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The Guardian 書評


2024/1/14(1月18日分)

” Tiny proportion of e-scooter injuries appear in official UK data”

「電動キックボードによる負傷者の割合は英国の公式データによるとごくわずか」

〈要約〉
病院での治療を必要とした電動キックボード事故の大半が、国の公式の交通事故統計データに記録されていないことが新たな調査で明らかになった。調査によると、2ヶ月間に20の救急診療科で記録された電動キックボードによる負傷のうち、公式に記載されたものはわずか9%であり、また、交通事故による死傷者データには重傷者の4分の1強しか記録されていなかった。この調査を依頼した交通安全諮問委員会は、電動キックボードの利用拡大が、すべての交通事故を正確に記録し報告する警察の公式システムの能力を上回っているという。現在、電動キックボードの使用は英国の複数の地域で試験的に使用されており、他の公道で個人所有のキックボードに乗ることは違法とされている。しかし、広く販売されており、国内には75万台以上の個人所有のキックボードがあると推計されている。こうした状況を受け、政府は民間の電動キックボードに関する法律を早急に提出することが求められている。

2023/12/27(2024年1月11日分)

” Gut microbes may play role in social anxiety disorder, say researchers”

「腸内微生物が社交不安障害に関与している可能性がある、と研究者は述べる」

〈要約〉
最新の研究から、腸内微生物が社交不安障害(SAD)の社会的恐怖反応の高まりに因果関係を持つ可能性があることが示唆され、SAD患者の新たな治療法の開発への道が開かれている。過去の研究で、腸内マイクロバイオーム(消化器系に生息するバクテリアやその他の生物の集合体)が、健康な人と比べてSADの人では異なることが明らかにされている。そして今回、SAD患者の腸内微生物をマウスに移植すると、社会的恐怖に対する反応が増加することが研究により発見された。この研究の共著者の一人は、SADをはじめとした疾患には、遺伝や環境、その他の要因も関与されるとされているが、今回の研究により腸内細菌の重要性が強調されたと述べている。専門家は、食物繊維や発酵食品を食事に取り入れることで有益な効果が期待されるとし、腸内マイクロバイオームを変化させるように設計された食事が治療法の一つとして含まれる可能性を提示している。

2023/12/18(12月21日分)

”‘Gamechanging’ drug to prevent hot flushes wins approval in UK”

「ホットフラッシュを予防する『画期的な』薬が英国で承認される」

〈要約〉
ホットフラッシュ(ほてり)を予防し、何十万人もの女性に恩恵をもたらす可能性のある 「画期的な」医薬品が、英国での使用を承認された。ホットフラッシュは血管運動症状とも呼ばれ、更年期を迎える女性の約70%に影響する。女性は突然、圧倒的に暑さを感じるようになり、しばしば生活の質、運動、睡眠、生産性に影響を及ぼす。多くの女性が罹患しているにもかかわらず、何十年もの間、ホットフラッシュに対する安全かつ効果的な治療法がほとんどなかった。最も効果的とされてきた治療法がホルモン補充療法であるが、乳がんや卵巣がんの既往歴がある女性、血栓症のある女性、未治療の高血圧の女性などにはこの方法が適さない。副作用を経験したり、ホルモン以外の代替法を求める声もあることから、今回の医薬品の承認が多くの女性にとって重要な変革になるとされている。ただし、更年期障害に伴うホットフラッシュを経験している女性への使用が承認されているが、現時点で65歳以上の女性における安全性と有効性についての研究が実施されていないため、この年齢層に対する投与推奨はまだされていない。

2023/12/8(12月14日分)

”Betting firm Flutter to list on New York stock exchange in January”

「ベッティング会社 フラッター、1月にニューヨーク証券取引所に上場予定」

〈要約〉
ベッティング会社のフラッターは、1月29日に向けてニューヨーク証券取引所への上場を進めているが、ロンドン証券取引所でのプレミアム市場上場は維持すると発表した。同社は今年、収益のほぼ40%を米国市場から得る見込みである。そのため、まずは米国でのセカンダリー上場(ある証券取引所に既に上場している会社が、別の証券取引所にも上場する形態)を進める形となるが、いずれ米国でのプライマリー上場(ある証券取引所を主要取引所として、会社の発行するすべての株式を当該証券取引所に流通させる上場形態)を目指す可能性もあるという。また、同社によると、規制の複雑さを最小限にするために、この2つの上場だけを維持することが適切であるとしている。

