見出し画像

第2回 西村洋子さんの”こうしよう術”

「みんなで就学活動」は、支援の必要なお子さんが小学校に就学する時にご家族が遭遇する困難や悩みを知るとともに、自分たちにとってより良い選択を描きながら就学できるようにするための“こうしよう”術を、みんなで対話し、つくりあげていくプロジェクトです。
ここでは、実際に就学活動を終えられた先輩方に、リアルな経験談をお聞きし、それぞれの方の知見を”こうしよう術"としてご紹介していきます。

4歳でつけた人工内耳

はじめまして、西村洋子と申します。小4の娘と夫と一緒に、京都で暮らしています。
読書と水泳が大好きな娘は、生まれつき難聴のため、聞こえに支援が必要です。でも4歳のときから人工内耳をつけていて、静かな場所でふたりっきり、あるいは3人くらいのおしゃべりは全く不自由ありません。難聴とは思えないほど発音も明瞭ですし、本が好きなこともあって言葉もよく知っています。しかし4〜5人の会話では相手の話がわからなくなってしまったり、騒がしいところでは全ての音を補聴システムが拾ってしまうため、辛そうな表情を見せることもあります。

現在通っている京都市立二条城北小学校には、通常級の他に支援が必要な子たちのための学級があり、その中でうちの子は、難聴の子の支援をする通級に通っています。市内在住で聞こえにサポートを要する子どもたちが12〜13名通っていて、残念ながら手話の指導はありません。通常級に行く科目もあって、体育、図工、総合、学活といった授業は通常級のお友達と一緒です。

悩ましかった学校選び

小学校選びはいろんな方の意見を聞きながら、たくさん葛藤しました。自治体が行っている一般的な就学相談に行くことはなく、保育園と並行して通っていた聾(ろう)学校の先生に相談していました。先生たちは「行きたいと思った学校を選んだら良い。どこに行っても可能性は広がるはず」と言ってくださり、聾学校にするべきなのか、難聴学級はないけど地域の小学校にするのが良いのか、あるいは現在通っている難聴学級のある小学校が良いのか。どこを選んでもメリットとデメリットの両方を感じて悩ましかったです。

結局最終的には本人が、今通っている学校に「ぜったい行く」と言って聞きませんでした。おそらく同じ聾学校の大好きなお友だちが一緒だからだと思いますが、何度聞いても頑なに言うので、じゃあもうそれしかないねと親が折れた形に。それでも今のところ楽しそうに毎日通っているので、これで良かったと思っています。

悩んだ時は、子ども本人の意見を参考にする。

学校見学、知りたいのはありのままの普段

今の学校には事前に見学に行きました。最初はまだ入学よりも何年も前、私ひとりで見学日に行って話を聞き、2回目は年長のときに家族3人で行きました。聾学校の先生に「電話で見学希望日を伝えて、お願いすればいいだけ」と学校見学として設けられている日時ではない、個別見学を勧めてくれたんです。
娘は2歳から、机に向かって母語(日本語)を獲得するための練習や訓練をしたり、聾学校の先生とは1対1で、それも長時間一緒に過ごすような幼少期でした。そのせいか「先生」という存在に少し特別な思い入れもあるようなんです。なので、先生たちの中で一番上にいる校長先生が自分を迎え入れて、優しく学校を案内してくれた、という事実は、娘が学校を選択する上でも大きかったようです。

また見学した日はちょうど体育でプールの授業をしていました。難聴学級の子どもたちが一緒にプールの授業を受けている様子を見ることができたんです。補聴器を付けている子は全ての機器を外さなくてはいけないので、少しでも聞こえやすいように先生は自分の目の前に座らせていたり、彼らのためにホワイトボードみたいなものを使ったりしていました。その様子を見て、少なからず先生たちにサポートのノウハウが蓄積されている学校なんだと感じましたし、娘自身も、この学校の授業の見通しができたように思います。

学校見学は個別にアポイントを取ると、日常の様子を知ることができる。

欲しい情報には貪欲であれ

もしも違う学校を選択をしていたらどうなっていたのか。それは誰にもわからないんですよね。今の学校を見学した時、難聴学級の国語の授業も見せてもらったんですが、一人ひとり違った聞こえのニーズがあるのに本当に答えられているのかな、と感じたことがありました。でも一方で、こんなにサポートが行き届いた恵まれた環境で育って、この先本当に大丈夫なのかな、と考えることもあります。中学校はまだ難聴学級があるところもありますが高校は本当にひとりで大海原に出ていくことになりますから。

将来を見据えた判断をするのはとても難しいことですが、保護者の中には「聾学校では生ぬるい」と私学に入れて、さらに塾にも入れるなど、あえて厳しい学習環境を作っている人もいます。たまたま娘の言語聴覚士の先生からご紹介いただいて、学校選びをしている頃にお話させてもらいました。そういう保護者やお子さんは聾学校に通学されていないので、どこにいるのか知る方法がありません。でも、就学活動ではできる限りいろんな方の話を聞くことが必要だと思います。

判断するためにはできるだけいろんな意見を聞くのが良い。

いろんな方法や友達の紹介、または友達の友達のまた友達であったりしても、なんとか自分の探している情報にリーチできるように頑張りました

就学活動は確かに大変で愚痴を言いたくなることもあるけど、でもできる限り情報集めに行くことで、子どもが選べる選択肢が一つ増えるかもしれない。そう思って乗り越えて欲しいです。

様々な方の就学活動を知ることで、ひとりでは”どうしよう?”となってしまいがちな就学活動も、みんなで知恵を出し合い、“こうしよう!“と思いを新たに、新しい一歩を力強く踏み出せるのではないでしょうか?次回も、ぜひご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?