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フラワーデモが求めたものは、本多議員一人の責任を追求することではありません。

立憲民主党の本多議員の次期衆議院議員選挙の公認取り消しが報道されています。正式決定されたことではありませんが、一部報道に「フラワーデモなど市民の声の要請に応えて(公認取り消し)」等とあったので、福山幹事長に出された立憲民主党ハラスメント防止対策委員会の「調査報告書」を読みながら、今回のことを整理してみたいと思います。

立憲にフラワーデモが申し入れした4点

まず事実として、フラワーデモは本多議員の処分に関することは一切求めていません。私たちが立憲民主党の福山哲郎議員、泉ケンタ政調会長、徳永エリ議員、打越さく良議員との会合で求めたのは以下の4点でした。(申し入れは2021年6月22日)

1 性犯罪刑法改正に対する立憲民主党方針の明確化
2 被害者の声を聴く勉強会等の開催
3:本多議員発言の調査結果の公開と、性暴力容認発言再発防止の徹底
4:性犯罪刑法改正を選挙公約に

1を求めたのは、「リベラル」を自認する弁護士出身の議員が少なくない立憲内で、性犯罪刑法改正への「慎重論」(本多議員はご自身のことを「慎重派」と名付けていたそうです)がこれまで同様維持継続されるのか、または被害実態に沿った刑法改正に向けて舵を切るのか、「野党第一党」であるならば明確に立場を表明してほしかったからです。

「50歳と14歳」の例は極端であったとしても、“中学生が積極的に大人を好きになることもある”、と強固に主張する刑法学者や弁護士の声は決して少数派ではありませんし、実際に刑法改正検討会のなかでも同類の発言は複数回されています。立憲の中でもそのような声が多くあったからこそ、本多議員は“彼ら”の声を代弁するためにも断定的に大声で自信たっぷりに発言されたのでしょう。

児童ポルノに対しても、児童ポルノにおける子どもへの性暴力、人権侵害の問題を「表現の自由」で隠蔽する立場を取り続けてきた立憲の古い人権意識、ジェンダー不平等への鈍さをここで改めてほしいという要望です。

2を求めたのは、2年間続けてきたフラワーデモに立憲民主党の議員が参加されることが稀だったからです。理由は分かりませんが、今回の報告書にはWTで「被害者の声を聞く」ことに本多議員がことごとく反対してきたことが記されています。一方で刑法学者たち「専門家」の招聘を強く訴えたことが記録されています。
旧立憲民主党時代の同じ刑法改正WTの座長だった山花議員は


「(性暴力被害は)感情に訴えやすいものだからこそ、(刑法改正には)冷静な議論が必要だと思います」

と自身のHPに記載していますが、この山花議員が今回のWTのメンバーでなかったことを本多議員は不満に感じていたことや、被害当事者団体の招聘を求める声に対しては「そんなもの自分たち(本多議員たち)が潰してきたのに」と反対したことが記述されていました。私は山花議員が座長だった時代のWTに参加したことがありますが、被害当事者団体や福祉職員の声などまるで聞かず、「形式的」に呼ばれ、山花議員の考えを一方的に述べられた印象を受けています。
被害者の声に真摯に向き合わない政治が、被害者をさらに追い詰めていることを立憲の申し入れでは伝え、被害者の声に耳を傾ける時間を積極的に設けることを申し入れました。

また3つ目に求めた調査結果については、メディアに報告書が配布されたことで申し入れが一部聞き入れられたのだと理解していますが、重要なのは性暴力容認発言再発防止の徹底だと理解しています。本多議員の首切りで、それは可能になるのでしょうか?

また4つめには、強く性犯罪刑法改正を選挙公約に掲げることを求めました。具体的には、性交同意年齢の引き上げ、公訴時効撤廃、不同意性交等罪、地位関係性を利用した性被害の罰則規定を選挙公約に入れることです。刑事司法におけるジェンダー主流化の決意と、被害者中心に立った刑法改正を立憲民主党の選挙公約に求めたのです。

以上が私たちが立憲民主党に求めた内容です。今回の本多議員の後任取り消しについては、党内でどのような議論が行われたかわかりませんが、少なくとも本多議員一人の問題ではないと申し入れたフラワーデモの意向とは全く違うものであり、むしろこれで一件落着になってしまうのではないかと警戒を強めてしまうものになりました。

皆さんと全く反対の意見も我々は聞く必要があることはご理解ください

立憲民主党への申し入れの日に福山議員がこう仰ったことが強く印象に残っています。

「皆さんと全く反対の意見も我々は聞く必要があることはご理解ください」

全く反対の意見とは誰のことなのか、自然な流れで言えば「性加害者の声」を聞く必要があると言われているようなものですが、私たちが議論を否定しているとでも思われたのでしょうか。対極の意見を並べ、中立の位置をすりあわせる作業を議論と呼ばないでほしいと強く思います。検討会も含め、これまで長い時間をかけて議論されてきたこの問題について、どのような方向性で行くのかすら議論されていないことに不安を覚えています。

なにより今、本多議員の報道直後から、私たちが立憲への申し入れ書にも記した山花議員のブログが被害実態にあった刑法適正化に反対する主に弁護士等によって拡散されていることに、強い危機感を覚えています。「刑法論」という「専門家」の体で、被害者の声を感情的と談じ、我こそが冷静に論理的に判断できる専門的立場にあるというような内容です。10代の被害者の実態をいくら伝えても、そして実態を裏付けるアンケート調査をだしたとしても、全てが妄想返しという現実を私たちは突きつけられてきました。被害者が必死にデータを出し、必死に声をあげる反論が、「50代の自分と14歳の子どもが真摯に恋愛する可能性」という妄想という、そんな傲慢を振りかざすのもいい加減にしてほしいというものです。女性たちの声を見下し、感情的とレッテルを貼りたがる性差別主義者が透けてみえます。そういう点が立憲民主党に対する不信につながっているのではないでしょうか。

改めて。成人男性たちが犯罪者にならずに少女と性交したいという妄想を死守する必要がどこにあるのでしょう。同意の概念も性的知識もないままに性搾取の被害を受けている子どもたちの声を、刑法改正を求める被害当事者等が必死にあげてきました。被害実態にそぐわない明治時代の刑法を変えるのだという強い意思を、本多議員の一人の首切りで一件落着ではない形で示していただきたいと思います。

8月9日に東京医大等入試差別問題当事者と支援者の会を立ち上げました。サポートいただいた場合は当事者支援のための活動と弁護士費用に全てあてます。よろしくお願いします。