阿寒の森の間伐材の取り組みの意義

前回の投稿の続きのような内容になりますが、私がなぜ阿寒の森間伐材アート展を含め、間伐材の取り組みに力を入れているのかをお話ししておきます。

間伐材の取り組みは私たち作家にとって3つのメリットがあります。1つ目は「木材の調達ができる」、2つ目は「作家のコミュニティができる」、3つ目は「作品の発表の場ができる」ことです。

「木材の調達」でいうと、現在彫刻材として使いやすい広葉樹を扱っている木材屋さんは少なく、私は阿寒湖から100km以上離れた厚岸の木材屋さんから多くの材料を買っています。これが直ぐ近くで手に入ることはとても有り難いことです。

次に「コミュニティ」です。20年前くらいまでは阿寒湖の作家のコミュニティは親方を中心とした師弟グループでした。1人の親方に何人も弟子がいたのでそこでコミュニティが成立していたようです。また、人が多いときには世代でコミュニティが出来ていたりもしていたようで、今の50代の先輩作家たちはコミュニティが成り立っているように見えます。
しかし昨今はほとんどの作家が独立しても弟子を取れていない状況で、40代以降の作家はコミュニティが成立していない状況でした。そんな中世代を飛び越えて集まることが出来たのがこの間伐材の取り組みで、一緒に木を見に行くなかで先輩方から木の選び方を学ぶことができ、チェーンソーなどの使い方も学びました。また、作家同士の距離が縮まり交流も増えました。

最後に「発表の場」です。作家にとって発表の場はとても重要です。お客様に見ていただくことで作品の購入に繋がることももちろんですが、作家同士が作品を見合える環境があることで間違いなく実力アップに繋がります(作家はだいたい負けず嫌い)。
以前お話した三大巨匠の時代は阿寒湖をはじめ周辺の市町村でも賞レース的なものが随分とあったそうです。賞を競わないまでも互いの作品が一堂に会する場があれば、各々の心に必ず火はつきます。「阿寒の森間伐材アート展」はその役割を担ってくれました。

間伐材の取り組みは、私たち現在阿寒湖で活動している作家にとって重要な取り組みになりつつありますが、この取り組みが阿寒湖に根付けば、新しく入ってくる作家にとってもひとつの道筋となり、参入障壁も軽減されるだろうと思っています。「阿寒湖の木彫り文化を次に繋げたい」と思っている私にとって、間伐材の取り組みは重要なミッションになっているのです。

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