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キングオブコント2023のネタを全組レビュー


現在、Tverで全編視聴できるキングオブコント2023に出場していた全組のネタをレビューしていきます。

1stステージ前半 | TVer
1stステージ後半 | TVer
ファイナルステージ | TVer



1stステージ前半


1.カゲヤマ

元々、彼らに対しては去年のKOC準決勝で披露したネタがゴールデンエッグスの動画からパクっているのでは?という疑惑があり、少なくとも自分の中ではその疑念が6~7割くらい濃厚という色眼鏡で見ているので今回もかなり警戒してネタを視聴した。

その結果、今回でカゲヤマというお笑いコンビは普段からパクリの常習犯だと確信したけど、彼ら自身そのスタンスを特に悪いとも思っていないんだろうし、このネタで決勝まで上げている準決勝の審査員も同じ見解なんだろうという。 
まあ、別に良いけど今のお笑い界はもはやそういう価値観で動いているんだなというのが見えたネタでした。

あと、「松屋の牛丼おごれよー」で、何か次のボケにつながるネタ振りかなと思っていたら、再度謝罪するときに「松屋の牛丼に味噌汁付けろよ!」→「松屋の牛丼には元々味噌汁が付いています!」って展開のオチで、単なるブリッジの為のフリだったんだなって。これも本当につまらなかった。

個人的な採点は、最低点が80点だけど早着替え「だけ」は予想以上に早くて面白かったのでプラス2点で、結果的に82点。


リアルタイムでカゲヤマの一本目のネタを観た時の私のファーストインプレッション。2回観ても全く印象は変わらなかった。


「お笑いディスり家ムラコス」さんも同じ意見だった。まあそうだよねっていう。



2.ニッポンの社長

トップバッターのカゲヤマに続いて、このネタも天丼系の繰り返しだったけど、最初のツカミがピークであとは予想の範疇の展開だったし、黒いカバンがある以上どうせ使う凶器が更にエスカレートしていくのも普通に想定できるから、ナイフや拳銃パートが長くてダルく感じる。さっさとより強力な凶器にグレードアップしろと思う。

で、この設定だと
「ケツはナイフや拳銃・ショットガン地雷などの凶器とか兵器に対しては無敵だけど、"ヒカリモノが苦手"とか実は意外なとこに弱点がある」
みたいな展開にしないと、話の流れが一方通行で単調な構成になる。

まあ、そもそも「単調なネタ構成」というのがニッ社のネタの一番の特徴で、しかも彼らは今回で4年連続のファイナリストという事で、準決勝の審査員の中にこのコンビを激推ししている人がいるんだろうなとは想像できるので、業界内の有力者に媚びる方向で考えるなら今のままでも良いのかもだけど…。

あと細かいとこだと、革ジャンのライダースを着ている人が、2ストロークの原付スクーターには乗らないと思うので、バイクの排気音BGMは250ccとか400ccのエンジン音にするべき。ここに関しては断言できる。

ネタはかなり単調な天丼系の繰り返しネタだったけど、ツカミは面白かったので85点。



3.や団

このネタに出てくる耳慣れない「インパーソネーション」という単語は、最初このネタ用に彼らが作った造語かなと思ったらどうやら偽装という意味らしく、次に出てくる「スラスト」は推力という意味でよく知られている単語で、「タウマゼイン」は驚愕って意味で僕は初めて聞いたけど、「アポリア」は普通に既存の哲学用語で、知名度の高いワードと低いワードをごっちゃ混ぜに使うのは元々これらの単語の意味を知っている人にとってはノイズにしかならない。
なので、こういう系のネタはどこにも存在しない造語を作って、そのワードセンスでウケを狙うべきというのは鉄則だと思う。

完全な架空の造語で勝負しないのは、ぶっちゃけ逃げたなと思うので印象は良くないし、ネタ展開も想定の範囲内のまま終わったので加点要素は無し。

しかし、唯一ガラス製の灰皿の動きは面白かったからプラス6点で86点。

審査員の講評的には、それまでの二組の天丼系ネタの方がインパクトがあって面白かったとのこと。
鉄板に負ける新しさなんて要らないってことか。まあ、そりゃそうか。



4.蛙亭

「公園のベンチで彼氏と通話中に急に別れを切り出されて泣く女」という前フリからの、「キックボードに乗って"スシ食いねェ!"を歌いながら買ってきたお寿司を運んでいると、転んで寿司を潰してしまった"KARIBU"と書かれたセーターを着た男」という出オチの展開は、意味不明すぎて理解が追いつくまで時間がかかると思うので、フリとオチの順番を逆に配置した方が良いのでは?

