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【第3戦 ~決着~ 】60cm級との闘い【うんこファイター☆ユウ】
「一難去ってまた一難」という言葉がある。
自らに降りかかった困難、自らに与えられた試練、それに対して力を振り絞って乗り越えた先に、また更に困難や試練が待ち構えている...。
2連続ぐらいならしばしばある気がするけれど、3連続、4連続ともなると、日常の中ではそうそうないでしょう。
考え方を変えると、人生そのものが、死ぬまでそうした‘乗り越えるべきもの’の連続なのだから、3連や4連なんてしょぼい数字でビビッてんじゃねえよ、とも思える。
誰が何を思い、その状況を迎えているのか?
それはその人や状況毎に違い、それを考えたり察したりするのは面白い。
真夏の深夜に駅の公衆トイレで、数時間も自分のうんこの相手をしなければならなくなった中学生が、今これを読んでいるあなただったなら、どんな気持ちでその状況に立ち向かっただろうか?
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【3rdステージ】
勢い良く滑り落ちた、60cm級のうんこ。
長い闘いはこれで終わりを迎えたかに思えた。
しかし。
和式便器の水溜りから、うんこは顔を出していた。
まだ流れ切っていない。
とどめを刺すべく、水流波を放つ。
しかしというかやはりというか、ここでもうんこは波を受け流し、平然とその場に留まり続けたのであった。
何度か水流波で様子を見た結果、悲しい事実に気が付いた。
先ほど使ってうんこと一緒に流れたトイレットペーパーが、うんこと便器の隙間に挟まり、うんこの滑りを悪くしているようだった。
先ほどのステージで奮闘してくれたトイレットペーパーくんが、今度は思いもよらぬブレーキとなってしまっていた。
トイレットペーパーはいずれ水に溶けて細かくなるだろうから、それを待つ手も考えられた。
しかし、もう既に相当な時間を費やしている長期戦だ。
トイレに時計は無いけれど、体感では1時間は経過している。
トイレを出たら朝日が昇っているなんてのはマジで勘弁してほしいっていうか、早く寝たい。
二芯流水流波!!
先ほどのステージを突破した技を、この局面でも試みる。
今回は、押し込んだ手応えがあった!
だが。
水流波に耐えたうんこは、元の位置に戻って来てしまった。
しかも、この一撃で、2本の芯は水を吸って、ふにゃり始めてしまっている。
さすがに...これ以上の武器は見当たらない...。
芯が完全に軟弱化して役に立たなくなれば、もうこちらに勝ち目はない。
自らの肉体をうんこに汚染される屈辱を受け入れつつやっつけるか...。
ライト★フィンガーを犠牲に、相討ちに持ち込む...その覚悟をそろそろ決める頃合いだ...。
なんとしてでも、このうんこはやっつける。
そう、強い覚悟を決め、二芯流での最後の一撃を放つ事にした。
先ほどの一撃は、手の水濡れを嫌がったために、押し込みがやや浅かった。
この一撃で勝てなければ、右手が犠牲になる事を思えば、最早それを恐れる意味など無い。
今度は深く、深くヤツを沈めてやろうではないか。
和式便器のタンク周辺が静かになった。
今夜何度目かわからないが、水が充填された合図だった。
行くぞ!
二芯流水流波!!
水面のうんこ2カ所に、1本ずつ筒を当てがい、深く押し込む。
水流が手にも当たったが、もうそれはいい。
行けぇえええええええ!!深く沈めえええ!!
水が流れ切った後、うんこは...
その姿を消していた。
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【最終ステージ】
やった...やっと終わった...。
水に濡れ、先端がうんこに塗れたトイレットペーパーの芯を両手に持ったまま、ユウは勝利の安堵を感じていた。
闘いの舞台となった和式便器は、先ほどの激闘が無かったかのように、元の姿に戻って...
ああっ!
うんこが消え去ったはずの、便器の水溜りをよく見ると、その奥にまだうんこが残っている!!
まだ流れ切ってねえのかよ!!
とてつもないしぶとさだ。
最早考えるまでもない程に、過去最強の相手。
水流波!!