上場形態についての参考資料:海外上場 - KPMGジャパン

2023/12/4(12月7日分)

”IBM unveils new quantum computing chip to ‘explore new frontiers of science’”

「IBM、『科学の新境地を開拓する』新量子コンピューティング・チップを発表」

〈要約〉
コンピュータと人工知能技術の権威であるIBMは月曜日、新たな量子コンピューティング・チップとマシンを発表した。IBMによると、マシンの内部でチップを接続し、さらにマシンを接続する新しい方法を開発したとのことで、これを新しいエラー訂正コードと組み合わせることで、2033年までに量子マシンを製造することができるという。これは、莫大な数のスーパーコンピューターを接続した能力すらも凌駕する能力を持つことが期待されており、物理学、化学、工学、医学の分野で、現在のスーパーコンピューターでは何百万年もかかるような問題を、数分で解決することが可能になるといわれている。

2023/11/21(11月30日分)

“UK to build new satellite to monitor climate crisis and natural disasters”

「英国は気候危機と自然災害を監視するための新たな衛星を建設へ」

〈要約〉
英国は、科学者が気候危機や自然災害を監視するのに役立つ新たな衛星の資金援助と建設を行う予定だ。英国政府が参加するプロジェクトは、地球を監視する衛星群を開発するもので、自然災害の検出、監視、リスク軽減に役立つ貴重で定期的なデータを提供することが期待されている。英国の宇宙庁が宇宙ステーションへの訪問を企画する米国企業との契約によりこのミッションを請け負い、4人の英国人宇宙飛行士が宇宙に行くことになっている。プロジェクト費用として2億ポンドかかると予想されているが、納税者による負担はない。また、同プロジェクトにはスペインとポルトガルも参加しており、大西洋のパートナーである2国を支援することで、共通の目標のために宇宙技術を活用することができるようになるとされている。

2023/11/17(11月23日分)

”EU agrees to ban exports of waste plastic to poor countries”

「EUは貧困国への廃プラスチック輸出禁止で合意する」

〈要約〉
ヨーロッパで廃棄されるプラスチックのほとんどは燃やされ、リサイクルされるのは3分の1以下である。環境運動家たちは、リサイクルのために海外へ輸送された廃プラスチックの一部が埋立地や水路に漂着することを懸念している。
こうした背景からEUは、主に富裕国で構成されるOECD加盟国以外の国々への廃プラスチックの輸出を2026年半ばから禁止することで合意した。これは、ケニアのナイロビで開催されたプラスチック汚染に関する世界的な条約を策定するための外交官会議で発表された合意であり、貧困国の港に廃プラスチックが漂着するのを阻止するためのものである。
この規定は、発効前に欧州理事会と欧州議会で正式な承認が必要となる。5年後、EUから廃プラスチックの輸入を希望する国は、廃棄物の適切な処理が可能であることを証明すれば、委員会に輸入禁止の解除を要請できる。

2023/11/13(11月16日分)

”Rising interest rates wipe £200m off British Land’s property portfolio”

「金利上昇でブリティッシュ・ランドの不動産ポートフォリオから2億ポンドが消失する」

〈要約〉
不動産会社のブリティッシュ・ランドは、賃貸料の高騰とオフィス/店舗需要の増加により利益を押し上げたが、金利上昇によりポートフォリオの価値が約2億ポンド減失した。
コロナの影響で商業用不動産市場が打撃を受け、過去5年間で同社の株価が40%以上下落していたが、先日の報告では9月末までの半期決算で基礎利益が3.4%増加したことが分かり、これは投資家にとって明るい見通しとなった。しかし、高金利が原因で上半期に不動産ポートフォリオ全体の価値が約2億ポンド減少したことも報告された。ただ、英国の基準金利が5.25%とピークに近づいていることから、ポートフォリオの価値が再び上昇に転じることが期待されている。

2023/11/5(11月9日分)

”We need more women,’ says only female winner of Millennium engineering prize”

