観劇感想:遠野物語・奇ッ怪 其ノ参

2016年の秋に見に行ってきた演劇の感想メモです。

遠野物語・奇ッ怪 其ノ参
[原作]柳田国男 (「遠野物語」角川ソフィア文庫)
[脚本・演出]前川知大
[出演]仲村トオル 瀬戸康史 山内圭哉 池谷のぶえ 安井順平 浜田信也 安藤輪子 石山蓮華 銀粉蝶 

いつも見に行っているイキウメの脚本家、前川さんの外部公演(?)です。

BRUTUS (ブルータス) 2016年 11月1日号にもインタビュー記事が載っていました。

奇ッ怪は過去2作ありまして、題材が割と古典芸能寄りというか歴史&ホラー寄り・・とでも言うのでしょうか。

1作目は小泉八雲の話が題材のお話

2作目は野村満載との能をテーマにしたお話

そして3作目の今回が、柳田国男の遠野物語が題材のお話

です。なんとなくカラーがおわかりいただけるかと思います。

前川さんは現実と「向こう側」の世界の境界を描くのがすごく上手な方なので、オリジナルの話はもちろん、この奇ッ怪で描かれるような、既にある作品と今の現実の境界を描くにはもってこいの方なのじゃないかと勝手に思っています(笑)

さて、今回の題材の遠野物語は、柳田国男が友人や遠野の地で聞いた話を編纂した短編集のようなものなので、この舞台は、まさに柳田国男自身が、その話を収集している時のことがテーマです。

出演者の一人の前説が最初に入り、柳田が自費出版した本のことで、警察から取り調べを受けているシーンから舞台ははじまります。

舞台上の世界では、出版物はノンフィクションしか法律で許されていません。

柳田が自費出版した遠野物語に書かれた話は「事実」なのか「作り話」なのか。

その判断のための取り調べがスタートするのですが、取り調べのために呼ばれた大学教授が遠野物語に目を通すと同時に、舞台上でその物語が展開していきます。

展開する物語自体は、遠野物語に編集されているものと大きくは違いません。(順番は違います。)

柳田にとって、編纂した話自体は「語られた」ものを綴っただけなので、事実か否かについてはおそらくどうでもいい問題だったんですね。(事実であると信じている。)

自分もこの『語られる』話を誰かに『語らなければいけない』と、そういう想いに突き動かされた。だから遠野物語を残した。

語られないことで遠ざかっていく世界があって、それは単に「遠ざけて良い」ものではない。

田舎と都会の比較でもあるのかもしれません。


個人的に良かったポイントとしては、
・柳田に故郷の話を語った「佐々木」役の瀬戸くんの東北弁っぷり
・柳田自身が、幼少のころは異界の存在が「見えていた」という設定が劇中のセリフの中にちらっとだけ出てきたこと。
・取り調べ役の方の最後の判断
です。

機会があればみなさんもいつか前川さんの書くお話を見に行ってみてください。

各所で出演者コメントなど公開されています。

遠野物語・奇ッ怪 其ノ参 - りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館

「遠野物語・奇ッ怪 其ノ参」 のチケット情報ーちけっとぴあ

前川知大×柳田国男「遠野物語・奇ッ怪 其ノ参」に、仲村トオルと瀬戸康史ーナタリー

仲村トオル&瀬戸康史が共演、柳田国男『遠野物語』を前川知大が舞台化ーCINRA net


そして、なんと2017年9月には黒沢清監督でイキウメの代表作の一つでもある「散歩する侵略者」が、有名女優・俳優さんで映画化されます・・・・・!!!!!!!!!

長澤まさみ×松田龍平×長谷川博己が共演、黒沢清新作『散歩する侵略者』

イキウメのお話は神木隆之介くん、門脇麦さんのダブルキャストで「太陽」が映画化されましたが、そちらは配給映画館少なかったので、今回は期待!

一般受けされやすいお話でもあると思いますので、こちらもぜひ見ていただきたいです。



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