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ミニシアタークラブ 編集後記(2021年3月12日〜4月16日)

 今回は、過去にミニシアタークラブにご出演した方々を紹介していきます。様々な方に毎週出演していただいております。そうした中で今回は3名の方々を取り上げたいと思います。

1 36歳で会社を辞めて映画を作りはじめてめてみた 〜10年かけて16mmで撮影する映画『刻』製作中〜今井太郎プロデューサー

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最初にご紹介するのは、3月12日に行われました、今井太郎プロデューサーです。 

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プロフィール

 ロサンゼルスで映画製作を勉強。帰国後サラリーマンとして働く傍ら、MotionGalleryで集めた資金で自主制作映画『山本エリ「復元可能性ゼロ」と化す』を製作し、劇場公開及びAmazonでの配信を果たす。2016年には大阪のCO2が助成する藤村明世監督『見栄を張る』を製作、国内外多数の映画祭で上映され、2018年に国内とタイで一般劇場公開された。日韓合作映画『大観覧車』では制作協力だけでなく初めて劇場配給にも挑戦した。その実績が評価され EAVE Ties That Bind、Busan Asian Film School、Talents Tokyo、Rotterdam Lab、Asia Pacific Screen Lab 、SEAFIC x PAS等、多数の国際共同製作プログラムに参加。現在は国内のみならず海外の若手監督と組み、主要国際映画祭を目指したアートハウス映画の企画開発に注力している。

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 そんな今井さんが、現在実施しているクラウドファンディングがあります。それが、映画『刻』です。監督・脚本は、長野県出身の 塚田万理奈 さん。

 
1991年長野市出身。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。卒業制作還るばしょが、第36回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)入選、第8回田辺・弁慶映画祭文化通信社賞受賞、第12回うえだ城下町映画祭自主制作映画コンテスト審査委員賞受賞、第9回福井映画祭入選。初の長編映画となった空(カラ)の味が第10回田辺・弁慶映画祭で弁慶グランプリ・女優賞・市民賞・映検審査員賞と史上初の4冠に輝き、東京テアトル新宿、長野松竹相生座ロキシー始め、全国公開を果たす。
「空の味」については、PrimeVideo で鑑賞できます。

 そんな監督の実体験をベースに、主人公の中学生が大人になるまでの、10年間の物語を映画化します。それはフィクションで設定を変えていくのではなく、実際にリアルな中学生が成長していく様を撮影していきます。ものすごい時間がかかる前代未聞の映画です。

 なぜそのようなプロジェクトをやろうと思ったのでしょうか?今回は今井さんのプロフィールや考えをお聞きしながらその背景に迫ってみました。

 今井プロデューサーが映画作りを始めたきっかけは、7年間アメリカにいて映画の勉強をされたそうです。日本に戻ってきた際に、映画の仕事がなく、自分でお金を稼いで映画を作ろうと思ってサラリーマンをやったそうです。独立したきっかけは、10年間サラリーマンをやった結果、お金が思うほどたまらず、映画に向き合う時間がなかったと感じたからだそうです。また、転職活動をしても映画業界に入ることが難しく、それならば、自分でやるしかなかったと考えたそうです。そして、独立する直前に、「山本エリ」を製作したそうです。

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「山本エリ「復元可能性ゼロ」と化す」は PrimeVideo で視聴可能

 それまで映画は監督が作るものだと思っており、シナリオセンターでシナリオを書いても企画に協力してくれる人は少なかったそうです。しかしながら、発想を変えて、シナリオセンターの友人にお金を出すからやろうというと、映画ができたそう。そして、プロデューサーという立場になると映画ができるんだと気づいた。さらに、プロデューサーの方が面白いなと思い、その道を進もうと思ったそうです。

 しかしながら、映画が完成しても最初はどこも相手にしてくれなかったそうです。そんな中、大阪シアターセブンの小坂さんが自主映画応援企画をやっていたそうで、そこで上映していただけたそうです。