「『私たちはもっと女性が必要だ』とミレニアム工学賞唯一の女性受賞者は述べる」

〈要約〉
ノーベル賞の主催側によると、2024年の受賞候補者のうち女性はわずか16.3%で、これは2004年に賞が始まって以来、2022年(28.1%)を除いて最高値であった。こうした状況を受け、主催者のテクノロジー・アカデミー・フィンランド(TAF)は、女性の受賞候補者の増加を望んでおり、より良い生活の実現に向けた技術革新を考える際に、女性について考慮するよう科学技術界に働きかけている。また、2016年に酸素の指向性進化に関する研究でノーベル化学賞を受賞したアーノルド氏は、より多くの女性受賞者の誕生には時間がかかるだろうと予想するものの、テクノロジー業界に素晴らしい女性たちが増えているため、女性へのノミネートが増えることを期待している。しかし、ごく少数の個人の貢献を特定しようとする賞の性質上、チームで仕事をしている場合の多い女性技術者があまり認識されていない可能性も指摘している。

2023/10/29(11月2日分)

”UK police urged to double use of facial recognition software”

「英国警察は顔認証ソフトの使用を倍増することを要請した」

〈要約〉
英国の警察は、今後半年の間に、犯罪者追跡のための顔認識ソフトの使用を倍増させるよう要求されている。来年5月までに顔認識技術を使った警察の全国データベースに対する静止画像の検索件数が20万件を超えるという目標が、警察指導者たちに提案された。また、後日開催される世界的なAI安全サミットを前に、ライブ顔認識カメラをより広く運用するよう警察に働きかけている。警察全国データベース、パスポートオフィス、その他の国家データベースのデータを統合し、警察がボタン一つで一致する写真を見つけられるようにする計画であり、この進歩により警察は「犯罪者の一歩先を行く」ことができ、英国の街がより安全になることが期待されている。

2023/10/18(10月26日分)

” ‘Social loafing’ found when working alongside robots”

「ロボットと一緒に働く際に『社会的手抜き(ソーシャル・ローフィング)』が発見される」

〈要約〉
ベルリン工科大学の研究者によると、人々はロボットをチームの一員として見るようになり、ロボットの近くで仕事をする場合には仕事にあまり注意を払わない傾向がある。人々は働く際、同僚や技術が特にうまく機能していると思ったり、自身の貢献が評価されないと思ったりする場合に、より手を抜いた態度をとる傾向がある、と科学者らは示唆する。そのため、チームワークは、人々のモチベーションを高める効果を持つ一方、個人の貢献度が見えにくくなるためにモチベーションの低下を生むこともある。こうした現象が、チームのパートナーがロボットである場合にも、人間である場合と同じようにみられることが研究から明らかになった。

2023/10/9(10月12日分)

”US agency refuses to examine toxicity of ‘inactive’ pesticide chemicals to crops”

「米国政府、『不活性』農薬の農作物への毒性調査を拒否する」

〈要約〉
農薬製剤に「不活性」と表示される成分は、環境や農作物、動物を汚染する可能性がある。しかし、米国環境保護庁(EPA)は、その毒性とリスクの調査を拒否している。産業界が危険物質(過フッ素化アルキル物質やポリフッ素化アルキル物質など)を不活性物質と表示しているにもかかわらず、EPAは農薬処分の安全性の評価時に不活性成分を考慮することを規則上義務付けていない。そのため、2017年に食品安全センターはEPAにこの現状を見直すよう法的請願を行ったが、先日EPAはこれを却下した。EPAによって使用が認められた18000種類の農薬の多くは、有毒なままである可能性が高いと専門家は述べる。一連の動きの中でEPAは、不活性成分は農薬の性能を向上させるために転嫁され、対象となる成分に対する毒性を高めるものだと主張するが、それは農薬の処方を、対象外の生物、人間、植物に対しても有毒となる可能性がある。

2023/9/28(10月5日分)

”Plants or bookcases as backdrop on video call really do impress, study finds”

