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『mine』〜ドロドロ系ドラマの新たなカタチ

5月の初めにnoteで「書きたくなった!」とあいさつしたものの、この3ヶ月間、プライベートで色々な出来事がありすぎて手付かずのままだったnote。

やっと落ち着いたので、本格的にスタートします(苦笑)。

記念すべき初投稿はNetflixで配信中の韓国ドラマ『mine』です。

韓国ドラマには'막장드라마=マクチャンドラマ'というジャンルがあります。

막장とはありえないような事が起こるひどい状況のこと。そこから막장드라마は、非現実的でありえないようなストーリー展開のドラマのことを指します。不倫、裏切り、出生の秘密、不治の病、三角関係などが定番のキーワード。つまり愛憎渦巻くドロドロ系ドラマです。

実は昨年秋からスタートし、ただいまシーズン3が韓国で絶賛大ヒット中の막장드라마があります。それは『ペントハウス』というドラマ。本国では막장드라마のラスボスとまで言われていて、それはもう笑ってしまうほど色んな事が起こり、見る側のエネルギーを奪っていくほど。私も身始めた時は、あまりにも疲れるので「イッキ見が出来ない初めてのドラマだわ〜」と思っていたんですが、気がついたらどっぷり沼落ち...。今では8月後半から日本の韓国エンタメ専門チャンネルKNTVで放送される最新シーズンの放送を心待ちにしております(笑)。

そんな中、韓国のケーブルチャンネルtvNで今年5月から放送されたのが『mine』。全16部作で最高視聴率は10.5%。日本でもNetflixのTOP10入りを度々果たすなど人気でした。

『mine』も一言で言えば막장드라마の一つ。けれどもこのドラマが『ペントハウス』と違うのは、固定観念を壊しイマドキ女性たちの圧倒的な支持を得たという点で新たなドロドロ系ドラマのカタチを作ったのではないかと思います。

広大な土地に大邸宅、一級品に囲まれ誰もがうらやむ生活を送っていた財閥ヒョウォングループ会長の長男ジノの妻チョン・ソヒョン(キム・ソヒョン)と、次男ジヨンの妻ソ・ヒス(イ・ボヨン)。しかし、ヒスの家に新たな家庭教師が現れ、さらには会長が倒れたことで事態は一変。さまざまな思惑や陰謀がうごめくなか、女性たちは自分が守るべきもののために動き出す...。

まずドラマの構成に惹きつけられます。というのも第1話のスタートで「誰かが死んだ」という事が明らかになる。視聴者は何が起きたのか、そして死んだのは一体誰なのか、という謎を抱えながらドラマの中盤まで釘付けに。そして誰が死んだのかが明らかになると、そこからはアガサ・クリスティーばりの展開。主な登場人物全員に殺意があり、一体誰がアイツを殺したのか?という謎解きも楽しめるサスペンスとしても一級品でした。

ですが、このドラマの本当に描きたかったことは、ジェンダーや偏見や血縁などに縛られず自分の生きる道を自分で模索し掴み取っていくという今の時代ならではの女性像です。

以前ならばドロドロ系ドラマの典型的かつ普遍的な女性たちというのは、お互いを敵とみなし、ライバルを陥れようとするのが主流でした。でもこのドラマは敵意を持っていた女性たちが、最後には手と手をとって共に闘っていく、という点でとても新しいのです。

もう一つ、このドラマで象徴的だったのはヒョウォングループ一家が暮らす大邸宅です。実はこのお屋敷がドラマの影の主人公とも言われるほど、今までにない程のスケールでした。

放送開始直後はあまりに広大で素晴らしすぎる邸宅の様子に『ヴィンチェンツォ』の第1話同様、CGで作られたのではという噂もありましたが、舞台として使われたのは江原道原州市の山の中にあるMuseum SAN。総面積は72000㎢で日本を代表する建築家、安藤忠雄氏が設計し8年かけて作られたというこのミュージアムをなんと丸々貸し切って撮影をしたそうです。

さらに本家カデンツァと分家ルバートともに隙のないインテリアのセンス。イ・ボヨンとキム・ソヒョンが身につける衣装の数々の素晴らしさ。ストーリーや俳優たちの演技力もさることながら、細々としたディテールまで見応えたっぷりでした。

ちなみに第1話から登場しドラマの鍵となるブルーダイアモンドのネックレスもこのドラマの為に製作されたもの。韓国の上流階級上位1%の人々が顧客という高級ジュエリーブランド'PANACHE CHASUNYOUNG'に昨年、イ・ナジョン監督から上流階級の人が好むようなデザインでとオファーがあり、今年の2月から製作に取り掛かったということ。元々ドラマタイトルは『ブルーダイアモンド』で考えられていたというほど、重要なアイテムでもあります。

イ・ナジョン監督は約4ヶ月間、韓国の上流階級の生活を徹底的にリサーチしたとあって、隅から隅まで上流階級の人々の生活を視覚的に捉えたドラマでもあるのです。

この完璧さが先に登場したドラマ『ペントハウス』とは違う点。

『ペントハウス』は笑ってしまう程のびっくり展開同様、ファッションやインテリアもびっくりするほどの成金趣味にしか見えない、のですが『mine 』の方はというと、もううっとりするほどのハイソサエティぶりにため息しか出ません(笑)。

そうそう、登場人物たちの喚き声も『ペントハウス』はうるさ過ぎて耳を抑えたくなるほどですが、『mine』は会長夫人とダメ娘以外は基本的に静か。そういう点でも洗練度が高い今までにない막장드라마です。

共に血のつながらない息子を持つソヒョンとヒスのそれぞれの母性。そしてそれぞれが隠し続けた秘密。その二つが呼応し、何事にも囚われず自分が信じる道を掴み取っていく。

2人がたどり着く結末に『mine』の文字が浮かび上がった時、女性たちの勇気を凛々しさに拍手を送りたくなる、そんな作品です。

まだ未見の方はぜひ。









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