 お金は稼ごうと思えば、稼げるようになるが、時間を作ることは難しいと感じ、今は積極的に映画と向き合う時間を作っているのだそう。だから、TVCMなど映画とは異なる仕事を(お金のために)受けてしまうとそうした時間がなくなると。

 次にプロデューサーとしての作品作りについて伺いました。

 今井さんは、監督が作りたいという強い思いが一番大事と考えています。そして、それをお客さんに届けるのがプロデューサーの仕事だと思っているそうです。

 昔は、様々な企画がある中で、監督だけの想いの強い企画は、お金が集まりにくいと思っていて、少し商業性のあるものの方がお金が集まりやすいと思ってたそうです。しかしながら、実際にやってみると商業性のあるものでも簡単に集まるものではなかったそうです。一方、今やっている監督の想いの強い(尖った)作品「刻 」だと、非常にお金が集まりやすかったことがわかりました。また海外のフィルムマーケットでも受け入れやすいそうです。

 プロデューサーとして、監督が頑張っている気持ちを後押ししてあげる。サポートするくらいしかできない。でもそのサポートをとことん、徹底的にやる。それが今井さんの流儀だそうです。

 なぜ、刻を16mmで撮ろうと思ったのかということについてもお聞きしました。

 それは、フィルムを撮ったバージョンとデジタルで観たバージョンを純粋にどちらを観たいかと考えると、純粋に16mmで撮ったものを観て観たいと思ったからだそうです。16mmで撮るだけで、カンヌ映画祭等でかけれるだけの映画のクオリティにできるということもポイントだそうです。もし、デジタル撮影してフィルムと同じクオリティを作ろうとすると結果お金がかかるのだそうです。

 さて、まだ撮影が始まったばかりの「刻」ですが、完成がとても待ち遠しいです。10年後です・・(公開までいくともっと先)。

 ちなみに、第1回目のクラウドファンディングは、5月10日の終了し、先日無事目標金額を達成しました。素晴らしいです!!

 なお、まだ2回あるとのことで、ぜひ次回のタイミングでご興味あれば応援ください。

2 映画館支配人対談 vol2 ポレポレ東中野 大槻貴宏 支配人

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 3月26日には、支配人対談 vol2として、ポレポレ東中野の大槻支配人と北條支配人との対談をお送りしました。場所は、ポレポレ座というポレポレ東中野の1階にあるカフェで行いました。wifi完備のテレワークもできるとても素敵な場所です。

大槻支配人

 大槻支配人は、新海誠監督作品を初めて上映した下北沢トリウッドの運営も同時に行なっています。

 元々は、日本の大学を卒業後、アメリカで映画プロデュースの勉強をしていたそうで、94年に日本に帰ってきたそうです。そこで最初は、映画の専門学校で教えながら、映画を作るかどうかで悩んだ結果、映画の小売店を作ろうと思い、99年に下北沢トリウッドを作って、2003年からポレポレ東中野を運営したそうです。

 大槻支配人と北條支配人との繋がりは18年前、当時ポレポレ東中野を作る際に映画館運営についてお聞きしたことから始まります。

 最初に、学生時代の映画鑑賞の話になり、ユーロスペースの「バスケットケース」の話題で盛り上がりました。

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 北條支配人は、当時ユーロスペースでアルバイトをし始めた頃だったそうです。その頃は、レイトショーでアート系映画を観るという文化が走りはじめの時代だったそうで様々な話で盛り上がりました。

 次の話題は、作品選定についてです。

 大槻支配人も北條支配人も映画を上映する基準は「新しいもの」だとのことです。大槻支配人は、シノゴの言わず自分の心が動いたもの、を基準として、映画としてそれが下手であろうがなんであろうが、関係なく自分の心情を信じているのだとか。

 ただし、新しいものを選ぶことはリスクを取ることでもあり非常に難しいことであり、何が当たるかわからないということを同時に許容することでもあります。たまに、この映画は鉄板じゃないか?と思っていたことが外れることもあり、2人とも自分の感性がずれてきたと思ってしまうことも出てくるそうです。大槻支配人は、そうしたことを避けるために、スタッフみんなで観るようにしているそうで、最低2人以上で観るように心がけているそうです。

