つづき

突然の異動が決まり、営業職のはずのひろちゃんは営業の業務からはずされた。

文字にすると「まあそりゃ異動になったんならねえ」と納得するしかないんだろう。

本人もそうするしかなかったんだろう。

異動先で、ひろちゃんは責任者の椅子に座らされた。
責任者ってことは下手なことをしたら責任を負うことになる。
なんでいきなり違う部署に連れて行かれていきなり責任者になってしまったのか、本人ではないわたしにはわからなかったけど、
地頭が良くて勉強もできて真面目なひろちゃんならできるだろうと上は判断したのかもしれない。知らんけど。

そして異動させておきながら前の業務の引き継ぎも行わせて今の業務の引き継ぎもうけて、
ひろちゃんはきっと疲弊していたと思う。

それでもまだ、月曜のひろちゃんは「多少元気がなく見えるな」ってくらいだった。
わたしたちが気付かないSOSがあったのかもしれないけど。
気付けなかったんだとしたらと思うと今でも悔やむ。

火曜のひろちゃんは少し苛立っていた。
ひろちゃんから引き継ぎを受けるそのちゃんは体調を崩していたのに無理やり出勤することになって元気がなかった。
営業とは全然違う役職なのになぜかわたしも補佐役になった。3人体制。
部長が午後からオフィスに来るか来ないかみたいな話になって、そのちゃんがなんとかして行きますって頑張ってくれた結果、
たまたまオフライン作業対応の当番(アナログの郵送請求書とかね、あまぞんぬの通販受け取りとかね、オフラインで出社しないといけない日もあるのよ)だったわたしに白羽の矢が立ってしまったのだ。

何が困ったって実はその日は休みをとっていたのに休みを返上せざるを得ない流れになってた。

反省してる。余裕なかった。

補佐とはいえ人前に立つのとか無理だった。しかもその日気圧おかしくて足腰弱ってたし。
うんわかってる、言い訳。

そのちゃんもわたしも、ひろちゃんが気を遣ってお昼ご飯を食べに外に出ようと声をかけてくれたのにOKと答えられなかったんだ。

今でも後悔してる。

そのちゃんが外でしっかりお昼食べるの無理なら、そのちゃんにごめんねしてひろちゃんと二人で気晴らしに外に出ればよかった。
わたしが足が動かない日があるのはひろちゃんは知っててくれたんだから、ゆっくり歩いて近所のいつものカフェ行けばよかったんだ。

気がついた時にはもう遅かった。


火曜夕方は、わたしは諸事情により仕事を中抜けした。
そのちゃんは1時間遅れて帰ったと聞いてる。
ひろちゃんは定時で帰った。
LINEには「先に帰るね」と。
いつも通り。

けど、このやりとりが最後だった。

この後のLINEは帰ってこなくなった。

わたしの中抜け後、そのちゃんが帰った後に何かあったのかもしれない。

さらにわたしもそのちゃんも翌日はオフィスにいなかった。

なにかあったのかもしれない。

そしてそれ以降のとある日に関しては確実に思い当たる節がある。

インターン候補の学生さん対応の予定が1件急に入った。
対応するのは営業のももちゃんと、ももちゃんに引き継ぎしてるひろちゃんのはずだった。

上層部の指示は
「オフィスに常駐してるやつも対応できるようになりなさい」(勤務先は基本的にリモート)

ももちゃんとタッグを組むのが超コミュ障で人と接するなんてとても無理って自他ともに認めているし見た目にも難ありだし話しゃどもるし頭の回転はおっそいし、対外の業務をさせるにはどう考えても悪手でしかない人間。

人をあまり悪く言わないように心がけているわたしが唯一バカにしたりこき下ろしてしまうほどのダメ人間。


わたしだったのですよ。


ひろちゃんの気持ちわかる?
自分のやりたい仕事を一番向いてないやつにやらせてあなたは下がってなさいって言われるって。
当日イノウエさんにレクチャーしたらオフィスにいてもいいけど業務には手出しするなって指示。
(ももちゃんはリモートでオフィスに来る学生さんと面談。まずもうそれなら営業さんたちでフルリモート対応でええやんとさえ思ってしまった)

そして何よりワタシはその日は元々通院で休みの予定だったのに強制出勤になり午後から勤務。
たった1ヶ月の間に休日返上強制が何回あるねん。
もうそこも意味がわからん。
さすが弊社。

通院後ご飯を食べる余裕もなくオフィスに行って学生さんが来る直前に急いでレクチャー。
気まずい空気。
あんなに冷ややかな態度のひろちゃん見たことなかった。


この日から、ももちゃんもそのちゃんもワタシも、ひろちゃんに口をきいてもらえなくなったのです。

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