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新・地域資本主義では、公園のお掃除おじさんは、資本家なのかもしれない


私は、早起きできた朝に、近くの渓谷(川沿い)を歩いている。

自宅近くの等々力渓谷は、東京23区内で唯一の渓谷で、毎日、多くのハイカーが近隣から集まってくる。

近所のサラリーマンや学生は、通学路でもないのにわざわざ渓谷を通って出勤している人もいるなど、人々から愛される道である。

私が、その渓谷に行くと、必ず出会う人がいる。

彼の名は「斎藤さん」

家の近所に住むおじさんで、年齢は60-70歳ぐらい。数年前に仕事をやめざるおえないことになり、それから過去2年半ずっと朝6:00から9:00まで、2キロに及ぶ渓流のお掃除をしている。

雨の日と、病院の日がある以外は、毎朝、リュックにほうきをくくりつけて、長靴を履いて渓谷に現れる。そして、広い川沿いを、「サッサ、サッサ」と穿き始める。たまにやってくる常連のウォーキングおじさんと話し込むこともあるが、それ以外は黙々と掃除をしている。

そして2〜3時間ずっと川沿いの掃除をし続け、汗だくになったところで、今日もやりきったという顔をして、美味しそうにアクエリアスを飲んでいる。



私は、そんな彼に一度「どうして毎朝、掃除されているんですか?」と聞いたことがある。

すると斎藤さんは、突然話っけられたことにびっくりしつつ、笑顔でゆっくり答えてくれた。

「地域にこんな美しいな場所があるのに、汚いのはもったいないよねぇ。僕が来るまでは、歩道が泥まみれで歩けたものじゃなかったんだ。

誰かがきれいにすれば、もっと多くの人が通勤路として使えると想っていたら、仕事も首になってやることがない自分がやるかぁと想って初めたら、3年経ちゃったよ」

私は、なんか豊かな価値観だなと思った。そして彼を「気のいいおじさん」だったり「仕事がないから暇なんでしょ」という声に負けない存在として認識したいと思った。

そんな時に思い出したのが、地域資本主義という考え方。カヤックの柳澤さんの本を読みながら、それに当てはめて考えてみることにした。

<以下抜粋>
地域の経済を語る際には、これまであった経済的な豊かさ以外の、「つながり」を豊かさの定義に入れようと考える動きも出てきている。それが「地域資本」という考え方。僕たちが考える「地域資本」は次の3つの資本で構成されている。

・地域経済資本──財源や生産性
・地域社会資本──顔が見える豊かさ/ シェアや分かち合いができる関係値
・地域環境資本──文化や自然的な豊かさ

従来資本主義における資本や売上に当たる部分が地域経済資本です。それに、地域社会資本と地域環境資本の2つを追加して、地域資本と定めます。


鎌倉資本主義とは何なのか?これは柳澤さんの書籍を読んでいただくとして。私が、この新しい概念『地域資本主義』の軸と、照らし合わせながら斎藤さんという存在を見てみると、斎藤さんは『経済資本』の軸だと、仕事をしていない(生産性のない) 気のいいおじさんかもしれない。

でも『地域環境資本』の軸だと、環境資本の価値を認識し、多くの人に価値を分配しようとしている”資本家”という考え方もできるかもしれない。 

 
『地域”経済”資本家』
自分の財産を提供して、現有資産から利益を得ている人

『地域”環境”資本家
地域の資源を整えて、現有資源からの利益を、多くの人に長期的に提供しようとしている人

新・地域資本主義では、企業に勤め、商いをして「売上をたて、税収を払う」ことだけが地域の資本力を増やすわけではない。

・森や森林を守っている人
・海を守っている人
・住民が孤立しないようにいろいろと企画している人

こんな人がいる地域は総合的に資本力が上がっていき、人はより豊かに暮らせるようになっていく。

新しい地域経済において、公園のお掃除してくれているおじちゃんは、次世代の”資本家”かもしれない。

そんな風に思うと毎朝、斎藤さんに会うのがさらに楽しみになった。

きっとそんな未来の資本家は、日本にはたくさんいるはず。

そう思うと、とってもワクワクしてくる。

斎藤さん、いつもありがとうござます。

では、今日も行ってきます!


鎌倉資本主義――ジブンゴトとしてまちをつくるということ


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