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躁鬱大学

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坂口恭平さんの躁鬱大学の連載をまとめました。
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記事一覧

躁鬱大学 その17 最終講義/それぞれのあなたへ

17 最終講義/それぞれのあなたへ
 
 いよいよこれが最後の講義になります。みなさんよく聞いてきてくれました。ありがとうございます。僕が躁鬱人について考えてきたことは大体話せたのではないかと思ってます。それはなによりもカンダバシ語録というテキストがあったからです。カンダバシの言葉があったからこそ、僕は躁鬱病という今までの自分の体の捉え方から抜け出し、自分が躁鬱人であることを自覚するに至りました。

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16 実例:躁鬱人の仕事の歴史(坂口恭平の場合)

16 実例:躁鬱人の仕事の歴史(坂口恭平の場合)

 さて、躁鬱大学でのこの講義もそろそろ終わりに近づいているようです。カンダバシの言葉をきっかけにしていろんなことを思いつくままに話してきました。躁鬱人であるあなたは、このあなたの体質が病気ではないと少しずつ気づいていっているはずです。最初の方でも話しましたが、きっと小学生くらいまではとても健康に過ごしていたはずなんです。僕自身も時々、落ち込んだり

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躁鬱大学 その 15 躁鬱超人への道

15 躁鬱超人への道

 さて、今日もカンダバシの言葉からはじめてみましょう。
「資質に合わない努力はしないのが良さそうです」
 ついつい躁鬱人は努力をしてしまいがちです。それはあまりにも適当な自分をなかなか受け入れることができないからでしょう。そんな自分ではだめだ、もっと他の人みたいに落ち着いていろんな物事に取り組めるようになりたい、なんてことを考えてしまいます。僕もそうなります。例えば、僕は作

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躁鬱大学 その14 孤独を保ち、いろんな人と適当に付き合えば、薬は要らなくなる

躁鬱大学 その14 孤独を保ち、いろんな人と適当に付き合えば、薬は要らなくなる

14 孤独を保ち、いろんな人と適当に付き合えば、薬は要らなくなる

 さて、僕の講義もいよいよ後半戦です。ここはひとつ落ち着いて、カンダバシのテキストを読むことにさらに集中していくことにしましょう。6段落目の真ん中あたりです。
「いろんな人と付き合えば、薬は要らなくなるか減らせます」
 躁鬱人について書いてある本、もしくは病院で医者から「薬は要らなくなるか減らせます」という話を聞いたことがあります

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躁鬱大学 その13 この道一筋な宮崎駿をぶっとばせ

躁鬱大学 その13 この道一筋な宮崎駿をぶっとばせ

13 この道一筋な宮崎駿をぶっとばせ

 さて、ずいぶん遠回りになってしまいましたが、久しぶりにカンダバシのテキストに戻ってみましょう。今日は6段落目から読んでみたいと思います。
「躁鬱人は我慢するのが向きません」
 はい。これはもう何度もこの講義の中でもお伝えしてきましたよね。とにかく躁鬱人は我慢が向いてません。でも苦手というわけではないんです。むしろ、相手の顔色をよく見て、その人たちが喜ぶよう

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躁鬱大学 その12 トイレを増やせば、自殺がなくなります

躁鬱大学 その12 トイレを増やせば、自殺がなくなります

12 トイレを増やせば、自殺がなくなります

 今回だけは特別に非躁鬱人も聴講することができるようになってます。とは言っても、今日も躁鬱人の特徴について話すことから始めるのですが。でも、今日の主題は躁鬱人だけでなく、非躁鬱人にも伝えるべきことだと思ってますので、こうやって、非躁鬱人の方もお招きしたわけです。はじめまして。躁鬱大学学長の坂口恭平です。さあ、今日も楽しくやっていきたいと思います。
 わ

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躁鬱大学 その11 灰になるまでセックスをする躁鬱人

躁鬱大学 その11 灰になるまでセックスをする躁鬱人

11 灰になるまでセックスをする躁鬱人

 鬱の時の過ごし方。これが一番知りたいのですが、どこを探してもありません。医者に聞いても教えてくれません。なぜなら彼らは躁鬱人ではないからです。躁状態のことをあれこれ書いてある本ならありますよ。北杜夫先生だってたくさん書いてます。でも鬱の時のことはあんまり書いてません。躁状態のことを書いてあるのを読んで楽しい時は、あなたは躁状態ですし、躁状態になると繰り返

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躁鬱大学 その10 鬱の奥義 三の巻/自己否定文には全てカギカッコをつけろ

