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【SEA】再建トレード総括②

■超巨大契約のカノーと守護神ディアスのセット販売(18/12/3)

SEA獲得:ジャレッド・ケルニック(OF)、ジャスティン・ダン(RHP)、ガーソン・バティスタ(RHP)、ジェイ・ブルース(OF)、アンソニー・スウォーザック(RHP)
NYM獲得:ロビンソン・カノー(2B)、エドウィン・ディアス(RHP)、金銭($20M)


カノーは現地8日にメッツからリリースされた

 2018年オフに敢行したトレードの中で最も規模が大きいのがこのトレードです。同年禁止薬物の使用で80試合の出場停止処分を受ける衝撃的なスキャンダルもあったカノーは、球団史上最高額となる10年$240Mの契約の5年目が終了したところでした。既に35歳と高齢でもあり、これから再建へと向かっていくチームには居場所のない選手でした。
 しかし36歳から40歳にかけての5年間で$120Mもの巨額の契約が残っている選手引き取ってくれるような球団がそうそういるものではありません。そこでマリナーズは、カノーの契約の$120Mのうち$20Mを負担することに加えて、4年の保有期間が残る若き守護神ディアスを付けることによって、メッツとのトレード合意に漕ぎ着けました。


21歳の若さでMLBデビューも適応に苦しむケルニック

 見返りとして得たのは3人のプロスペクトと、年俸負担の一環として引き取った2人のベテラン選手でした。
 まず一番の目玉は、同年のドラフトで全体6位指名を受けた、ケルニックです。現在は適応に苦しんでいる段階ですが、昨季21歳の若さでメジャー昇格を果たした逸材で、チームのコアへ成長することを期待されています。
 ダンは2016年ドラフト1巡目(全体19位)指名選手です。マリナーズではローテーション定着のチャンスを与えられ、3年間で防御率3.94とまずまずのパフォーマンスを見せました。昨オフにジェシー・ウィンカー&エウヘニオ・スアレス獲得のための見返りの一人としてレッズに移籍しています。
 バティスタは100マイルに届く剛速球が武器のリリーフ投手でしたが、マリナーズでは8試合に登板したのみでリリースされています。

 マリナーズが引き取った二人のベテランは、どちらも翌2019年シーズン中にトレードで放出されています。

ブルースはマリナーズ在籍中に通算300号を放った

 2年$28Mの契約が残っていたブルースは、マリナーズでは47試合に出場し、.212/.283/.533/.816、14本塁打とパワフルではあるものの確実性には欠ける成績を残して後、フィリーズへとトレードされています。

SEA獲得:ジェイク・シャイナー(1B/3B/OF)
PHI獲得:ジェイ・ブルース(OF)、金銭($18M)

 シャイナーは2017年のドラフト4巡目(全体113位)で指名を受けた打撃力が売りの選手です。昨季は非常に投手に有利な球場を本拠地とする2Aアーカンソーで105試合に出場し、.253/.343/.456/.799、18本塁打とまずまずの成績を残しています。

 スウォーザックには1年$8.5Mの契約が残っていました。マリナーズでは15試合に登板して防御率5.27と振るいませんでしたが、ブレーブスへとトレードで移籍しています。

SEA獲得:アロルディス・ビズカイーノ(RHP)、ジェシー・ビドル(LHP)
ATL獲得:アンソニー・スウォーザック(RHP)、金銭($2M)

 オフにFAとなるビズカイーノは肩の手術で全休が決まっており、$4.8Mの年俸の内、シーズン終了までの分をマリナーズが負担するためにパッケージに入れられています。またマリナーズがスウォーザックの残りのサラリーの内$2Mを負担することによって、両者が負担することになる実質的なサラリーが大体同じ額になるように調整されています。
 2018年60試合リリーフで登板し、防御率3.11と活躍したビドルでしたが、この年は防御率5.40と不振で、マリナーズ移籍後も調子は上がらずに6月下旬にDFAされています。

■このトレードの総括

 最後に、メッツ移籍後のカノーの成績を見てみましょう。

メッツ移籍後のカノーの成績
2019年 107試合 .256/.307/.428/.736 13本塁打 39打点
2020年 49試合 .316/.352/.544/.896 10本塁打 30打点
2021年 出場なし
2022年 12試合 .195/.233/.268/.501 1本塁打 3打点

 2度目の禁止薬物の使用が発覚した2021年は、100試合の出場停止処分を受けて1試合も出場することなくシーズンを終えています。短縮シーズンの2020年こそ好成績を残したものの、他の年に関しては高い年俸に見合わない成績に終わっています。結局、メッツは2年近く契約を残したままカノーをリリースすることを選択しています。
 「カノーの放出」が、再建期に向かうマリナーズとって必ずクリアしなければならない課題であったことを、メッツ移籍後にカノーが描いたキャリアそれ自体が単純明快に示しているでしょう。保有期間が4年残る守護神の放出や、多くの金銭負担はそのために必要な経費でした。
 ケルニックが大成するのかどうかはまだ不透明ですが、マリナーズにとっては、巨大な負債を取り除くことに成功した素晴らしいトレードだったと言えるでしょう。

評価:A

画像:Mariners

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