「ビデオ通話の背景に植物や本棚を使うと、本当に印象的であるとの研究結果が発表された」

〈要約〉
オンライン会議において、本棚や観葉植物の背景画像は最高の印象を与えるという研究結果がある。160人以上を対象としてダラム大学の心理学部の研究者によって行われたこの研究では、本棚や観葉植物の背景を使用すると、「信頼できる人、有能な人」という印象を相手に与えられることが分かった。その一方で、リビングルームや斬新な背景は、信頼と能力の評価を低下させることが分かった。また、性別や表情も影響し、背景にかかわらず女性の方が信頼と能力について高い印象を与える傾向があったり、幸せそうな表情が信頼と能力の印象を向上させるという結果が見られた。こうした結果を受け、有識者は、オンライン化が進む今日の世界において、良い第一印象のためには、自分の見た目に加えて背景が相手に与える印象も考慮しなければならないと述べている。

2023/9/25(9月28日分)

”Building in zero gravity: the race to create factories in space”

「無重力空間での建設:宇宙での工場建設競争」

〈要約〉
大手ハイテク企業が、地球外で初の生産ライン誕生について真剣に考えている。宇宙空間において、コンピューター部品の製造、幹細胞の収穫、医薬品の生産をどのように行うかということが、製造業での喫緊の課題であるが、少なくとも研究レベルでは既に実現しつつあると言われている。なぜわざわざ「地球外製造」なのかという問いに対して、ジェフ・ベゾス氏は重工業や大気汚染を引き起こす産業は地球から離れた場所で操作できると語っている。宇宙開発に対する支持者は、「無重力、低温、ほぼ完全な真空」といった宇宙の特定の条件は、陸上よりも優れた品質での製造を実現すると主張している。

2023/7/15(7月20日分)

”Scientists find vital missing ingredient for healthy vegan diet – algae”

「科学者らは健康的なビーガン食に欠かせない成分を発見-藻類」

〈要約〉
肉や乳製品を使用しないビーガン食が普及する西洋では、多くの人々がビタミン不足に陥る可能性があり、特に血液や神経細胞の生成に関わる重要な栄養素であるビタミンB12の不足が懸念される。本来、B12は牛や羊などの消化器系で増殖するバクテリアによって作られ、植物から直接摂取することができない。しかし、これに対する一風変わった解決策として、不足したB12を補うために藻類から作られた菜食主義者向けのビタミン剤が非常に効果的であることが、ケンブリッジ大学の科学者の研究によって発見された。
彼らの実験によると、多くの種類の(主に根や茎を持たない水生生物)藻類がB12を蓄積する能力を持つことが分かり、藻類を使ったサプリメントの製造の可能性が示唆された。既にB12の化学サプリメントは流通しており入手可能であるが、安全性への懸念が指摘されている。今回の発見は、自然由来のサプリメントを好む菜食主義者に合ったB12の安全な補給に役立つだろう。

2023/7/6(7月13日分)

” ‘Safe and effective’: first malaria vaccine to be rolled out in 12 African countries”

「『安全で効果的』:アフリカ12か国で展開される初のマラリアワクチン」

〈要約〉
アフリカでは、毎年50万人近い5歳未満の子どもたちがマラリアにより命を落としている。世界保健機関、ユニセフ、世界ワクチン連合の声明によると、世界初のマラリアワクチンは、マラリアによる子供の死亡リスクの最も高いアフリカ12か国に1800万人分割り当てられたという。このワクチンは、2019年からガーナ、ケニア、マラウイで170万人の子どもたちに接種されており、安全性と効果性が実証されている。現在、さらに16のアフリカ諸国が当ワクチンの入手を求めており、供給拡大が喫緊の課題である。現状ワクチンの製造はイギリスに本社を置く製薬企業1社のみが担っているが、2026年までに毎年6000万人分が必要になると予想されるため、インドの企業もまもなく供給に携わることになっている。

2023/7/3(7月6日分)

”M&S offers money off children’s clothes in exchange for used school uniforms”

「M&Sは使用済みの制服と引き換えに子供服の割引を提供する」

〈要約〉
マークス&スペンサー(:プライベートブランドの衣料品・靴・ギフト商品・雑貨・食品などを販売するイギリスの小売事業者)は、使用済みの制服を寄付することで子供服の割引(20%割引券の贈与)を受けられるキャンペーンを実施した。これは、生活費危機の中で制服を買う余裕のない家庭に対する支援を目的としている。集められた中古制服は、マークス&スペンサーとの既存のパートナーシップの延長線上にあるオックスファムの店舗などで販売される。また、この制服の寄付の取り組みは、衣服のライフサイクルが長くなることで環境に優しいことに加え、制服の売上利益は全てオックスファムに寄付されるため同社の資金調達にもなることから、この2社の提携はウィンウィンと表現されている。

