足立実の『ひと言』第47回　「団結万才！　メーデー」　1988年5月10日　

　いままで「働くものの団結で･･･」といっていた中央メーデーのスローガンを、「連合」がごういんに「連帯で･･･」にかえさせたという。団結も連帯も意味はそうかわらないと思うが、彼らはなぜ団結という言葉をきらうのだろうか？
　むかしはメーデーで「万国の労働者団結せよ！」というスローガンをかかげていたし、いまでも世界ではこのプラカードをかかげてデモをやっている。
　このスローガンの出どころは、マルクスとエンゲルスが書いた「共産党宣言」の、つぎのむすびの言葉である。
　「支配階級をして共産主義革命のまえにふるいあがらせよ！　プロレタリアはこの革命によって失うものは鉄鎖のみ。獲得するものは全世界である。
　万国のプロレタリア団結せよ！」
　なんと労働者に自信と勇気を与えるスローガンではないか。
　そしてエンゲルスらが一八八九年、全世界の労働者が五月一日いっせいに職場を放棄して、「八時間労働制」を要求してデモをやろうと呼びかけたのがメーデーのはじまりである。
　「連合」の親玉たちはさきに「万国の労働者団結せよ」をひっこめ、いま「団結」も消しさろうとしている。こんなことをして喜ぶのは自民党と資本家だけである。君たちはいったい誰に奉仕しているのか？
　団結は労働者の最大の武器である。
　足もとから団結をつよめよう！
　地域・全国の仲間と団結しよう！
　 全世界の仲間と団結しよう！

(画像は1920年の上野で開催された第一回メーデーに参加した労働者)

・・・・・・・・・・・・・・・・

注釈

・中央メーデー
労働組合の全国中央組織の再編による組織対立の激化で、1989年以降から統一メーデーの開催ができなくなり、日本労働組合総連合会（連合）と非連合系の全国労働組合総連合（全労連）や全国労働組合連絡協議会（全労協）による分裂開催となった。また、前後がゴールデンウィークで長期休暇を取る例が増え、労働組合活動が低調になってきて参加者数が減少したことを理由に、連合は2001年以降4月の最終土曜日もしくは昭和の日といった「4月（April）にメーデー（May Day）」を行うようになり、一方で全労連や全労協のメーデーは5月1日開催を続けており、その分裂と対立の構図は解消されていない。
尚、筆者所属の東京東部労働組合は5月1日開催日比谷の全労協メーデーに参加している。
参考
【メーデー】https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%BC

・マルクス
カール・マルクス【Karl Marx】1818～1883
ドイツの経済学者・哲学者・革命家。共産主義思想家・マルクス主義の祖。
著書に「哲学の貧困」「共産党宣言」「資本論」などがある。
『ひと言』第17回　「投降主義に反対しよう－全民労協批判」参照https://note.com/minoru732/n/n22a43b8d057c

・エンゲルス
フリードリヒ・エンゲルス【Friedrich Engels】 1820～1895
ドイツの経済学者、哲学者、革命家。マルクスと科学的社会主義、史的唯物論を創始。1848年にマルクスとともに「共産党宣言」を起草。マルクス死後は、社会主義運動に参加しつつ、その遺稿を整理して「資本論」の第2・第3巻を刊行。
著書「反デューリング論」「フォイエルバッハ論」「家族、私有財産および国家の起源」「自然弁証法」など。

・「共産党宣言」
共産主義者同盟の綱領として、マルクスとエンゲルスが起草した宣言。1848年2月発表。これまでのすべての社会の歴史は階級闘争の歴史であり、資本主義社会は自らが産み出した労働者階級により打倒されるとし、労働者の国際的団結を呼びかけている。マルクス主義の成立を示す重要な文献。
「一匹の妖怪がヨーロッパを歩きまわっている—共産主義の妖怪が」という冒頭の文と「万国の労働者、団結せよ」という結びの言葉が有名。

・・・・・・・・・・・・・・・・

5月にちなんでメーデーのコラムである。

このコラムの翌年から連合と非連合とで別々に中央メーデーを開催するいわゆる「分裂メーデー」となった。

筆者はメーデーのスローガンで「万国の労働者団結せよ！」という『共産党宣言』の言葉を引用し、このスローガンを掲げない連合を「こんなことをして喜ぶのは自民党と資本家だけである。君たちはいったい誰に奉仕しているのか？」た痛烈に批判している。

そしてそれから30年近くたった現在の連合は露骨に自民党にすり寄る「ナショナル・センター」に成り果てた。

参考
連合会長、自民党会合に出席へ(日経2022年4月12日記事)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA12BRF0S2A410C2000000/

連合の腐敗堕落は行き着くところまで行った感がある。