【読書 #7】原田マハ「風神雷神 Juppiter,Aeolus」
こんばんは
mint(みんと)です。
1,2年前に友人に勧められてから、原田マハさんの作品を気に入ってよく読むようになりました。
今回は最近読み終えた「風神雷神 Juppiter,Aeolus」を紹介します。
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私がなぜ原田マハさんの作品にハマるのかを考えたとき、過去の歴史的な文脈と現代を結び付けて物語が展開していくところにあるんじゃないかと思っています。
今回の作品の場合は、現代を生きる俵屋宗達研究員の望月彩が、マカオで約400年前の絵画と古文書と出会うところから始まります。
その古文書をこれから読み進めようというところでプロローグが終わり、第一章は一気に400年前へワープ。
最後はまた現代に戻ってくるような形になっています。
読み終えたときに、歴史は過去の遠い昔の話だけど、結局自分はその蓄積の上で生きていること、つながっていることを思い出させてくれます。
そしてその歴史はどんな道を辿ってきたのか、想像させてくれるところが面白いんだと思います。
今私が知っている知識としての歴史は、実際にはなかったかもしれない。
私が小学生だったころに習った歴史と今の小学生が習う歴史は違ったりするように、歴史は時が経つにつれて、もちろん都合の良いに解釈されながら伝わってきたものもありますが、新しい事実として発見されながら伝えられてきたものでもあります。
このお話は事実とされている部分と原田マハワールドが混在することで、「もしかしたらこんな歴史があったかもしれない」「あったらいいな、楽しいだろうな」と思わせてくれます。
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今作は、登場人物のキャラクターが立っていて、より歴史をリアルに感じることができるようになっていると感じました。
例えば、俵屋宗達。
彼は江戸時代の絵師として実際に歴史に名を残す人物ですが、その生涯は謎に満ちています。
作品に彼の落款があっても制昨時期がわからない。
彼の作風を示し、制作時期がわかっても彼の作品であるという確固たる証拠がないなど、ヴェールにつつまれた絵師だそうです。
でも、小説の中の宗達はとても生き生きとしていて、闊達だけど、絵にかける思いは人一倍強い。表情豊かな人物として描かれています。
特に私のお気に入りのシーンは、狩野永徳のもとで屏風に京の街を描いていくシーンです。
はじめは間違いの許されない作品を前に緊張でなかなか一発目の筆を下すことができませんが、一度思いを決めると、筆は魚のように踊って描く描く描く。
目の前で宗達が金色の屏風に向かって一心不乱に筆を動かして、作品を泳ぐ姿が目に浮かぶようでした。
そして、誰もみたことのない「おもしろき絵」「己の絵」を描くんだという宗達の気概が伝わる印象的なシーンでした。
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上巻では主に絵師「俵屋宗達」の誕生と天正遣欧少年使節に彼が同行することになった経緯が語られ、下巻では使節の長い旅の様子が語られます。
使節一行はマカオやインドなどを通って、イタリア・ローマを目指します。
みたことのないものでいっぱいの世界を原マンショをはじめとする使節の少年と一緒に旅する様子は読んでいるこちら側もワクワクさせてくれます。
そして、宗達は見る人の心を打つ「絵」とは何か。「絵」の真髄に触れていくことになります。
今は東京・ローマ間は飛行機で14時間程度。
しかし物語は400年前。
船で何年もかけて、途中いろいろな場所に立ち寄り、船を出せる季節風を待ちながらの移動です。
(天正遣欧少年使節は、この旅の記録を残して日本に持ち帰ったという点で歴史上の重要な出来事と捉えられているそうです。それまでヨーロッパに渡ったことのある日本人はいても、帰ってきたという記録があるのは天正遣欧少年使節がはじめてなんだとか。)
そんな時代で、まるで生きてきた場所の違う人の全くみたことのない絵画をみたときの衝撃は、どんなものだったんだろうと想像するだけで、なんだか感動してくるようでした。
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他にもたくさん書きたいことはありましたが、今回はこの辺で。
美術は、歴史という大河が過去から現在へと運んでくれたタイムカプセルのようなものだー。
物語の終わりで古文書を読んだ宗達研究員の望月彩がこのように語ります。
この作品を読んで「そうだったかもしれない」夢物語をぜひあなたにも体験してもらいたいなと思います。
【今日のカバー写真】
村重寧 著「もっと知りたい俵屋宗達 生涯と作品」
伊川健二 著「世界史のなかの天正遣欧少年使節」
この二つをパラパラと読んで、参考にしながらこの記事を書いてきましたが、いよいよこの「風神雷神図屏風」を見ずにはいられなくなってきました。
京都最古の禅寺・建仁寺に最新のデジタル技術によって再現されたレプリカがあるそうです。
本物は京都国立博物館蔵。
次の京都散歩は、建仁寺になりそうです。
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