2023/6/26(6月29日分)

”Shipping emissions could be halved without damaging trade, research finds”

「貿易を損なうことなく海運の輸送排出量を半減させられることが研究から判明」

〈要約〉
海上輸送による温室効果ガス排出量は、世界の温室効果ガス排出量の約3%に相当しており、船舶が使用する軽油に代替するものはほとんどない。しかし、海運分野の排出削減技術への取り組みは遅れており、そうした現状を受け、船舶からの排出に対する新たな課税の可能性について各国が協議の準備を進めている。そんな中、新たな調査により、既に利用可能な技術を使い、水素などの革新的な技術に着手することで、貿易に打撃を与えることなく2030年までに海運による排出量を半減できる可能性があることが分かった。具体的な方法には、エンジンメンテナンスの改善、若干の速度の削減、海の状況に合わせた速度の最適化などが挙げられる。海運分野では脱炭素化が1年遅れるごとに1000億ドルの追加コストがかかるという試算が出ており、これらの方法を導入することは長期的に見てコスト削減に繋がるとされている。

2023/6/16(6月22日分)

”Rail regulator to investigate station food and drink prices”

「鉄道規制当局、駅の飲食物の価格を調査へ」

〈要約〉
鉄道駅の飲食物の価格について、鉄道道路庁(ORR)が調査することになった。これは、駅で売られている飲食物の価格が、街頭販売価格よりもはるかに高いことが多く、そのサービスに満足できない場合もあるとの苦情が寄せられたことを背景に、市場の構造・動向を精査し、上手く機能しているかどうかを調べることを目的としている。
実際に、WH SmithやM&Sなどの駅店舗が、他の店舗に比べて最大3倍の価格で販売していることが発覚しており、また、Wetherspoons(パブチェーン)やStarbucksは、鉄道駅での商売はコストがかかることを理由に高値の価格設定をしていることを認めている。
全国の消費者が物価上昇の影響を受けている中、駅を利用する際に手ごろな価格で飲食物にアクセスできるようにすることは、鉄道利用者の増加に貢献し、鉄道業界への後押しに繋がるとされている。

2023/6/8(6月15日分)

”Common energy drink ingredient taurine ‘may slow ageing process’”

「一般的なエナジードリンクの成分であるタウリンが『老化を遅らせる可能性がある』」

〈要約〉
多くのエナジードリンクに配合されている微量栄養素のタウリンについて、動物実験の結果、老化を遅らせ、健康を促進する可能性があることが判明した。研究者たちによると、タウリンの濃度は、年齢とともに大幅に低下する(一般的に、60歳時で5歳時の3分の1にまで低下)が、これを若々しいレベルにまで高めると、マウスやサルの健康が増進され寿命が延びた。人間にとってこれらと同様の効果があるかどうか、あるいは必要とされる高容量のタウリンが安全かどうかは不明である。しかし、タウリンはもともと人間の体内に存在し、低用量であれば既にサプリメントとして利用されていることから、大規模な臨床試験を行えるだけの証拠は整っているとされている。ただし、これまでに人間を対象としたタウリンの安全性や効果を実証する大規模な実験は行われていないため、サプリや栄養ドリンクなどによってタウリンの摂取量を増やすことは推奨されず、潜在的なリスクはまだ考慮する必要がある、と科学者たちは述べている。

2023/6/4(6月8日分)

"Bowel cancer patients could be spared radiotherapy, US study suggests"

「腸がん患者は放射線治療を免れる可能性があることがアメリカの研究で示唆される」

〈要約〉
シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会で、放射線療法を受けなくても受けた場合と同様に患者が快方に向かうという研究結果が発表された。放射線療法は、何十年もの間、腸がん患者の治療に使用されてきたが、不妊症や一時的な人工肛門の設置、下痢、痙攣、膀胱への問題など、生活に支障をきたす副作用が問題視されてきた。今回の研究結果により、放射線療法を省略し化学療法と手術のみで治療が可能であることが判明したことで、生活の質に影響を与える短期及び長期の副作用を軽減し、無病生存期間と全生存期間において同様の結果がもたらされる。これは、がん研究の新たな分野として注目されているもので、患者のより良い生活の質の追求のために排除可能な治療法の要素の発見に向け、専門家らはますます力を入れている。

