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宗像ブレンドと鉱石と。

この地球上に張り巡らされた
土瀝青の運河を
冷たい鉄の船が往来する

黒く煙立つ運河
西への道は閉ざされた
この身からこぼれ落ちた欠片は
どこへ行くのだろう

運河の上に降る雨は
まるで水銀のように鈍く光る

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地層を覆う土瀝青
石たちは沈黙する

人々は亜鉛の煙に飲まれながら
ただ黙って運ばれていく

どこへ向かっているのかわからないまま
ただ黙って 運ばれていく

石たちの声は
黒い運河に消えてゆく

人々の思いも
黒い運河に消えてゆく

どこからきて

どこに向かうのか

黒い運河もまた全てを飲み込んで
ただただ流れていく

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三本の木が
運河の中に立っている
その根を深く深く大地に根差し
流されることなくたっている

風が木々を優しく揺らし
木の葉がささやく

木はいつも
わたしたちに語りかけている

大地に眠る叡智を
人々の生きた証を
自分が一体何者であるのかを

木を愛でた魔法使い
岩に生えた茶を喫する仙人
山に還る修験の行者
石と戯れる錬金術師

彼らは、大地の声を聴いていたのだ

黒い川に飲まれた人々には聞こえない
この大地の声を

今私の目の前には
琥珀のような珈琲が香気を放っている

この香りもまた
大地の声なのだ
三本の木は九州の神宿る島に立つ

わたしはその三本の木から生まれた
猫晴石の香りに導かれながら
亜鉛の空の下を歩く

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