躁鬱大学 その10 鬱の奥義 三の巻/自己否定文には全てカギカッコをつけろ

10 鬱の奥義 三の巻/自己否定文には全てカギカッコをつけろ

 心臓を落ち着かせるためには、座るんじゃなくて、横になるとお伝えましたよね。それだけでずいぶん楽になっていることがわかりますか? わからない場合は、一度立って確認してみましょう。とにかく、毎回毎回自分で体感して、実感を得て、気持ちよさ、心地よさ、楽になった感覚を覚えていくことが重要です。われわれ躁鬱人はそうやって心地よくなるのが、大好

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躁鬱大学 その9 鬱の奥義 二の巻/鬱の時の過ごし方 躁鬱人は医人である

躁鬱大学 その9 鬱の奥義 二の巻/鬱の時の過ごし方 躁鬱人は医人である

9 鬱の奥義 二の巻/鬱の時の過ごし方 躁鬱人は医人である

 鬱状態になった時に、どうやって1日を過ごしていくかってことは、躁鬱人にとって永遠のテーマです。僕が調べた限りではありますが「鬱の時の過ごし方」について書いてある本がおそらく一冊もありません。このことに関してはまだ誰にも解明されていないし、研究自体もほとんど進んでいません。しかし、躁鬱人にとって何よりも知りたいことがこのことなのです。と

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躁鬱大学 その8 鬱の奥義 一の巻/なぜ躁鬱人は鬱の時に「好奇心がなくなった」と嘆くのか?

躁鬱大学 その8 鬱の奥義 一の巻/なぜ躁鬱人は鬱の時に「好奇心がなくなった」と嘆くのか?

8 鬱の奥義 一の巻/なぜ躁鬱人は鬱の時に「好奇心がなくなった」と嘆くのか?

 さて、これまでは「鬱状態にならないためにはどうすればいいか」ということを考えてきました。しかし、われわれは躁鬱人です。どんなに避けようといろんな対策を立てたとしても、躁鬱の波は止まらず、常に移ろっています。それでも、これまでの躁鬱作法を楽しく取り込んでいけば、必ずやあなたの波は窮屈なところに押し込まれることなく、穏や

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躁鬱大学 その7 「自分とは何か?」という言葉はすぐに捨てて「自分は次に何がしたい?」と聞いてみよう。

躁鬱大学 その7 「自分とは何か?」という言葉はすぐに捨てて「自分は次に何がしたい?」と聞いてみよう。

7「自分とは何か?」という言葉はすぐに捨てて「自分は次に何がしたい?」と聞いてみよう

 さて、今日は時間割の話でしたね。早速はじめてみましょう。
 まずは躁鬱の波がありつつも、そこまでひどくはなく、毎日を健康に過ごせていた日のことを思い出しましょう。僕の場合、中学生くらいから波がひどくなったように感じます。高校生になると鬱っぽい気配も感じるようになった。しかし、小学生の時は健康に過ごしていたよう

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躁鬱大学 その6 躁鬱人に麻薬は全く必要ありません!

躁鬱大学 その6 躁鬱人に麻薬は全く必要ありません!

6 躁鬱人に麻薬は全く必要ありません!

 さて、今日は昨日話そうとしていたことから始めることにしましょう。
「中高生の時も好調・不調があったのに、なぜその時は破綻しなかったのか」ということです。もちろん、中高生のときからすでに破綻していたという人もいると思いますが、それでも波はありつつも、完全に寝込むまでには至ってなかった、という時間をみんな小学生くらいまでは過ごしているはずです。その「波はあり

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躁鬱大学 その5 記憶を思い出す時も「今から作り話をします」と前置きして話そう

躁鬱大学 その5 記憶を思い出す時も「今から作り話をします」と前置きして話そう

5 記憶を思い出す時も「今から作り話をします」と前置きして話そう

 さて、今日も講義をはじめてみましょう。次のテキストです。一段落めの最後の文。
「普通、中高時代より好調と不調の時期があったはずです」
 確かにそうです。僕自身、どうにもならなくなって、わけがわからなくなって、それこそ死にたくなって、心療内科に行くしかないと感じ、受診し、躁鬱病と診断を受けたのは2009年ですから、30歳のときです

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躁鬱大学 その4 資質に合わない努力はしないための吐露の術

躁鬱大学 その4 資質に合わない努力はしないための吐露の術

4 資質に合わない努力はしないための吐露の術

 さて先を進みましょう。次はテキストの5行目です。
「もともと和を大切にする人なので、つい自分が我慢してしまうのです。我慢して自分が窮屈になるのがいけません。そういう環境とは相性が悪いのです。我慢して何かをするという性分ではありません」
 躁鬱人は奔放ですが、それ以前にとても柔らかいです。さらに平和を重んじますから、そのためだったら平気で自分を変形さ

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