2023/5/24(6月1日分)

”UK students pledge ‘career boycott’ of insurers over fossil fuels”

「英国の学生は、化石燃料をめぐる保険会社の『キャリアボイコット』を誓う」

〈要約〉
オックスフォード大学やケンブリッジ大学をはじめとする英国の一流大学の学生や新卒者数百人が、大手保険会社の「キャリアボイコット」を宣言し、物議を醸す化石燃料プロジェクトを支援する場合、ロイズ・オブ・ロンドン(ロンドンにある世界的な保険市場)を含む企業では働かないとしている。すなわち保険会社にとって、気候変動対策を実施しないことは、優秀な労働者の犠牲に繋がりかねない。
デロイトの調査によると、Z世代の新入社員の半数以上が、仕事を受ける前にそのブランドの環境への影響や方針を調べる傾向があり、6人に1人が気候変動への懸念から既に仕事や分野を変えていることが分かった。さらに、4分の1は。企業側の気候変動への影響を考慮して、将来的に職務を変更する予定であると回答した。
学生らは、約20社の保険会社がすでにアフリカのパイプラインの支援を断念したことを取りあげ、2017年以降、保険会社が次々に化石燃料の引き受けに関する制限を採用している動きに対してロイズ・オブ・ロンドンは遅れをとっており、市民の生活を危険に晒していることを指摘した。

2023/5/20

"Has the vegan bubble burst? Sales stagnate in UK as brands withdraw plant-based products"

「ヴィーガンバブルは崩壊したのか?英国ではブランドによる植物性製品の撤退で売り上げが低迷する」

【要約】
スウェーデン発・乳製品不使用ブランドOatly(オートリー)が2019年にヴィーガンアイスクリームシリーズを発売した際、「恥ずかしがらずに贅沢な」と表現されるフレーバーで消費者を魅了することを望んでいた。また、2019年に発売された全食品の4分の1近くがヴィーガンと表示されていた。しかし、現在でもオートリーのオーツ麦飲料は高い需要を維持しているものの、アイスクリームについてはイギリス市場から撤退することが先週確認され、一部のヴィーガン製品のブームは終わったようにうかがえる。世界のヴィーガン市場は2050年までに2030億ポンドもの価値に上ると推定されているが、イギリスでの多くの製品の売上高は横ばいもしくは減少している。ヴィーガン製品は、競合する肉や乳製品よりも高価であることが多く、昨今の生活費危機と市場の過密化によってこの課題はさらに深刻化している。

2023/5/15

"Talking to babies may help shape brain structure, research finds"

「赤ちゃんへ話しかけることは脳の構造を形成するのに役立つかもしれないことが研究から明らかに」

【要約】
子どもたちが大人の話し言葉に触れる量と、神経を取り囲みより効率的に信号する脳内物質(ミエリン)の濃度との間に関係があることが発見され、幼少期に触れる言葉の量が子どもの脳の構造を形成することに役立つ可能性が示唆された。これまでにも、幼い子どもに話しかけることで言語処理能力が向上し、語彙力が増えるという研究が発表されており、話しかけることには利点があると考えられてきた。研究の中では、MRIスキャンで子どもたちの脳のミエリンの量が測定された。脳の発達に伴いミエリンの量は増加するが、30か月児の場合、大人の発話量が多いほど脳内の言語関連経路のミエリンの量が多いことが分かった。一方で、生後6か月児は、大人の発話量が多いほど、ミエリン濃度が低くなることが分かった。専門家は、この結果は予想外であったものの、発話が与える影響が脳の発達段階に依存していることが一因だとしており、30か月児にポジティブな影響が見られることを踏まえると、発話量が多いことは素晴らしいことだと述べる。また、言語能力の個人差は遺伝に関連している可能性も指摘されている。

2023/5/5

"Child marriage in decline – but will take 300 years to eliminate"

