新しいジャンルが生まれる仕組み〜ダウンタウン結成40年に添えて〜

⁡⁡ダウンタウンが結成40年ということで、彼らの軌跡を辿るドキュメント番組がいくつかあったけど、個人的にどれもイマイチな出来栄えだと思ったので自分でも色々と考えてみた。⁡
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⁡けっきょく、ダウンタウンというのは新しいジャンルを開拓したことが凄いのであって、それでは、「どうやって新しいジャンルが発生するのか?」という仕組みについて、「モルグ街の殺人」を例にとって、具体的に説明していく。⁡
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⁡恐らく、ポーが、「モルグ街の殺人」を書くにあたって、最初に思いついたアイデアは、「犯人は、オラウータン」というものだったと推測する。⁡
⁡そして、「犯人は、オラウータン」というアイデアを提示するための形式として、「探偵が事件を解決する」を選んだのだ。⁡
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⁡「犯人は、オラウータン」を提示する形式は、他にいくつかある。例えば、バイオゴリラbotやキングコングみたいな話にすることもできたであろう。⁡
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⁡ポーが、『モルグ街の殺人』で「探偵が事件を解決する」という形式を選んだ理由は、主にリアリティの観点からで、つまり、「モルグ街で、未解決殺人事件があった!」と言われたら、聞いた人は、通常、「犯人は人間だ」と予測を立てる。その予測を裏切って、「実は、犯人はオラウータンでした」というのが、ポーの当初の狙いだったはずだ。⁡
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⁡実際、ポーが、謎解きの側面はあまり重視していなかったことは、作品を読むと分かる。『モルグ街の殺人』は、通常の探偵小説とは異なり、犯人が判明した後で、「一体、どうして犯人が分かったのかね?」「実は、〇〇という証拠を入手していたのですよ」と後出しで証拠を提示する。⁡
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⁡つまり、ポー自身は、「犯人は人間だと思ったかも知れませんが、実は、犯人はオラウータンだったのですよ」と観客の予測を裏切ることで、面白さを演出する娯楽作品を作る程度の意図しかなかったのだろうと思う。⁡
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⁡ところが、当時の読者は、『モルグ街の殺人』を読んで、「天才的な探偵が未解決事件を解決する」という所にカタルシスを感じたわけだ。⁡
⁡読者は、天才的な探偵に感情移入して、あたかも、自分が未解決事件を解決して、みんなから承認される話であるかのように読み捉えた。⁡
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そして、⁡ポーの『モルグ街の殺人』以降、「天才的な探偵になりきった私が、世間を騒がす未解決事件を解決して、みんなから承認される」という願望充足を図るジャンルとして、探偵小説が成立したという経緯がある。⁡
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⁡各ジャンルが備える形式は、もともと、最初期の作品では、おもしろさを重視した結果、出てきたものなのだと思う。⁡
⁡そして、それがたまたま、読者の願望充足に当てはまると、一つのジャンルとして、確立されることなる。⁡
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⁡恐らく、新しいジャンルが発生する仕組みの流れはそういう感じで、これをお笑いに当てはめると、「ダウンタウンになりたい」という若者たちの願望充足の欲求を作ったことで、彼らは新たなジャンル、独特のカリスマ的なポジションを築き上げた。⁡
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⁡創造性は、面白さを重視することで出てくるのではないか。商業創作では、新しい作品が常に期待される訳だけども、この「新しさ」は、面白さを重視することでしか出てこないのではないか。商業創作では、感情移入も重要な要素らしいけど、感情移入だけを重視している内は、新しさは出ないのではないか。⁡
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面白さを重視する態度と、創造的であることは、表裏一体なのではないか。⁡
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面白さを演出するためには、予測外の出来事を起こす必要がある。そして、単に予測外の出来事を起こすだけでいいのであれば、キャラクターは別に必要ではない。⁡
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⁡例えば、数学の面白さは、自明な命題からスタートして、非自明な命題が導かれる所にある。自明な命題からスタートしたら、一見、自明な命題しか導かれないと思われるけれども、予測を裏切って、非自明な命題が導かれる所が数学の面白い所で、そして、当然、数学にはキャラは登場しない。⁡⁡

⁡しかし、小説やマンガといった娯楽作品では、面白い場面、つまり、作中で、予測外の出来事が起こるときには、そこに、予測外の行動を取ったキャラクター、つまり、馬鹿キャラがほぼ必ず居合わせていることが多い。⁡
⁡面白い場面と馬鹿キャラは、ワンセットになっているように見える。⁡
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⁡ダウンタウンの笑いは、前者の数学的な発想の面白さに近いので、彼らの芸を考える時に後者のネタの構成云々に着目しても、どれも今ひとつピンと来ない所がある。⁡
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⁡#ダウンタウン #モルグ街の殺人 #新しいジャンル #面白さ

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