【最終戦】アナコンダと納豆【うんこファイター☆ユウ】
世の中の夫婦は、どこまでお互いを知っているものなのだろう?
趣味や性癖は知ってて当たり前として、預金残高や恋愛遍歴あたりはパートナーに知られたくないという人も多いのではないか?
あえて訊かない、知ろうとしないというのも一種の愛情ではあるけれど、1度興味が湧いたらとことん追求してしまうのも人間のサガである。
パートナーがそれを求めてきた時、あなたはどこまで応じますか?
【うんこを見たがるツマ】
検便の際のやり取り以来、ツマはユウのうんこに興味津々であった。
ツマ自身は、自分のうんこと闘うなどという経験は1度たりとも無かった。
洋式便器の水部分を突き抜けて頭を出すうんこ、などという物が自分の体から出た事も、もちろん無かった。
それは一体、どういう状態なのか?
1度見てみたい。
しかし、夫婦とはいえ、うんこを見るというのはどうなんだろうか?
ツマ:「ユウしゃん、次はいちゅ、うんこ出ましゅか?」
ユウ:「1日半に1回ぐらいのペースかな。まさか、うんこ見ようとしてる?」
ツマ:「うーん、興味はありましゅ。でもなんか、見るのもどうかなって...。」
ユウ:「だよねえ。夫婦でも、お互いのうんこ見るかって...なんか変な話だよねえ。見て気持ち良いもんでもないしねえ。」
ツマ:「でしゅよねえ...。」
なんとも微妙だ。
お互い、恥ずかしいという感情はさほどでもない。
けれど、うんこを見せる、見せ合うというのはどうなんだろうか?
【うんこを見せたがるツマ】
夫のうんこへの興味はツマの中で依然続いていたけれど、そんな無理矢理にでも見たいというものでもなかったので、しばらくは特にアクションを起こさなかった。
それよりも腋の下の匂いをクンクンさせてもらう方がツマにとっては重要なのだ。
2人の間で、「うんこの事はまあいいか」という空気が出来つつあったある日...
ツマ:「ブフッ!ユウしゃーん、ブフッ!」
ユウ:「なんや?」
ツマ:「あの、見ましゅ?」
ユウ:「何?うんこ?」
ツマ:「はい、ブフッ!」
ユウ:「え?見せたいの?」
ツマ:「見せたいっていうか...ブフッ!ユウしゃんのうんこの話を聞いた後だとこれ...」
ユウ:「いやもうわかるから、わざわざ見んでいいよ。すごい小さいんでしょ?」
ツマ:「ええ...しょうですけど...」
ツマは、自分の出したうんこがとても小さかったために、ユウに見せようと思ったらしい。
これを機に、ツマのうんこへの興味が再燃した。
ツマ:「ユウしゃん、直接見るのは微妙なんで、今度うんこが出たら写真撮ってもらえます?」
ユウ:「いやそれ、直接見られるより嫌だわ。それぐらいだったらそのまま見せるわ。」
ツマ:「フフッ、フフフフフッ。」
【アナコンダ】
その日はやって来た。
ユウ:「あー、出たわー。見る?」
ツマ:「え?いいんでしゅか?」
何故だ、何故この女は、うんこを見るのにドキドキワクワク感を醸し出しているのか。
興味津々、だけどなんかちょっと怖い...ツマの表情からは、そんな乙女心が溢れ出ている。
その乙女心を向けてる対象、うんこだけど、それでええんか?
ユウ:「別に見てもいいよ。見んでもいいけど。ただのうんこだし。」
ツマ:「えー、しぇっかくなんで、見ましゅ。」
ツマは、うんこがあるという、トイレのドアを開けた。
そして恐る恐る、トイレの中に入り、便器を確認する。
ツマ:「ハァーーーーーーッ!!!?!?!?!?!」
ユウ:Σ(・ω・ノ)ノ!