水流波!!
水流波!!
タンクに水がフル充填するのを待ち、水流波を放つ事を繰り返す。
今回、これを何度試みただろうか。
通常の相手ならこれ1発で片付くし、多少の強者が現れたとしても、2~3発で消え失せる。
しかしこの60cm級の魔物は、水流波を悉く不発に終わらせてしまう。
いつ限界を迎えてもおかしくないトイレットペーパーの芯2本で、水奥まで押し込んでサポートしながら水流波を放つも、うんこはいったん姿を消した後、すぐまた戻って来てしまう。
ユウ:「ただいま~、おかえり~、じゃねンだわ。」
いい加減にしてほしい。
ほんまコイツ、いい加減にしてほしい。
堪忍袋の緒をぶち切って、暴れ回りたいぐらいムカつく。
いやさあ、でもさあ、自分が出したうんこにマジギレして器物破損って、それ前代未聞の恥だよね...。
こんな時こそ、冷静に考えよう。
このうんこは、見えない部分が結構長い。
流れきらないで、何かに当たって跳ね返って来てしまうわけだ。
ならば、折ってしまえばいいのではないか?
今までは、押し込んで流すための動きばかりしていた。
今度は、切れ目を入れて、折れるようにできないか?
ユウは、残っているトイレットペーパーを使い、手袋のように両手に巻き付けた。
うんこを押し込み続けたトイレットペーパーの芯の先端は、水に濡れてふやけていて、もはやうんこを切る力は残っていない。
しかし、今まで手に持っていた側ならば、まだ水の浸食を受けていない。
これで最後だ!
右手の芯で、うんこを押さえ、引っ張り上げる。
そして左手の芯で、うんこを切るようにえぐる。
だがしかし、とても頑丈なこのうんこのボディは、想像以上の抵抗を見せた。
硬い...切れない。
そうしているうちに、うんこはスルリと水中に逃げてしまった。
水流波を出してみたが、やはり効果が無い。
これまで通り、戻って来てしまう。
もう、イチかバチかだ。
先ほど同様に右手の芯でうんこを引き上げて押さえ、左手の芯で水中の部分をえぐりながら、水流波で奥に引っ張り込めば、さしものうんこも耐えられず分断されるのはないか?
ガション!ゴー...ドゥバババババババババババ!!
放たれる水流波。
巻き込まれる左手。
耐えて押さえ付ける右手。
2秒...3秒...その時だった。
トイレットペーパーの芯から左手に、うんこが切れた感触が伝わった。
もう、右手を離してもいい。
そのまま、そのまま流れてしまえ!!
水流が便器の奥へと吸い込まれる。
音が静まった後...
うんこは...
またしても戻って来た。
ああああああ...もうマジなんなんだよ。
消えろよもう芯もビシャビシャだし、手も濡れまくってるよ。
手に巻いたペーパーも濡れつつうんこ色に侵食されて気持ち悪い状態だしさあ。
辛うじて、手とか指とかはうんこ汚染されてないけど...あーもう...はあ...。
途方に暮れたユウは、呆然として脱力していた。
タンクに水が充填されてからもしばらく、何もできないでいた。
無気力となり、これ以上の手段を思い付く元気もない。
何も考えられなくなり、ただ虚しく、便器に水流波を命じるしかなかった。
ガボッ!!ゴゴゴゴゴゴーーーーッ!!
もはや諦めの境地に達していた和式便器の闘いだったが、便器の奥から今までとは違う、何かが外れるような音がした。
なんだろう?
水が全て吸い込まれた便器を見る。
そこには...
うんこの姿は無かった。
![](https://assets.st-note.com/img/1659006511357-HufdFOzccT.jpg?width=1200)
【帰還】
激闘を支えた芯は力尽き、ゴミ箱へと葬られた。
残されたペーパーは、芯を失ったまま、次の使用者に向けてセットされた。
帰宅後に手を洗い、うがいを済ませたユウの体には、噴き出た全身の汗が乾き、塩が付着していた。
Tシャツにも白い跡が残っていた。
服を着替え、時計を見た。
もう3時やんけ...。
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