「キックボードに乗って"スシ食いねェ!"を歌いながら買ってきたお寿司を運んでいると転んで寿司を潰してしまった"KARIBU"と書かれたセーターを着た男」という中野の設定はほとんど多重ボケ(4重?)で、この時点でごちゃごちゃと混み入りまくっていて、彼が出てきた瞬間に、
「彼の出オチのボケを一つ一つ処理する展開のネタなのかな?」
と予想しながら観ていたけど、その一方で、最初の本筋のフリの部分である、「公園のベンチで彼氏と通話中に急に別れを切り出されて泣く女」という要素がどう絡んでくるのかと思いながら観る構成で、情報の交通渋滞が起こっていて少し無理があると思った。

で、注意深くネタを観察していても、中野の多重ボケを全然処理してくれない上に、更に「タマゴの概念コーデ」とか新たなボケ要素を追加してくるので、視聴していて消化不良というかぶっちゃけフラストレーションが溜まるばかり。
一体、いつ"KARIBU"について言及するんだっていう。結局最後までスルーだったけど。

別に寿司なんて潰れてもいくらでも新しいのを買い直せば良いだけなのに、そんな替えの聞く寿司が潰れたくらいで気が狂う中野が意味不明すぎて、終始置いてけぼりを食らった感じだった。

中野「そういう自分勝手に話を進めるところが彼氏に振られた原因なんじゃないの?」
イワクラ「あなたに何が分かるんですか!」
中野「知らないよ、初対面なんだから。他に思い当たるところでもあるのかい?」
イワクラ「無いですよ!」
中野「じゃあ聞きに行けよ、聞く相手がいるんだから!僕はいないよ聞く相手!何で潰れたのですかって、お寿司屋行って聞くのかな!バカでもしないよそんな事!聞きに行けよ!気にならないのか???」
イワクラ「気になりますよ!」
中野「何で気になるんだよ???」
イワクラ「好きだからに決まってるでしょ!!!」
中野「ぶつける相手は僕じゃなーい!!!」

この会話の展開の流れも意味不明。これを普通に理解して面白がれる人って果たして存在するんですか?
「理解不能なアタオカの演技がリアリティあって面白い」
という狙いだとは思うし、それ系は今大会でサルゴリラの二本目でもやっていたけど、そんなのは今どきネットでいくらでも晒されているので、何ら新鮮味がない。ホンモノのキチガイ観たかったらそっちに行く。
で、最後のオチも微妙。

他の出場者たちのネタは1~2分の超短尺が一番適していると思うのが多かったけど、蛙亭のこのネタは時間が足りなさすぎる。
元々かなり長いネタを無理やりKOC用に短くして詰め込んだのでは?と思うくらい不自然な構成だと思う。彼らが賞レースであえてこういうネタを選んだのは、最初から優勝よりもテレビのゴールデン枠で印象に残るネタを披露するのが目的だろうかとか邪推してしまう。

"KARIBU"と書かれた黄色のセーターは面白かったので84点。



5.ジグザグジギー

「新市長が元芸人でかなりの大喜利好き」って設定の時点で勝ちだと思った。

ちなみに、今大会の準決勝はめぐろパーシモンホール 大ホールというキャパ1200席の会場で行われたらしいけど、これだと後ろの方の席の人にはフリップが全然見えなかったのでは?と思うので、その意味でかなりテレビ向きのネタ。