「児童婚は減少傾向にあるが、消滅には300年かかるだろう」

【要約】
国連機関のユニセフは、児童婚の数は世界的に減少しているものの、そのペースは遅く、今世紀中での解消は難しいと指摘している。ユニセフの新しい報告書によると、この10年間で全婚姻のうちの児童婚の割合は23%から19%に減少している。しかし、2030年までに児童婚をなくすという持続可能な開発目標の達成には到底及ばないスピードであり、今でも毎年1200万人以上の18歳未満の少女が結婚しているという状況である。児童婚の完全な消滅にはあと300年程度必要だと指摘している。児童婚の原因は地域によって異なるが、貧困や限られた機会と結びついている共通点が多く、ジェンダーの不平等や固定観念、法律の脆弱さ、結婚以外での妊娠への恐怖も原因となっているといわれている。また、同報告書では、気候危機によって家族が子どもを結婚させる以外の選択肢がほとんどなくなる可能性があると警告されている。

2023/4/22

"Artificial intelligence – coming to a government near you soon?"

「人工知能―もうすぐあなたの近くの行政にやってくる?」

【要約】
人工知能がどのように学習を変革し、法律や金融、組織機能を根底から覆し、社会的・文化的なかかわりを再構築しているかということが最近の話題となっている。そんな中、人工知能が既に行政において様々な役割を担うようになってきている。例えば、アメリカ第2の都市であるロサンゼルスは、警察官の採用、駐車違反の支払い、道路の穴埋めや図書館の資料探しなど、事務的な業務の効率化に役立つ技術を発表している。今のところ、AIの進歩は自動化することに限定されているが、ChatGPTを含む次世代AIは、政府が市民と接する方法に変革をもたらす可能性を秘めている。人間らしく考え行動し、合理的に考え行動できるテクノロジーとされるAIは、政策立案という政治的・官僚的業務を簡略化するためにも活用されようとしている。

2023/4/15

"Is ice-cream good for you? Scientists divided on claims about health benefits"

「アイスクリームは健康にいいのか?健康効果に関する主張で科学者は割れている」

【要約】
数十年にわたる数々の研究によって、アイスクリームが健康にいいという可能性が繰り返し発見されてきたにもかかわらず、科学者らはそれを見過ごしてきたことが明らかになった。例えば、アイスクリームなどの乳製品を使用したデザートが、肥満者の糖尿病の前兆症状の発祥確率を大きく下げることに関連していることが発見されたが、こうした健康効果が公表されたことはなく、アイスクリームではなくヨーグルトの健康上の利点に注目することが好まれてきた。アイスクリームの健康上の利点を示した研究結果は、今のところイギリスではやや冷たい評価を受けている。ロンドン大学の公衆衛生医師は、この結果に基づいてアイスクリームをもっと食べるよう促すつもりはないと述べる。アストン医科大学のメラー氏は、人々は健康上の効果や利益を単一の食品に結び付けようとすることに最終的な問題があると述べているものの、アイスクリームにはカルシウムなど栄養素が含まれている可能性がある一方で、糖分やカロリーの含有用がそれを上回っている可能性があるため、それを健康食品として考えるのではなく、健康的な食事の一部として少量楽しむものだと述べている。

2023/4/6

”UK firms try to lure Gen Z workers with ‘early finish Fridays’”

「イギリス企業は、『早上がりの金曜日』でZ世代労働者の誘致に取り組む」

【要約】
コロナウイルスの世界的大流行により、若者が職場から教育機関に流出し、55歳以上の早期退職者が急増したことにより、今日の労働市場はここ数十年で最も激しい競争を強いられている。こうした中、何百ものイギリス企業がZ世代労働者の獲得・維持のための新たな施策として「金曜日の勤務の早上がり」に乗り出している。これは、コロナ禍による変化で雇用側が柔軟な働き方を受け入れるようになり、ワークライフバランスを優先する若い世代から優秀な社員を獲得するための取り組みの一環である。

2023/4/3

"Prescribed time in nature linked to improvements in anxiety, depression and blood pressure"

