ歩いて渡ったことはない。最近、自転車専用道が設けられ歩道も歩きやすそうなので、近いうちに渡ってみようかな。


ジョージ・ワシントン・ブリッジとハドソン川

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