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足立実の『ひと言』第49回 「全労協の呼びかけにこたえよう」 1988年7月

 七月二~三日、「『連合』に反対し、まともな労働組合の結集をめざす」全国討論集会に参加した。予定を上まわる二四〇名の出席者で会場は熱気にあふれていた。
 市川誠代表幹事は「支配者は総評を解体できるとニンマリしているが、ドッコイそうはいかない。岩井さんの全国労働組合連絡協議会(全労協)提案が、大きくコダマとなり返ってくることを期待する」と挨拶。
 議長に吉岡徳次代表幹事と相原国鉄労組副委員長をえらんで議事を開始した。太田薫代表幹事が「機関車は大事にしなければならない。国労の不当労働行為反対闘争を中心課題としてたたかってほしい」とうったえた後、中里忠仁事務局長が経過報告、岩井章代表幹事が「全労協よびかけの提案」を報告した。 岩井氏はこの中で、「全労協は総評がやった春闘、三池など権利闘争、安保・ベトナム反戦や平和運動など積極面を受けつぐ全国的共闘組織だ。結成は地域・末端の職場からスタートし 下からの運動でつくっていきたい」という主旨の報告をした。詳しくは別掲のアピールを読んでほしい。
 討論にはいって、国労の宮坂書記長は、「清算事業団とJRの不当労働行為と闘いながら、総評大会直後に全労協の準備をは じめたい」という発言をはじめ、二日にわたり日教組、全国一般、全金、全港湾、東京・千葉・大阪・静岡・京都労研センターなど多くの発言があり、渡辺勉さんは、全労協はどこの国のどこの労働組合と連帯するのか、組合員が賃上げの一割を拠 出して地区労オルグを確保できるか、こういう中身の議論が必要だ」と主張した。
 近くひらかれる総評大会で来年解散が提案されるという情勢を反映し、みんな全労協をつくって労働者のための労働運動を守ろうという意気にもえていた。集会は参加者一同の名をもって、全国の労働組合に全労協結成のアピールを発した。(別掲)
 私は、東部労組はまさに全労協のスタート点の地域・末端にいるわけだから、「十月会議」や東部労研センターや七月一九日に結成される南部労研センターなどの人々と相談協力して地域準備会の結成を実践し、国労の全労協推進に連帯できるようにがんばらなければならないと思った。(実)

(画像は1989年12月の全労協結成大会)

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注釈

・市川誠
(1912年~1999)労働運動家。日本労働組合総評議会(総評)議長。)書記長。全駐留軍労働組合(全駐労)中央執行委員長
参考

【市川誠】https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%82%E5%B7%9D%E8%AA%A0

・総評
「日本労働組合総評議会」の略称。
『ひと言』第31回 「労働組合の四つの条件」参照https://note.com/minoru732/n/ncf81d25ce820

・全国労働組合連絡協議会(全労協)
1980年代末の労働戦線再編統一が進む過程で、1989年12月、日本労働組合総連合会(連合)にも全国労働組合総連合(全労連)にも加盟しない労働組合が結成した共闘組織。
全労協は、日本労働組合総評議会(総評)内でも連合結成に反対し、「たたかう総評」の伝統を継承しようという国鉄労働組合(国労)など左派組合が、総評三顧問(太田薫・岩井章・市川誠)が中心になってつくった労働運動研究センター(労研センター)の呼びかけにこたえ、「連合に反対し、まともな労働組合を目ざす結集体」として結成された。
毎年の春闘には積極的に取り組み、また東京その他の都市でメーデー集会を毎年独自に組織している。とくに国鉄闘争(国鉄分割・民営化の過程で解雇された1047人の地元復職を要求)支援は全労協結成以来の重要課題であった。ほかにも管理職・外国人労働者・女性労働者の争議支援や組織化にも熱心に取り組んでいる。
参考

全国労働組合連絡協議会https://www.osakazenrokyo.org/zZLJQY【全国労働組合連絡協議会】https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E5%9B%BD%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%B5%84%E5%90%88%E9%80%A3%E7%B5%A1%E5%8D%94%E8%AD%B0%E4%BC%9A_(1989-)

・吉岡徳次
全日本港湾労働組合委員長、全国港湾労働組合協議会議長

・太田薫
(1912年~1998年)労働運動家、元日本労働組合総評議会議長。元宇部窒素(現・宇部興産)企画課長。春闘方式を定着させた人物。
参考

【太田薫】https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E7%94%B0%E8%96%AB

・岩井章
(1922年~1997)労働運動家、元日本労働組合総評議会(総評)事務局長。国労出身
参考

【岩井章】https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A9%E4%BA%95%E7%AB%A0