「自然の中で過ごす所定の時間が、不安やうつ、血圧の改善に繋がる」

【要約】
医師は、患者に緑地や水辺で過ごすことを勧めるために、自然処方プログラム(「緑の処方箋」もしくは「青の処方箋」と表現されることもある)を利用することがある。オーストラリアの研究者らは、様々な国における自然処方の影響と効果に関する既存の92の研究を調べた。その結果、最も頻繁に推奨された活動は順に、自然の中を歩くこと、農業やガーデニング、マインドフルネス瞑想であり、利用される一般的な環境は、森林や自然保護区、公園、コミュニティや家庭菜園だった。また、同様の結果を測定した28の研究データの分析から、自然の中でより多くの時間を過ごすことで、血圧の低下や不安・うつ症状の改善に繋がることが明らかになった。オーストラリアでは、まだ自然処方は一般的ではないものの、都市部では約30%の緑地等が健康に有益であることが判明している。

2022/9/27

"China growth lags Asia-Pacific for first time in decades as World Bank cuts outlook"

「中国の成長率は、世界銀行が見通しを下方修正する中、数十年ぶりにアジア太平洋地域に遅れをとっている」

【要約】
世界銀行の予想によると、ゼロコロナ政策と住宅市場危機により、中国の経済成長が30年以上ぶりにアジア太平洋地域における他の地域に遅れをとっているとされる。世界銀行は、2022年のGDP成長率を中国については2.8%と予測しているが、残りの23か国の地域については平均5.3%成長し、2021年の2倍以上の成長率になると予測している。
アジア太平洋地域の全体的な成長率の上昇は、一次産品価格の高騰とパンデミック後の国内消費の回復が牽引している。その一方で、中国の厳格なゼロコロナ政策は、産業のみならず国内の販売・輸出を混乱させた。また、中国70都市の新築住宅価格は前年度比で予想よりも1.3%下落し、不動産ローンの約3分の1が不良債権に分類されたように、中国の住宅市場危機が状況の悪化に拍車をかけている。

2022/5/20

"Global heating is cutting sleep across the world, study finds"

「地球温暖化は世界中で睡眠を削っていることが研究で分かった」

【要約】
地球温暖化によって夜間の気温が上昇し、世界中の人々の睡眠が阻害されていることが研究から判明した。分析によると、人々はすでに年間44時間の睡眠を失っており、何日にもわたって十分な睡眠とされる7時間を切る睡眠をもたらしていることが分かった。また、こうした睡眠の損失は、男性よりも女性の方が高く、高齢者や貧困国でさらに高いことが明らかになっている。過去の研究からは、気温上昇は心臓発作、自殺、精神的苦痛、事故や怪我を増加させたり、働く能力を削ったりすることが示されている。睡眠不足は、温暖化がこうした健康への影響を引き起こすことに起因する重要なメカニズムである、と研究者は述べている。夜間の気温上昇による睡眠不足への影響は、気候に関係なく全ての国で見られることであり、夜間の気温が10℃を超えるとその影響が見られることも研究より分かっている。この研究は、気温上昇による健康被害を軽減するために、市、街、建物の熱への適応を確実にする必要のある政策立案者にとって重要な意味を持つ、と研究者は述べている。

2022/5/11

”MEPs call for 20% reduction in car emissions by 2025”

「欧州議会委員は、2025年までに自動車の排出ガスを20%削減するよう呼びかけている」

【要約】
欧州議会の委員は、電気自動車への移行を促進するために自動車汚染のより迅速な削減を求めている。欧州委員会は昨年、気候危機に対するEUの対応策であるグリーンディールの一環として、2035年までに新たなガソリン車またはディーゼル車を廃止することを提案した。投票の結果、欧州議会は、この2035年の目標を支持した一方で、自動車メーカーについてはより厳しい短期目標である2025年までの「炭素排出量20%削減」を達成すべきだと述べている。これは、ガソリン車とディーゼル車からゼロエミッション車への移行を加速するためである。ガソリン車とディーゼル車を段階的に廃止することは、経済部門において唯一排出が増加している「輸送」による汚染を削減する上で重要な要素であると考えられている。

※欧州議会…直接選挙で選出されるEUの議会組織。欧州委員会に対して法案の提出を要求することができる。
※欧州委員会…政府。一つのEU加盟国から一人の委員が選出され、合議制による欧州連合の政策執行機関とされる。EUの機関の中で唯一法案の提出権を有している。

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