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フリーのかなフォントを公開 ~昭和前期の写植書体を中心に~

昭和初期から1960年代までの書籍に使用された書体の仮名部分をリデザインして、フリーのかなフォント素材として公開しています。

2024.1.22に長すぎるフォントファイル名を短く(「ゴシック」→「ゴ」、「教科書」→「教」)にし、カタカナだけ字面率の大きいフォントは「カナL」とファイル名を変更しました。ご不便をおかけしまして申し訳ございません。

戦前戦後の様々な書籍を参考にしながら、文字盤として現存せず途絶えてしまった写植書体を中心に制作しています。何百冊の書籍のうちわずか一、二冊しか印字例のないごく小さな不鮮明な文字も参考にしていますので、筆者の主観がかなり入ったフォントとなっています。

文字を入力しているかどうかわかりやすくするために、未制作の漢字等は「〓(ゲタ)」が表示されます。
フォントファイル名の末尾にW5とあるものは太ゴシックB101に合う大きさ太さに、W6は游ゴシックBやこぶりなゴシックW6に合う大きさと太さにしました。
武蔵システム(https://opentype.jp/)のOTEditを使って制作しています。

利用規定をご覧いただきご使用ください。



■オールド築12かな

石井中明朝体小かなの基となった築地活版の築地体12ポイント活字の仮名の復刻です。復刻に際してかなの文字が多くて鮮明な「少年数学史 上巻」をおもな参考資料とし、一部足りない文字やバリエーションは「藤村少年読本」や「少年宝さがし物語」「少年物理学史」「日本印刷大観 創業二十五周年記念」を参考にしました。
※「うおたでなぺ(カナ)ー(長音記号)」は筆脈や字形の傾き、デザイン等が気になったので修正しています。その修正前字形と、半濁点の位置の異なった「ぱぽピ」のバリエーションはルビ字形から出力いただけます。

更新履歴
V1.01「ヱヲ」の字形を修正しました。
V1.10 カタカナの太さのバラツキの修正と濁点の形状を見直し、「ピ」の半濁点の位置を一般的なものにしました。
V1.20 「〃」でくの字点を「仝」で濁点くの字点を出力するようにしました。縦幅を200%にしてご使用ください。数字0~9、記号()「」.を増やしました。
V1.30「ゑタヅピヱ」と数字7、濁点くの字点の字形を修正し、記号,+-×÷=を増やしました。「あ」の一画目のハネのアキがない字形を削除しました。
V1.31 数字の位置と1247の字形を修正しました。



■オールドゴ32かな

昭和7年、写真植字機が第四回発明博覧会で発表されて間もない頃の写真植字機研究所の太ゴシック体をリデザインしました。ファイル名の「32」は昭和7年(1932年)のことです。
カタカナは当時2種類ありましたがこのフォントはひらがなの大きさに合う小さめのものの方を参考に制作しています。(W5とW6は字面率を大きくしているため下記「オールドゴ32カナL」と大きさは変わりません。)
英字は当時太ゴシック体に合う太さのものがなかったようで、頻繁に使用されていた細めのものを参考にしています。



■オールドゴ32カナL

上記「オールドゴ32かな」のカタカナが違うバージョンで、上記のカタカナよりやや字面率が大きく当時の活字ゴシックに近いテイストとなっています。ファイル名最後の「L」は字面率が大きいというしるしです。このカタカナは戦後改良されることもなく、まったくみられなくなりました。

カタカナの字面率を確認しやすくするためフォントの大きさは「Regular」にしています



■オールドゴ50かな

昭和25年(1950年)に改良された太ゴシック体を参考に制作しました。そのひらがなは児童でも読み書きしやすいよう筆脈が省略されたデザインになっています。
カタカナは戦前の字面率の小さいものから変更ありません。英数字は戦後、太ゴシック体に合うものが制作されたのでそれを参考にしています。



■オールドゴ52かな

上記オールドゴ50かなと「と」「ど」のデザインだけが違う、昭和27年(1952年)5月に発行された児童百科事典(平凡社)から使用されている太ゴシック体です。この「と」「ど」を使った太ゴシック体はその後、児童書で頻繁に使われるようになりました。数字は児童百科事典で用いられるものを参考に制作しました。



■オールドゴ60かな

昭和35年(1960年)に改良された太ゴシック体小かなを参考に制作しました。昭和25年改良のものよりふところが大きく明るいイメージのひらがなになっています。カタカナは戦前の字面率が小さなもので引き続き制作しています。



■オールド教52かな

1952年頃から、戦後の明るい世相にあわせて、平安朝の古風なひらがなの字形から現代風の明るいひらがなの字形に改良された教科書楷書体が制作されました。起筆は従来の教科書楷書体と変わらず縦組みで非常に読みやすく親しみやすい書体です。光村図書の「友だち しんこくご二年下」(1952.11.1印刷)などから出版されました。明るく親しみやすい字形なので、教科書だけでなく低学年向けの参考書や図鑑、絵本など多くの児童書に利用されました。



■オールド教48かな

石井中教科書体は戦前の1938年に制作されたため旧字体や正字の多い書体でした。戦後の当用漢字制定により字形が変更され略字が増えましたが、それに伴い石井教科書体(当時の名称は教科書楷書体)も1948年に字形を変更しました。その仮名の字形を参考に制作しています。



■オールド教35かな

昭和10年(1935年)に発行された小学国語読本尋常科用巻五から使用されたいわゆる「文部省活字」のうち巻八までに使用された20ポイントの大きさのもの中心にリデザインして制作しています。ただし「科」は巻十、「飾」は巻十一から、小学国語読本で未掲載の「ぷ」と「ヌ」は尋常小学修身書から、カタカナの「ペ」は尋常小学算術一年下を参考にしています。横書きの「ー(長音)」は存在しないため作字しました。

種字は細字書家の井上千圃氏が書いていましたが、一字一字細かいところまで文部省図書監修官の各務虎雄氏から厳しいチェックを受けるため何通りも書いたそうです。各務虎雄氏はひらがなの活字を制作するにあたって、同時期に乙種小学書方手本の筆者であった仮名の書家高塚竹堂氏の意見(古筆に例がある書き方かどうか)を大いに取り入れ、平安朝のひらがな全盛時代の書体を基本として児童に適するように工夫したそうです。その苦労もあってか、この文部省活字はその後制作された写植書体の教科書楷書体だけでなく細明朝体ニュースタイルかなの前身である「細明朝体初期かな」に多大な影響を与えた書体でもあります。
詳しくは別記事を参考にしてください。

収録文字はひらがな・カタカナ・数字・記号少々と平易な漢字170字程度で、英字は存在していないため未収録です。詳しい使い方は別記事を参考にしてください。



■利用規定



・このフォントファイルは商用・非商用を問わず無償で使用可能ですが、フォントをそのまま使用したロゴ等の商標登録はご遠慮ください。

・このフォントファイルの著作権は制作者minosukeにあります。

・このフォントファイルを使用して制作された文字画像の形の編集はご自由ですが、フォントデータを基に新たにフォントを制作、改変ならびに再配布することはご遠慮ください。

・このフォントファイルを使用したことによるいかなる損害に対しても、制作者minosukeは責任を負わないものとします。