・三池
三井三池闘争。三井鉱山三池鉱業所の人員整理をめぐり、1959年夏から60年秋におきた大労働争議。石炭から石油へのエネルギー転換政策を背景に、三池鉱業所がビルド鉱として存続するための「合理化」をめぐっておこった。しかし最大の争点は、1200人余の指名解雇者に含まれた約300人の職場活動家の解雇問題にあった。三池炭鉱労働組合では、この争議にいたる5年ほど前から職場闘争が盛り上がっていた。
参考

【三井三池争議】https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E4%BA%95%E4%B8%89%E6%B1%A0%E4%BA%89%E8%AD%B0

・清算事業団
日本国有鉄道清算事業団
1987年の日本国有鉄道の分割・民営化にあたり旧国鉄の債務を処理し、余剰人員の再就職を進めるなどのために設立された特殊法人。JR各社の株式や旧国鉄の不用地は国鉄清算事業団が保有し、逐次民間に売却して債務の償還にあてられた。1998年10月解散。再就職対策は1990年4月に終了。
参考

【日本国有鉄道清算事業団】https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E6%9C%89%E9%89%84%E9%81%93%E6%B8%85%E7%AE%97%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E5%9B%A3

・渡辺勉
全国一般労働組合東京南部書記長

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総評解散が目前に迫るなか、闘う労働運動の伝統を守ろうと全労協の結成を目指す一員としての筆者の意気込みがよく表れているコラムである。

全労協はこの当初の目標を掲げてその後も国鉄闘争を闘っていった。

※参考「別掲」全労協結成アピール

アピール
闘う仲間は全労協へ参加しよう!

 政府・独占による賃金抑制と行革合理化、人べらしと権利侵害、消費税導入と農業破壊、そして軍事大国化と政治反動など、いま労働者と勤労国民に対する全面的な攻撃が強行されつつあります。そうした中で、働く者の生活と権利、日本の平和と民主主義を守り、世界の核廃絶と軍縮実現のために果敢に闘うべき日本の労働運動は、いまや右翼的再編への大きな渦中にあり、その攻撃の的は闘う労働運動の中核である総評の解体に向けられています。

 昨年七月の定期大会において、「一九九〇年の統一ナショナルセンター実現、総評解体」を提起した総評指導部は闘う評労働運動の継承・発展をめざす左派の主張に対して、「見切り発車せず」との答弁を行ったにもかかわらず、いま総評自らの基本方針である統一四原則・七方針を放棄し、「五項目補強見解」や「三課題」など、労線統一の根幹に関わる多くの疑念をそのままにして、来たる七月二六日からの第七九回定期大会で、連合の「進路と役割」にす り寄った、いつわりの「全的統一」方針をかかげ、総評四二〇万組合員をあざむきつつ、八九年七月総評解体を決定しようとしています。

 一九五〇年七月の結成以来三八年間、総評は国民春闘の強化拡大を通じて、労働者と勤労国民の生活と権利を守りつつ反戦、反核、平和の旗を高くかかげ、反自民・反独占の闘いを発展させてきました。私たちはこの総評運動路線を断固として守りぬくとともに、総評労働運動を地域で支え、その歴史と伝統を守ってきた地県評と地区労の運動と組織を、なんとしても守りぬかねばなりません。 “闘わない・闘えない”労資協調路線の連合の運動では、労働者の利益も幸せも守れないのは明らかであります。したがって、私たちは「全的統一」を放棄した総評が連合への吸収合併を容認し、総評自らを解体することには断固反対であります。しかし、私たちのあらゆる努力にもかかわらず総評が解体された後の事を考えるならば、資本と闘うまともな労働組合の結集体の構築が緊急課題であります。

 私たち労研センターは、昨年秋、闘う春闘の構築をめざすまともな労働組合の結集をよびかけ、そのよびかけに応えて国鉄労働組合が中心となり、「八八春闘懇談会」が結成されました。 総評系、中立系の単産、単組、団体が結集した「八八春闘懇」は、闘う春闘構築をめざして大きな成果をあげ、「八九春闘懇談会」へと継承されました。

 こうした尊い成果を基礎に、私たちは再びここに「連合に反対し、まともな労働運動をめざす結集体」としての「全国労働組合連絡協議会」(略称・全労協)への参加を全国の労働者、労働組合に呼びかけるものであります。

 連合に反対し、闘う労働運動の再生と構築をめざす全国すべての同志の皆さん。

 単産、単組、地域の皆さん。そして、中小企業、臨時、パート等で働く未組織の皆さん。

 日本の新しい明日への希望の持てる、まともな労働運動の構築をめざして、ともにスクラムを組もうではありませんか。

 労研センター全国討論集会に結集した全国の同志の総意にもとずき、私たちはここに「全労協」への結集を通じて総評運動が蓄積してきた正しい労働運動を継承・発展させていく決意を明らかにするとともに、より多くの仲間に、この「全労協」に参加し、ともに前進することを心から呼びかけるものであります。

一九八八年七月三日

労働運動研究センター全国討論集会

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