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アメリカで出産した時、胎盤カプセルやってみた話

アメリカで出産したわたしが最初に驚いたのは、その出産のしかたに対する自由度の高さでした。わたしの出産した病院は、ロサンゼルスでも最も大きな病院のひとつでしたが、「リクエストはなんでも聞くよ!」という姿勢だったのが印象的です。

例えば、分娩室に入れる人については、誰でも何人でもOK。病院の講習会で男性ナースに聞いた一番クレイジーな分娩のひとつは、妊婦がiPadで3箇所へ生中継した時だそうです。国も広ければ、移民も多いアメリカらしいといえばそうですが、わたしはそこまでして夫以外に出産シーンを見せたいかというと疑問です。

そしてそのナースが最後に付け足した言葉。
「もし義母に入ってこられるのが嫌だったら、こっそり看護師に教えてください。私たちは喜んで追い出しますから!」
ですって。
なんだか力強くてとても頼もしく思えました。義母とわたしの仲はいいですが、女性は出産の時に動物と化すので、その意味はよくわかります。アメリカのナースの印象は、(少なくともわたしの病院に限って言えば)「寄り添ってくれる女神」のような優しさというよりも、「チームで戦うよ!」という心強さがある気がします。

さて、わたしの出産はどうだったかと言えば、アメリカでは割と一般的な分娩でした。ただ、アメリカらしいこともいくつかしたので、ここで紹介します。

1:プラセンタ・エンカプセレーション

これは、産んだ後の胎盤をカプセル化するというものです。グロテスクなのでリンクは貼りませんが胎盤を焼いて食べたり、生で食べる人もいるそうです。興味のある方は自分でググってみてください。

なぜ胎盤を食べるのか?
胎盤は、ビタミンと鉄分に優れ、下がった女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)を助ける役割があるそうです。そして、産後に飲むとエネルギーが生まれ、ムードが良くなるため、産後うつのリスクが下がると言われています。これによって、妊婦の間では、近年ポピュラーになっています。

わたしの場合、胎盤をカプセル化するサービスを提供している女性に事前にお願いをしておきました。もちろんナースにも事前に希望を伝えます。そして、破水した時にすぐに彼女に電話をして、心の準備をしてもらいました。出産後、ナースが指定の箱の中に胎盤を入れ、それを1時間以内に受け取りに来た彼女に夫が渡しました。それだけです。そして次の日の夕方には、彼女がキッチンでグツグツ煮て乾かしてカプセル化したものを瓶に入れて届けてくれました。

こちらが胎盤の写し。魚拓ならぬ胎盤拓。木が佇むように配置してくれたそうです。お食事中の方、すみません。

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そして、こちらができたカプセル。

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で、気になるその効果は?
胎盤は栄養に優れていて、もともと動物なら食べるものなのに、捨てるのはもったいないという考え方がこのブームの根底にはあるのだと思います。ただ、わたしの場合、今となってはそれが本当に役に立ったのかは疑問です。産後うつにはなりませんでしたが、それがカプセルのおかげだったかどうかなんて、それほど科学的証拠もない中で、どうやったらわかるんでしょうか? 滋養も人間においては心配ありません。よくよく調べると、バクテリアのリスクもあるそうです。(リンク:Placenta Encapsulation: Is It Safe To Take Pills Made From Your Own Placenta?

当時は「産後うつ防止の役に立つなら」とやってみて、結果的には面白い経験だったとは思いますが、もし「もう一度子どもを産むとしたらカプセルを作るか?」と聞かれたら、多分「いいえ」と答えるでしょう。その数百ドルで、ベビーシッターさんを雇って美味しいものを食べに行った方が、よっぽど確実な産後うつ防止につながるのでは、と思います。

2:へその緒の行方

日本では、赤ちゃんのへその緒は緒桐の箱に入れて取っておくという風習があります。自分の子と自分がかつて繋がっていた証しですから、わたしもぜひ取っておきたいと思っていました。

しかし、一方で、へその緒の血液(臍帯血)は白血病の治療にも効くという話を聞いたことが若い時にあり、これも是非したいと思っていました。
(リンク:厚生省のページ PDF

「もしかしたら両方できるかも?」と思い、ナースに聞いてみると、「できる」というのです。こうしてわたしは、半分を自分たちのために残して、残り半分はドネーションにすることにしました。

ドネーションは簡単でした。希望を伝えて、書類にサインするだけ。あとは病院が全部手配してくれました。

そして、問題の残り半分。それはなんと、先ほどの胎盤カプセルの女性が、一緒に持ち帰ってくれて、ハート型に形を作って乾かしてくれました。これまたお食事中の方ごめんなさいの写真です。

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ハートなんて安っぽくて、ちょっとセンチメンタルすぎると笑われるかもしれません。今考えればへその緒なんて、赤ちゃんのおへそからポロッと落ちた小さなカケラで十分だったかなとも思うときもあります。でも、それでもこれはわたしにとっては宝物です。形はどうあれ、この奇妙な物体は、かつてわたしの体の中にあり、命と命を繋いでいたのです。こうして光に透かし、これが潤いを持って脈打つように動いている様を思うと、それが命の尊さや神秘を教えてくれるような気がするのです。

また長くなりました。他にもドゥーラと無痛分娩の話もしたかったのですが、ここで一旦切りますね。またリクエストがあれば書くことにします。

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