タバコ臭いFF9

私はタバコとパチンコが趣味でいつもどこかに出かけて家にほとんどいない父と
過干渉で教育熱心で周りの子といつも比べてきて常に不機嫌な母親と
歳がそこそこ離れているためあまり多く遊べなかったけど気の合う姉と
気が強く風呂上がりいつも裸で窓の側に立つので母の怒りを買っていた祖母と
割と温和に見えるが実はしれっと暴言を吐く頑固な祖父
そんな家庭で私は生まれ育った。

友達に言われるのが「あの家庭で生きてこられたのが奇跡」「親ガチャ逆UR」などなど。
でも今回はネガティブな内容ではないことを書きたいのでこれらは一旦横に置きます。

私は昔から母親より父親の方が好きだった。
自分が親となって母親も母親なりに頑張っていたんだなと感じるが
その時は親の苦労子知らずというやつで、自由気ままに生きている風のような父親が
憧れもあり話していて面白くて2人でドライブに行くこともあった。

父の仕事は1日交代で家にいる・いないという職種だったため
仕事が終わったけれど家に帰らずそのままパチンコ店に向かうということがほとんどだった。
学校を体調不良で休んだのに母に言われパチンコ店に父親を探しに行かされたことすらあった。

父はゲームが好きだった。
そこも私は好きだった。
一緒にパーティーゲームをやることはなかったが、父も私も姉もそれぞれセーブデータを持っていて
それぞれの進め方でRPGをやっていた。

父はFF4でローザに私の名前、リディアに姉の名前をつけて遊んでくれて(これは姉が先に進めていたので自分の名前はリディアの方にしてと言っていたのだが)
父のゲームの世界の中に自分がいて遊んでくれているのがなんとなくくすぐったかった。
DQもFFも好きだったけど、どちらかというと父はFFを多くやっていたように思える。
父はラストエリクサーだろうが躊躇せず使う性格のため
ラスダン内でセーブしてしまい戻れない状態なのにラスボスで回復アイテムが尽きてクリアできないということが何度かあった。(今でも父に頼まれたのにサモンナイト2をクリアしてあげられなかったのが悔しい)
父とはゲーム以外の話もしたけれど、タバコ臭い父の隣に座って父の操作するゲームを見るのがとても好きだった。

FF9が発売され、新作だ!欲しい!でもお小遣いがない!ああああーとなっていたある日

その日も父は仕事終わりパチンコ店に寄って帰ってきた。
母からの小言を流しながら「ほら」と取り出したのは
タバコの臭いが染みついたFF9だった。

いつもパチンコで負けていた印象の父だったが、この日はゲームと交換できるまで勝ったのだろう。
嬉しかったのは、自分が勝ったお金だから好きなものを交換できるのにそれでゲームを選んできてくれたことだった。
もちろん父が個人的にやりたいからというのもあるのかもしれなかったが、私が日々欲しい欲しいと口にしていたのを覚えててくれたのかとか、一緒に遊べるように選んでくれたのかとか、そういうこと全てが嬉しかった。
「プレゼントって選んでいる間、私のことを考えてくれる。それが一番嬉しい」
この言葉はその当時知らなかったけれどその時の気持ちを言葉で表すならまさにこれだった。

父が帰ってきたのは夜中だったのに
父と一緒にタバコ臭いFF9を少しやってみた。

ワクワクするキャラクターと絵本のような温かみのある美しい世界観
すぐに私は虜になった。
もっとやりたかったけれど夜中だったので最初の森のところまでしかできなかった。
次の日は朝に弱い私もこんな楽しいことがあるのに寝ていられるかと超早起き。
その日からまた父と姉と一緒にみんなでゲームをそれぞれ進めていった。
FFシリーズは全部好きだったがFF9は手に入った瞬間の嬉しさも合わさり本当に熱中した。
徹夜でプレイした回数も数え切れない。FF9はその当時攻略本を出さないというスタイルだった。
攻略本がないとゲーム自体したくない私だったが攻略本なんていらないくらい自分でマップをメモして攻略方法を考えのめり込んだ。
あんなに夢中になったゲームは後にも先にも無いと思う。

ゲームはすごい。
うまくコミュニケーションの取れない時でも話ができる。
その時遊んでいる楽しい気持ちも全部残っている。

父が亡くなって10年
私の心に父はずっといて、私の中で生き続けている。
たとえ死のうとも、誰かの中で生きていたらそれは生きている。

本当にFF9と出逢えてよかった。
父に出逢えた人生でよかった。


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