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【第5戦】学生寮の夜【うんこファイター☆ユウ】

「持つべきものは友」という言葉は、まさにその通りだと思う。
友人に危機を救ってもらった事、逆に友人に迷惑かけられ大変だった事、それらとは違いどうでもいいようなくだらないエピソード...それら全てが、人生に起伏と厚み与えてくれる。

そんな友人達とよく遊ぶのは、やはり学生時代になるだろうか。
社会に出てからは各々の環境に制限されて、思うように会えなくなってしまいがちだ。

それでもいつか、また会う日があったなら、思い出を振り返って語り合うと良い。
友人はきっと憶えているはずだ。
あなたが忘れてほしい、恥ずかしい出来事さえも。



学生寮でラブロマンス起きるチャンスってどれぐらいの確率かな?



【親友と共に】

19歳になったユウには、親友が2人居た。
1人の名前はケン、もう1人はアキという。

保育園で出会い、そのまま高校まで同じ学校で過ごした。
高校進学を機に、それぞれ道が分かれる事となり、19歳を迎えたこの年、アキは故郷を離れて大学の学生寮に入っていた

そのアキが故郷に帰ったタイミングで、3人集まる機会があった。
その話の最中、「すげー暇」という理由で、アキは、ユウとケンに、「俺が学生寮に帰る際に同乗して遊びに来ないか?」と誘いをかけた。
同じく「すげー暇」な時期だったユウとケンは、片道8時間に及ぶその距離を、アキと共に軽快に飛び越えた。



PS系の覇権が確固たるものになりつつあった時代。


【白熱するゲームの合間】

時はPS2全盛期。
某大学の学生寮アキの部屋にて、3人によるウィニングイレブン2000の白熱した戦いが展開された。
やはり持ち主であるアキが最強で、その次に強いのが、これ以前のPS時代からアキにソフトを借りてやりまくっていたユウ。
ケンは3人の中では最弱であった。

しかしそんなケンは、三國志シリーズになると最強の漢となる。
当時発売したばかりの真・三國無双を、アキは大学の友人から、この2人のために借りていた。
ユウはプレイヤーレベルの面でこの2人に及ばなかった。

この2作品の他にも、3人でプレイしたゲームがある。
それは今でも「サクセスが名作」と評価されている、パワプロ1999だ。
これについては発売直後から、アキとユウの間で激しい戦いが繰り返されており、ケンを混ぜてもイマイチ盛り上がらなかったので、プレイ時間は短めだった。

これらのゲームを繰り返し遊んでいる最中、各人何度かトイレ離脱の時間があった。
今、これを読んでいる読者の方は、この時点でもうお察しだろう。
この学生寮のアキの部屋のトイレにて、ユウのうんこが炸裂したのである。



流れたはずのアイツが何度も戻って来るんだよォ!!


【うんこ炸裂】

実はユウは、これより以前に、アキに招かれてこの学生寮の部屋に来て泊まった事がある。
その際、部屋のトイレを使用していたが、特にうんこによるトラブルは起きなかった
自宅と同じ洋式便器で、自宅と比べると水流がやや弱いかもな、程度の違いしか感じられない。

なので、この日も特に心配する事も無く、普通に便を排出した。
以前の戦いで得た教訓から、出す前にちゃんと1度水を流したし、その後にうんこを流しきってから、尻を拭いたトイレットペーパーを流す、という手順を怠りなく実行した。


ところが。


この日のうんこは、全て終わったと見せかけて、静かにリバースして来やがったのである。
自宅と違い、うんこと闘う武器は限られているし、いちいちアキに使用許可を取らなければならない

何度も水流波をかましていたら、アキに気付かれてしまった


アキ:「まさか...トイレ詰まった?」


そのまさかである。

ここで誤魔化してもしょうがないので、ユウは正直に報告した。


アキ:「あーwww これは弁償してもらわんといけんなwww」


半笑いである。

この後、2人がトイレに行きたくなる度、「マジ困るわwww」「なんでユウのうんこ見ながら小便せないかんのかwww」などといじられる始末となった。



長い人生、突如として英雄になる瞬間がある。


【英雄誕生】

この事態を受けて、3人で出した結論は、しばらく放置して様子を見て、解決しないようだったら明朝に通水カップを買いに行く、というものだった。

当時貧乏だったユウにとっては、通水カップすら買いたくないぐらいに金が惜しかった。
けれども、トイレを使用不能にした張本人は自分だ。
ここは涙を飲んで、買うしかない、と、覚悟を決めた。

買いに行くのが明朝になった理由の1つとして、この時既に、ホームセンターが閉まる時間だったというのもある。
つまり、今この部屋に揃ってる物品で自力解決しない限り、まともにトイレを使用できるようになるのは、翌日にホームセンターが開くか業者が営業を開始する時間まで待たなければならないのだ。


アキ:「やべぇうんこしたいわ。でも今うんこできんからなwww」


他人のうんこが残る便器にうんこするのはなかなか嫌なものがある。
そして、そうした精神的問題を乗り越えたとしても、うんこにうんこを重ねてしまったら、より激しく事態が悪化するのは火を見るよりも明らかだ。

しかし、ここにもう1人、密かに何かの限界を迎えた奴が居た。


ケン:「うあー、もう小便が限界だわ。膀胱が破裂するわ。」


やべえ。
それはやべえ。


アキ:「ペットボトルあるでwwwこれにするかwww」

ケン:「それは嫌だわ。ユウ、うんこ詰まって水は流れんの?」

ユウ:「いや、水は流れる。ただ、うんこがリバースして来るだけ。」

ケン:「なら小便しても流れるでしょう。行ってくるわ。」

アキ:「やべえwwwこれ以上トイレ使えんくなったら、ケンにも弁償してもらわなんといけんくなるなwww」


しばらくして、ケンがこの部屋の洋式便器の渦巻き式水流波をぶちかました音がした。
「水が溢れるんじゃねwww」などと、半笑いになりながら、心の底ではガチの心配をしていた2人をよそに、ケンはサッパリした顔ですぐにトイレから出てきた。


ケン:「うんこ流れたで。」


え?
そんなあっさり?


アキ:「は?マジで?」


予想外の吉報を受け、部屋の持ち主のアキはすぐさまトイレを確認した。


アキ:「おーマジだわ。っていうか本当にうんこ詰まっとったん?」

ケン:「一応あったで。気にせず小便して流したら、戻って来んかったわ。」

アキ:「ケン、ヒーローだわ。」


ここに、英雄誕生した。
かくして、ケンの活躍により、某大学学生寮の、アキの部屋のトイレは救われたのだった。

なお、その後に再開されたウィニングイレブン2000の試合は、両チーム合わせて6名の退場者を出す乱戦となり、7-0でアキがケンを下したのであった。


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