こういう大喜利あるあるが普通に多くの人に解像度が高く伝わるというのは、やっぱりそれだけ伝統芸として既に成熟しきっているという表れだよね。
個人的にはフリップ大喜利自体も、ピン芸などで今や伝統芸として形骸化しているフリップネタもだいぶ前からお腹いっぱいという感じで飽き飽きしているけど、このネタは大喜利やフリップネタを茶化しているのでとても面白かった。

ネタ展開は、審査員の飯塚氏が言うような不自然さはそこまで気にならなかったけど、音響がお題を読んで前フリを担当するなら、ピンネタで成立するし、大喜利イジりオンリーで行くならむしろ一人の方が最適かと思う。

で、コンビでやるなら、山内氏の言うように大喜利以外での芸人あるあるっぽい言動にも展開した方が良い気もするけど、「新市長就任記者会見」という設定でどこまでそんなネタを入れ込めるか?と考えたら、やっぱりフリップ大喜利あるあるに絞って正解。

あと、細かい減点ポイントだと、「市長のクマへの対策を教えてください」の答えが「共存」のあとに、すぐに「捕獲して射殺」と真逆の回答を出したとこは全く面白くなかったし、多くの人もあそこは「?」になっていた気がする。

90点。


1stステージ後半


6.ゼンモンキー

なんか、東海地方のYouTuberとかに普通にいそうな三人組。
そもそも何で今どきお笑いなんてやっているのかとても不思議。謎すぎる。

ネタの設定も展開も終始どうでも良くて全く引き込まれなかった。
そんなコロコロと身近な男に乗り換えまくるサークラの尻軽女と付き合ってた彼氏も、乗り換え先の彼氏の親友も、弁当屋の尻軽女に一目惚れした非モテ陰キャ学生も、登場人物たちは全員女を見る目が無いってだけのネタじゃん。
もっと人生経験を積んでくださいとしか思えなかった。
女子中高生くらいの若い女に媚びまくったようなネタで、まともな大人の鑑賞にはとても耐えない。

非モテ陰キャ学生の演技は少し面白かったので83点。


7.隣人

「動物園のチンパンジーに落語の稽古をつける」という設定はとても引き込まれたけど、松ちゃんの言った通り師匠がチンパンジー語で稽古を始めるところがピークで、このネタはもっと短い尺で終わった方が面白いと思う。
それこそ四コマ漫画の題材くらいのネタかなと思った。

設定は普通に面白かったので91点。


8.ファイヤーサンダー

ものまね芸人を茶化したネタで、設定も展開も普通に面白かった。

なんか、あくまでも個人的な好みかもだけど、少なくともこれまで僕が面白いと刺さったネタは、「大喜利好きの新市長」と「チンパンジーに稽古をつける落語家」と「ものまね芸人の裏側」といった、これら全部フリップ大喜利や落語やものまね芸人という、もはや形骸化しているジャンルをイジった設定ばかりだな。
絶対にジグザグジギーも隣人もファイヤーサンダーもこれら伝統芸能を下に見ているやろ。

余談だけど、このネタは絶対審査員の飯塚氏は高得点をつけるだろうなというのが予想通りだったので、こういう容易に対策を立てやすいザルな審査員を置くのって果たしてどうなんだろうと、個人的には思わなくもないという…。

89点。



9.サルゴリラ

小道具を多用しまくるところはかなり気になったけど、二人の演技や、特にマジシャンの「ほんとですか」とか「あ、行けますよ」みたいなディティールの細かなワードチョイスが単純にとても面白かった。
このネタを観ていたら、なんか私人逮捕系YouTuberのガッツchで現行犯で確保されて晒されているリアル変質者たちの挙動を連想してしまうくらい、マジシャンの演技は憑依的だったと思う。
だからこそ、彼は家族持ちではなくて単身者の方がよりリアルだったんじゃないかなとか、そこだけが少し引っかかった。
でも、このくらいのリアリティのある演技がちょうど良い。後述するけど、二本目のサルゴリラのネタはかなりやり過ぎ感がある。

