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週末歌仙*葉ノ拾

歌を詠むということ

短歌とは、感動したこと、悔しいこと、悲しいことや嬉しいこと、すべてを言葉にのせて表現するものです。
歌を詠むこと、それは、長い人生において心の薬となるでしょう。
私も人生の山坂を短歌に支えられ、 81歳 まで 生きてこられました。
だからまず難しいことはおいといて、あなたの心が感じたままに、歌をつくってみてください。
きっと作歌の楽しさが、だんだんわかってきますよ。(楓美生)

歌人・楓(かつら)美生(みお)
昭和17年10月28日 杉並区荻窪生まれ

玉川上水の桜橋を散歩中、その後歌の師と仰ぐことになる人物と
偶然出会ったことがきっかけで、短歌を始める。
多摩歌話会(歌人集団)に15年ほど所属。
NHK、地方の短歌大会入賞。
現在は近所の歌好きを集めて、短歌の指導をしている。

<好きな歌人>
栗木京子、寺山修司、尾崎左永子
<好きな歌>
ここに咲きここに散りゆく秋萩のごとき一生(ひとよ)を悔いざれよゆめ

第一首

(想像してみてください…)

仕事帰りの夕暮れ。
今日も1日よく働いた。
疲れた足を励まして歩く道端に、小さな黄色い花が咲いている。
ああ、これ、月見草ってやつだな。

ここで一首ーー
(みなさんなら、どんな歌を詠みますか? わたしの歌は……)

月の出を
待ちてほころぶ 月見草 
暑さ忘るる夕暮の径(みち)

<2000年 仕事帰りに詠む>

<解説>
月というのは不思議なもので、見上げた空に綺麗な月が出ていると、疲れているにも関わらず少し遠回りして帰ろうかしら? そんな気分にさせてくれます。
月を見られる、それは、今日1日を生き抜けたという証。
そんな月の出を待っていたかのように花を開く月見草の姿は、1日頑張った自分へ「お疲れさま」と言ってくれているようで、なんだかとても癒やされたのを覚えています。
さて、その月見草。月光に染められたような黄色の花を咲かせるのは、実は待宵草という植物。本当の月見草は、陽の落ちる頃に柔らかな白い花弁を開き、明け方が近づくにつれピンク色に染まって花を閉じます。月見草も待宵草も同じマツヨイグサ属ですが、繁殖力の弱い月見草は今では「幻の花」と呼ばれているそうです。

待てど暮らせど来ぬ人を 
宵待草のやるせなさ
今宵は月も出ぬさうな

竹久夢二さんの書いた有名な詩ですが、ここに出てくる「宵待草」は黄色い花なのか、それとも白い花なのでしょうか?
わたしはなんとなく……絶滅に瀕した白い月見草のほうが趣深いように感じます。みなさんはどう思われますか?

歌を詠んでみましょう!

テーマは……
月見草

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第二首

(想像してみてください…)

日照り続きの厳しい夏。
炎天下にさらされた畦道が、カラカラに乾いてひび割れている。
歩くたびに土ぼこりが舞い、靴裏まで暑い。
と思ったら。
やにわにバケツをひっくり返したような土砂降りだ。
慌てて近くの家の軒先へ。
通り雨をやり過ごし、もといた道へ戻ると――あら、なんだか足の下がふわふわするわ。

ここで一首ーー
(みなさんなら、どんな歌を詠みますか? わたしの歌は……)

ふーわりと
足にやさしき 黒き土 
激しき雨の降り止みしあと
 
<2002年、夏に詠む>

<解説>
短歌は「気持ち」を詠むものですが、それが「どんな気持ち」なのかを曖昧にすることで共感を促せることがあります。
この歌は、干からびていた硬い土が雨に濡れて柔らかく変質した、その違いを体感したことから生まれました。でも、その違いをどう思ったのか、はっきりと言葉にはしていません。
ここで注目していただきたいのが、冒頭の「ふーわり」です。ひらがなに音引きをまじえることで、とても柔らかく、また曖昧な印象にもなっていませんか? これが「ふんわり」「ふぅわり」だと、もう少し地に足がついた感じになるでしょうか。
そしてその後に続く「足にやさしき」という表現。これで、この雨上がりの濡れた道をわたしが心地よく感じていることが、なんとなく伝わるかと思います。
雨に濡れた土の道は、ひとによっては靴が汚れて嫌なものです。だからはっきりと「濡れた道が気持ちいい」と言ってしまうと、反論したくなるひともいるでしょう。なので適度にぼかし、主張しすぎない。まさに「ふーわり」と詠み抜ける、これもまた作歌のテクニックです。

歌を詠んでみましょう!

テーマは……
通り雨

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あなたの短歌をご寄稿ください!ー『作歌のこころみ』

『週末歌仙』では、老若男女問わず気軽に作歌を楽しみたい方を募集中です。
「うまくつくれない」
「それ、おもしろいの?」(おもしろいです!)
そんな皆さんは、まず肩の力を抜いて、自分の心と向き合いましょう。
なにかを美しいと感じたり、楽しいと思ったり……。心を動かされたら歌の詠み時です(笑)

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短歌:楓 美生
編集:妹尾みのり

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