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福祉系webサイト「ふくはぴ愛知」、業界に革命か

福祉の界隈でヘルパー不足の常態化が死活問題となっている。不自由な彼らにとってヘルパーは生活に欠かせない存在であり文字通りの「死活」となる。
そのような業界に革命をもたらすコンテンツが愛知県から生まれた。それが福祉系webサイト「ふくはぴ愛知」である。

これは一言で言えば「ヘルパーと利用者をつなげるマッチングサイト」だ。

今回、ふくはぴ愛知を運営をするOLDROOKIEの代表である松元拓也社長とスタッフの林さんにお話をうかがった。


私が松元社長から「ふくはぴ愛知について手伝ってほしい」と言われたのが先日のことである。
彼はもともと寝たきり社長で有名な佐藤仙務が代表を務める株式会社仙拓の副社長をしていた人物で、現在は独立してOLDROOKIEの代表を務めている。
OLDROOKIEはweb制作などが本業であったが、現在では訪問介護事業もてがけており単なるIT企業にとどまらない。

彼とは知人の紹介で知り合ったが私のnoteの記事を気に入ってくれたのを機にとある企画で声をかけてもらった。
その件を通して交流を持った矢先の申し出である。相談内容はふくはぴ愛知YouTubeアカウントをいかに伸ばすかアイデアを考えてほしいということだった。
内心で「私なんかでいいのか?」と思いつつ、こちらも「何か新しいことがしたい」という気持ちがあったので快諾した。

こちらはふくはぴ愛知について公式の情報でしか把握していないのでスタッフの林さんに説明をしていただくことになった。
打ち合わせのリモートに映った林さんは愛想の良い30代の男性である。
YouTubeの公式アカウントの動画(下の転載の動画)からもわかる通り話好きな方である。
自己紹介の際に奇遇にも私を含めた3人が同世代というのもあり打ち合わせは終始良好な雰囲気で進んだ。


まずふくはぴ愛知について林さんが立ち上げの経緯から順に説明していただくことになった。
林さんは福祉の本業を他に持っていてふくはぴ愛知の有志のスタッフだとここではじめて知った。

林さんと松元社長はもともとヘルパーと利用者の関係だったという。当時からゲームをしたり外へ遊び出かけたり公私共に付き合いがあった。その関係は一年ほど続いたという。
松元社長が介護事業を始めたのをきっかけに彼のヘルパーを離れた。その後は友人としての付き合いが続いたという。

林さんはその後も福祉業界に身を置いていた。彼は業界のヘルパー不足を憂いており、自身の仕事の進退について松元社長に相談する中でふくはぴ愛知の構想が生まれたという。

「ヘルパー不足って情報不足ですよね。マッチングすると面白いですよねっていう話を松元さんにしたところ松元さんが『それなら俺作れるよ』って。LINE電話で話してたんですけど(笑)」

冒頭で述べた通り、ふくはぴ愛知はヘルパー(正確には事業所)と利用者を繋ぐマッチングサイトである。
ヘルパーは事業所に所属している人が多いが最近はフリーランスのヘルパーも多いという。そしてフリーランスのヘルパーも利用可能とのこと。フリーランスとふくはぴ愛知との相性は良さそうである。

利用者と言っても障害や体格などによって求めるヘルパー像も変わる。ヘルパーなら誰でもいいというわけでもない。

「例えば利用者さんのがたいが大きい場合、女性の方はちょっと無理だよねとか、どうしても福祉用具でその賄えない部分があるからどうしてもやっぱり男性ヘルパーじゃないと支援は無理だよっていう特徴的な部分あるじゃないですか。それもアピールできる。逆にヘルパー募集する際にいったヘルパー募集していますっていう風な募集要綱というかそういうアピールもできる。」

また林さんは続けて、逆に事業所側が利用者を募集する際も利用者側にヘルパーのアピールができるという。

「ゆくゆくはですね本当に選べれるほど、ヘルパーがこう情報が集まってくれれば 一番嬉しいんですけど。」

おそらく林さんは福祉の事業者側から問題を見ており、松元社長は利用者側から業界のヘルパー不足という問題を見ていたのだろう。
そうでなければこの構想は生まれないはず。幸いにも二人の相性は良かったようだ。それは少し話をしただけでもわかった。

林さんは次のように言い切る。

「ふくはぴが普及すれば事業所の質が上がるし、ヘルパー自身の質が上がる。正しいかどうかですけど利用者の質も上がる。」

また、林さんはヘルパー不足の原因に情報不足があるという。彼は次のように語る。

「何が原因かっていうと全然情報化できてなくて。本当に狭いコミュニティで例えば事業者側だと連絡会っていうのがあって。ケアマネさんとか相談員さんと連絡コミュニティでしかあけられなくて。営業って言っても利用者さんいませんかっていうケアマネ、相談員さんへの地道な営業で、ヘルパー派遣できますよっとか、ヘルパー欲しいですよっていう情報ってこのネット社会で情報化してるのにかかわらずいっさい出てこないんですよね。」

よくある例として同じ県内でも市の中でしかコミニュティがなく隣の市の情報が入ってこないことがあるという。
あまり普段使わないが「流動性」という言葉が思い浮かんだ。ヘルパーも情報も出入りが少ないのである。
「ヘルパーが事業所をやめてしまい困っている」という話を知人からよく聞く。辞められてしまっても代わりの人がすぐに見つかるとは限らない。