あと、やっぱりアイテムに頼り過ぎているのが勿体ないなとも思った。

93点。



10.ラブレターズ

個人的にはキャシィ塚本っぽくて好きなネタだけど、あまりにも元ネタに寄せすぎているのがどうかなとも思う。
このネタは全然賞レース向きじゃないし、ましてや1stラウンドラストにはよりによって最も不向きなネタで彼らにとっては不運だったのかも。
というより、このコンビも蛙亭と同じでハナから優勝とか全然狙っていない感が出まくっている。
その意味で堅実というか賢い立ち回りだなとは思うけど、ネタ尺はまるで合っていなくて不自然すぎる。

にしても、「隣人」というコンビが出ている中でラブレターズが「隣人トラブル」のネタをやったり、その隣人も「チンパンジーと落語家」というネタで「サルゴリラ」と被ったり、カゲヤマがケツを出すネタの直後にニッ社のケツが出てきたり、今大会は一体どうなっているんだ。

88点。



ファイナルステージ


ニッポンの社長

進行上の段取りトラブルで彼らのネタが始まるまでけっこう間を繋いで待つ時間が続いていたので、その時点で小道具などのセットに頼りまくったネタというのは予想がついて、なんか醒めた。

そもそも、ニッポンの社長って前から過大評価だと思っているけど、お笑い好きにとっての評価というか人気は高いんだろうな。
単にエモい感じの雰囲気を出しているだけだけど、もはや業界内でも誰も衰退産業のお笑いになんて大した期待をしていないって事なんでしょうね。
お笑い業界に何ら可能性が無いというのは僕も思っていることだけど、業界内で仕事をしている人たちにとっては、嘘でもブームを捏造しなくてはいけないのでエモさを演出するのに必死だ。

今大会最低点の81点。(僕の採点では80点以下は付けない)


カゲヤマ

パクリ確定芸人カゲヤマの二本目。

ケツ出しの次はウンコか。
設定も展開も全く面白くないし、何らセンスも感じない。
審査員たちは「今大会はレベル高い」と口を揃えて言っていたけど、こんな奴らが決勝に進出してファイナルステージまで残っている段階で相当レベルが低くて酷いというお察し案件だよね。
さっきのニッ社二本目のネタの時も思ったけど、この程度のネタのクオリティで良いなら半日もあれば台本くらいは仕上げられる自信がある。

で、これもまたどうせ審査員の飯塚がはしゃいで高得点付けるだろうなというのも案の定だったし、この大会というか番組に携わっている人たちは、多くの一般視聴者たちから既に見放されている現実をいま一度真摯に受け止めたほうが良いのでは?

85点。



サルゴリラ

設定もベタだし、展開も魚押しで一つのボケを引っ張り続けるしつこい系のネタで、こないだのENGEIグランドスラムでも他の出演者たちが使いまくっていた手法で、今のお笑い界のネタでの主流なんだろうなとは思うけど、もうお腹いっぱい。

このネタは、最初から最後まで終始どうでも良くてまったく惹きつけられなかった。そもそも魚じゃないし。

これなら、本物のアタオカをYouTubeで観ていた方が遥かに面白い。
今は、ネットで検索したらいくらでもガチの人たちを見つけられるからなー。

一本目のサルゴリラのネタの、不審者っぽい言動の演技はちょうど良いリアリティラインで面白かったけど、これはやり過ぎ感がある。

83点。


総評


・今大会の出場者たちのネタの出来は、賞レースのテレビ番組でやっている自覚があるのかと思うほど酷かったけど、審査員たちの必死の自画自賛で誤魔化す態度に辟易した。
松ちゃんは完全にオールドメディアのテレビ側の人間として今や伝統芸能にまで成熟したお笑いを今後も見守り続けるのだろうなと思う。

テレビバラエティの頂点として長年君臨し、伝統芸能化したお笑いのネタを暖かく見守り続ける番人のような立場の松ちゃん



・今年でダウンタウンは二人とも還暦らしいけど、浜ちゃんの言動がだんだん萩本欽一みたいだなと思った。
しかし、それにしても60歳での萩本欽一化はまだ早いのでは?

今年で還暦のダウンタウン。
松ちゃんも順調に衰えを感じるけど、特に浜ちゃんの老化もとい萩本欽一化が目立つ。

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