ツマ:「えーーーーーーーっ!?」
ユウ:( ´Д`)
ツマ:「なんでしゅか、これ。」
ユウ:「うんこ...です。」
ツマ:「はぁ...(深いため息)...。」
ユウ:「そんなに驚く?」
ツマ:「え...だって...」
ツマ「これもう、アナコンダじゃないでしゅか。」
ユウ:「いやそれほどでもないでしょう。」
ツマ:「私のうんことは全然違いましゅ。」
ユウ:「そうか。そうだろうね。それはともかくもう流していい?」
ツマ:「流す前に、もう1回、見ていいでしゅか?」
ユウ:「あ、はぁ...どうぞ...。」
ツマはもう1度トイレに入り、うんこを見て、再び、「えーーーーーーっ!!」と感嘆の声を上げた。
その後、「はぁ...」と、脱力し、「信じられない」という表情をユウに向けた。
ツマはひとしきり驚嘆をうんことユウに向けた後、満足したのか、「なんか惜しいですけど、流してください。」と言った。
ドゥルルルルッ、ドジャアーーーーー!!!!
いつもの水流波に呑み込まれ、アナコンダは姿を消した。
【納豆】
ユウのうんこの大きさを確認したツマは、今度は自分のうんこを見てもらう番だ、と思っていた。
そこで、特に小さいうんこが出た時に...
ツマ:「ユウしゃーん、見ます?」
と、半笑いで得意げにユウをトイレに呼んだ。
ユウはツマのうんこに大して興味は無かったが、まあ付き合ってやるか、と、子供の面倒を見る感覚で、それを見た。
ツマのうんこは、犬や猫のそれと同じくらいの大きさだった。
それに対して特に感慨は湧かないが、ツマの機嫌を損ねてもつまらないので、「あー、同じ人間とは思えないね。」などと感想を述べて、ツマを満足させていた。
ツマは、自己最小を更新する度、ユウにうんこを見せたがった。
そのうんこのサイズが、ピンポン玉ぐらいになったあたりから、なかなか新記録が出なくなった。
そんなある日、ツマは、生体リズムの影響で瀕便気味になり、1日7うんこを記録した。
それは翌日にも続き、朝から立て続けに2うんこした後、昼過ぎに3うんこ目を放った。
ツマ:「ユウしゃーん」
ユウ:「んー?」
ツマ:「うんこが出たけど、見ましゅ?」
ユウ:「あー、見なくていいよ。どうせ小さいんでしょ。」
ツマ:「ブフッ!せっかくなんで...」
ユウ:「どんだけ見てほしいんだよ...。」
ツマ:「ブフッ!見ましぇんか?」
ユウ:「はぁ...わかったよ、見てあげるよ...」
実際、興味無いんだって。
健康であればそれでいいんだって。
うんこが小さかろうが大きかろうが、あなたが元気ならそれでいいんですよ。
フゥ...。
めんどくさそうに、ユウはツマのうんこを見た。
ユウ:。o(まるで納豆みたいなうんこだ)
ツマ:「ブフッ!ブフフーーーッ!!」
ツマは噴き出している。
自分のうんこが相当お気に入りらしい。
1粒の納豆みたいなうんこの、そのあまりにもショボ過ぎる大きさが、ツマの笑いのツボにヒットしたようだ。
【人類に幸あれ】
自らのうんことの数々の戦いを振り返ったユウは、今こうしてツマとうんこ見せ合い、感慨深くなった。
実家から引っ越してからは、何故かうんこサイクルが短くなった。
同級生もそうだったらしく、もしかしたら実家のある地域の水に原因があるのかもしれない、などと、同郷のケンと語ったりもした。
ベトナムに行った際にお腹を2度壊し、帰国したら屁がとてつもなく臭くなっていた、なんて事もあった。
朝ヨーグルトを生活に取り入れたところ、臭いの緩和とうんこサイクルの短縮に成功した。
便器も昔に比べたらずいぶん良くなったと思う。
うんこと付き合い、向き合う中で、人との繋がりや文明の発達をこうして感じている。
うんこ...常に自分と共にあり続けたこいつは、尊敬すべきライバルであり、友なのかもしれない。
世の中には、ユウの他にも、自らのうんこと闘い続けるファイターが居るだろう。
いつか、その闘いの記録をどこかに綴ってほしいと、ユウは願った。
この記事が参加している募集
昔から投げ銭機能に興味がありました。サポート(投げ銭)いただくと、モチベーションが高揚し、ノリノリで執筆できます。