ヘルパー不足の問題を解決しようと考えた二人はOLDROOKIEのIT企業としての持ち味が福祉に活かせることに気づいた。

「(松元が)web系ITを福祉に取り入れたいとOLDROOKIEを作ったんですけど。いつかはそういうことをやりたいといっていたのがふくはぴ。どストレートに。」

福祉にITを取り入れたいと思っていた松元社長が「ふくはぴ愛知」という形で実現させたという意味である。

ここで少し説明したい。

私は2023年の2月(記録が間違ってなければ)に松元社長に一度リモートにてインタビューをしている。その頃から私は複数の身体障害者に話を聞き障害について本質を探ろうとしていた。

当時の拙い私の問いかけに対し、初対面であるにも関わらず彼は腹を割って答えてくれたのをよく覚えている。

当時のインタビュー内で訪問介護を手掛け、ふくはぴ愛知を発進させようとする松元社長に「世のため人のためとかそういうビジョンがあるんじゃなくて自分がやりたいからやると?」と質問した。

私から見た彼は自分のやるべきことを優先する人間であり、福祉業界に参入するにしても「世のため人のため」というタイプの人間ではない。
事実として彼は当時のインタビューにて「もともと福祉の世界に興味はなかった」と答えている。

松元社長は利用者として福祉の世界にいたが、次第に福祉業界の非効率な慣習に疑問を抱くようになったという。
彼は以前にも福祉業界に合理化をもたらすべくヘルパー向けのwebサービスを発信したがそれは空振りに終わった経緯がある。

障害者のためという気持ちが皆無ではないにしても、一番の動機は非効率な福祉業界に革命をもたらしたいという点にある。

「障害者のために福祉業界を変えたい」という理由と「不合理に対する不満」では結果的にどちらも「障害者のため」になるとしてもだいぶ意味合いが異なる。
私の知っている彼は後者でありここを誤解すると「松元拓也」という人間を誤解しかねないので強調しておきたい。
もちろんこれは私の主観での解釈であるが的外れな解釈では無いと思う。

さて、もう少しふくはぴ愛知のしくみについて聞いてみよう。

ふくはぴ愛知は利用者側の負担が0円である。それではコンテンツとしての収益はどうなっているのか。

ふくはぴ愛知は公式サイトの他にXとInstagram、YouTubeにアカウントを開設している。
公式からの発信によれば同コンテンツの収益は広告によって賄われている。これはスタッフの林さんの説明にもあったので間違いない。

話を聞く限り現時点ではあまり儲かってるわけではないようだ。現時点では慈善事業としての側面が強いという。
ふくはぴ愛知が世の中に認知され、広告や案件が増えれば軌道に乗るだろうが立ち上げて一年である。つまりまだ過渡期のコンテンツだ。

ここで一つ疑問が生じる。私はその疑問を林さんにぶつけてみた。

「お話を聞いててメリットしかないと思うし、すごくいいと思うんですけど。これ愛知だけじゃなくていきなり全国はちょっと容量的に難しいのかなって…愛知だけだと….SNSで発信するとするじゃないですか。SNSとYouTubeは全国じゃないですか。愛知しか利用できないってなると、なんだよって、思う奴がいると思うんですよね…(一部省略)」

ここまで愛想の良かった林さんがわずかに表情を歪ませた気がした。どうやら二人もその点については承知しているらしい。
ここまで説明を林さんに任せていた松元社長が口を開き実情を語ってくれた。

「ふくはぴ愛知そのものが事業として収益がまだない。そのうえマンパワーが足りない。営業を続けていく上で足でやってくしかないわけですよ。居宅相談支援事業とか地域包括支援センターとか事業所とか。その行為をする上で愛知以外に行ったら手が回らなくなるんですよね。」

私は全国ネットワークにするのはwebサイトの整備の観点から難しいのかと思っていた。ふくはぴ愛知のwebサイトでヘルパー事業所を募集すると事業所が勝手に登録してくれるとお気楽に考えていた。
どうやら私の想像を遥かに超える苦労があるようだ。
熱意にあふれる二人なだけにもどかしい思いをしているのが画面越しからでも伝わってくる。

お二方の説明を最後まで聞くとふくはぴ愛知はたしかに業界に革命をもたらすコンテンツであると思う。
いつの時代にも既得権益というものがあり、そういった人たちからすれば迷惑かもしれないが、利用者のほとんどは有益と感じるだろう(よほど偏屈でない限り)。
クラウドソーシングが存在しネット社会であるにも関わらずアナログで閉鎖的な状態が慣わしと化している福祉業界に対して二人が疑問を抱くのも当然だと思う。
驚くべきことは二人が意気投合し、それを実行に移す行動力である。だがその二人を持ってしても手が足りない状態だ。

この記事を読まれている読者のみなさまにはぜひこの記事を拡散してほしいと思う。
ふくはぴ愛知が日本で広く認知され広告、案件が増えれば人手も増やせる。ゆくゆくは全国ネットワークも夢ではないだろう。そうなれば日本中の介護利用者のQOLは上がり、それに比例して家族の負担も減る。

二人の情熱と苦労の一端を見た私としては「その時」が来るのが待ち遠しくてならない。


本記事執筆中の6月10日にYouTubeの人気チャンネル「令和の虎」にて松元拓也とふくはぴ愛知にスポットライトが当てられた内容の動画が投稿された。

結果を見て驚いた。決して、松元社長の力を軽んじていたわけではないが令和の虎は虎(ホスト側)がゲストに対して高圧的な物言いをするので有名である。にも関わらず合計500万の出資を勝ち取った。

これを追い風にふくはぴ愛知に注目が集まることが予想される。






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