NICU卒業

NICU退院までのお話、その2です。

カンファレンスが終わってから退院するまで1か月。
週3日ほど病院に通って皮膚処置やおむつ替え、授乳の練習をさせてもらいながら、退院に向けて在宅支援の申請をしたり、処置や日常生活に必要なものを買い揃えたり、部屋の片付けをします。

生後2か月

その間に、娘は生後2か月になりました。
皮膚の状態は変わらずですが、ミルクは良く飲めていて、体重も順調に増えていました。音に反応するようになったり、追視をしたり、月齢に応じた発達の様子も見て取れます。服を着て被覆材が隠れていれば、普通の赤ちゃんと変わりないように見えました。
成長を喜ぶ気持ちとともに、「でも、死ぬんだよな」という考えが浮かんでしまい、手放しに喜べないことが悲しかったです。

とはいえ、自宅での生活を想像しながら準備をしていると、徐々に家族4人で生活できることを楽しみに思えるようになっていき、「目に見えないけど変えられない事実」を忘れさせてくれました。


準備万端

退院カンファが終わったころには、だいぶ皮膚処置に慣れてきましたが、訪問看護の利用は1時間半のため、どうやって時間内に終わらせられるかが懸念事項でした。
(抱っこ、ミルク担当とは別に)看護師さんと2人で処置をしたり、被覆材の台紙を剥がして手渡してもらったりすれば1時間少々で終わることもありますが、私一人で処置するときはどうしても2時間近くかかってしまいます。

また、病院と自宅では設備やスペースに違いがあります。四方から処置できる病院のベッドと違い、自宅のベビーベッドは片側からしか処置できません。たくさんの種類の被覆材や保湿剤、薬を準備して処置をしますが、自宅には病院で使っているようなワゴンはありません。

※写真に写ってるのは一部。被覆材は切っておく。覚えるのも大変…

画像1

・処置の手順をノートに書きだし、効率良い処置の順番と動線を考える。
・必要な処置物品を狭い場所でも取り出しやすくする収納ケースを買う。
・不要なものを処分して大人が数人で処置できるスペース確保。

などなど、動線やレイアウトを考えるのは好きな作業なので、ちょっと楽しかったです。退院のころには皮膚処置もかなり上達して、事前準備を万全にすれば、1時間半で終わりそうなくらいまで早くできるようになりました。


寝なくなる

退院の2週間前くらいから、娘は夜中に泣いてなかなか寝ない日が続き、看護師さんたちを困らせていたようです。
生後2か月も過ぎた頃なので、寝なくなるのも当然かなという程度に思っていたのですが、よっぽど寝なかったのか、ある朝病院に行くと電動のベビーラックが導入されていました。ラックはベルトをつけた状態で揺れるものですが、ふわふわのマットを敷いて、ベルトを布で保護していただいおかげで、ラックによる水疱はできていないようでした。
ラックに乗せるとよく寝るらしく、自宅でもレンタルしたらどうかと言われましたが、電動のラックはレンタルでもなかなか高いので、保留にしました。ベビービョルンのバウンサーを持っていたので、まずはそれを使ってみることにしました。

病院では、娘のことはもちろんですが、母親の私の体調面やメンタル面をとても気遣っていただいていました。特に、娘が夜あまりに寝ないらしいので、私の寝る時間が取れないのでは・・と。一方私自身は、病気のこと以外はさほど心配していませんでした。息子は本当に寝ないうえに、起きている間はずっと泣きわめく典型的第一子な子だったので、昼間は寝かしつけもなくすやすや眠る娘が、夜に多少寝なくても平気だと思っていました。


はじめての輸血

生後2か月になった頃、初めて輸血をしました。
表皮水疱症は貧血になりやすいということは聞いており、処方してもらったお薬と、サプリメントを飲ませていました。ひどい時は輸血することになるという話も、事前に主治医から聞いていたのですが、思っていたより早かったのですこしショックでした。ミルクより母乳のほうが鉄の吸収がいいらしいから、頑張って完母にしたいな~などと考えていたのですが、そんなことでは間に合わないくらいの出血・浸出液の量なんだ・・・ということを、この時に思い知りました。

ちょっと笑う

輸血した日、処置のあと寝付くまでラトルであやしたりしていると、ふっと娘が笑顔になりました。突然で驚きましたが、それまで一度も笑顔を見たことがなかったので、本当に嬉しかったです。赤ちゃんの笑顔はほんと天使。

娘はあまり笑わない子でした。笑わないのではなく、笑う元気がないんだということに後から気付きました。
退院してから亡くなるまで、何度も輸血を繰り返しましたが、輸血をすると笑顔が出るようになります。今思い返すと、この時も輸血のおかげて笑えるようになったということだったのかもしれません。

個室での練習

いよいよ退院数日前、家での生活の予行練習として、NICUの中にある個室で娘と二人で朝~夜まで過ごす日を作ってもらいました。本当は宿泊して夜の様子も・・という話でしたが、息子がいるので調整が難しく半日だけになりました。うちは辞退しましたが、担当医師や看護師が自宅を訪問して、自宅での生活についてアドバイスなどもできるとのこと。退院までのサポートの手厚さに驚きました。

この日は、はじめてスリングを使ってみました。スリングの中で手足を擦ってしまわないか心配でしたが、問題なさそうでした。家に帰ると、息子の保育園のお迎えがあるので、スリングで両手をあけられるのは助かります。スリングに入ると、まるくなってすやすやと寝てくれました。

NICU卒業

こうして、2か月近くに渡る入院生活を終えて娘はNICUを卒業しました。思ったより長引いてしまいましたが、私が退院しても大丈夫と思えるまで、たっぷり時間を取っていただき、比較的スムーズに自宅での生活を始められたと思います。

毎朝2~3人、2時間近く看護師さんに処置をしていただき、夜勤明けの方に対応してもらうことも多かったので、お忙しいなか本当に申し訳なかったですが、みなさんとても優しくしてくださり感謝の気持ちでいっぱいでした。人の顔と名前を覚えるのが苦手なので、担当看護師さん以外はお名前が分からないままですが(汗)、退院後の外来でも声をかけてくれて、かわいがってくださることが嬉しかったです。

次は退院後の生活と、再入院するまでを書いていきます。

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