 そして、作品選定に関しても大槻支配人、北條支配人ともに真剣です。まず、北條支配人は、「気持ちが幸せじゃ無いと番組を決められない」とし、試写でもなんでも上映会があればお伺いしてみるようにしているのだとか。特に、一番避けたいのはオンラインやDVDでの鑑賞だそうです。どうしても集中して見れず、真剣に向き合えれないだからだそうです。試写ができないインディペンデントの場合は、PCなどを持ってきてもらい一緒に観るようにしているのだとか。

 大槻支配人の場合も試写が一番だそうです。試写会だと作っている人もいるので、それなりの緊張感・真剣に観ることができ、どうしてもそれが難しい場合は、天気のいい午前中にモニターでみるそうです。それは、午後とか夜に見る場合、もし昼間になにかあった際にその影響を受けてしまい集中して見れないからだと。ただ、試写室だと1歩入った瞬間にそこに向き合い構えて観れるのだとか。

 本当に2人とも真剣に作品に向かい合って観ている姿は感銘を受けました。また、そうした作家に向き合う考え方も続いてお話しされました。

 特に1本目、2本目を撮った監督たちがどのように成長していくべきかということについても2人はお話ししました。大槻支配人は先日お話ししたという新海監督とのエピソードを交えながらお話ししていただきました。

 最後に興味深かった話題としては、映画館の運営についてです。

 北條支配人が「ポレポレ東中野は、ドキュメンタリーの牙城みたいな感じになっているが、それは狙っていたのか?」という質問をした際に、大槻支配人は、ある程度は最初から狙っていたのだそうです。そこには、以前の映画館であるBOX東中野の流れも幾ばくか引き継いでいるとのことです。

 しかしながら、昔、荒戸源次郎プロデューサーから、「お前はドキュメンタリーばかりやるのか。そればかりやると細くなるぞ」と言われたそうで、一つのジャンルに固執すると大変だということはかなりリスクがあると感じたのだそう。そのジャンルの中から選ばれざるおえなくなるので、そのジャンルがシュリンクすると映画館もシュリンクすると。だからこそ、幅広くを心がけているそう。

 北條支配人も同様のことを考えており、「お客さんついてますよね?」と言われるけど、「ついていない」とよく言うそうです。2人とも、同様で、色々なお客さんが出入りしている映画館が良いと考えています。そのために、絶えず色々な作品を上映することにより、色々なお客さんに来てもらうことを望みます。結果、それが強い劇場になると。一つの方向性に絞り込むと弱くなる。

 また、映画館は拷問の場所とも言っています。それは、暗くされて同一方向をみんなで見る。だからそれに向かう集中力が違う。お客さんと真剣勝負する場であると。どこまで真剣勝負に近づけれるか、映画館はそれができる場所だからなくならないのだろうと考えていると。

 色々映画館の実情を支配人同士ならではのぶっちゃけトークをしていただきました。非常に面白かった聞き応えのある時間でした。

 ちなみに、最後に余談ですが、ポレポレ東中野のtwitterは、ものすごい数のツイート数があります。

 ツイート数は、2021年5月時点で5.3万件。10年間ほどやっているので、年間5000ツイート、365日で割ると平均で 13.7ツイート/日 している計算になります。そんなにたくさん普通の映画館はできないと思います。映画館の情報や作品に関するツイートをRTしたりと非常に細かく運用しています。そして専門のスタッフはいますか?と尋ねたら、いるわけではなく個々人でやっているのだとか。そうした一人一人のスタッフの映画に対する情熱や細やかな姿勢からも映画館としての強さがよくわかります。ぜひまだ行ったことのない人は「わざわざ東中野まで」足を運んで観てください!

3 映画宣伝の挑戦〜創意工夫の世界〜映画宣伝会社スキップ奥村裕則

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(引用)映画宣伝プロデューサー。得意とするジャンルはホラー、SF、コメディ、アクション。担当した作品は『キック・アス』、『グリーン・インフェルノ』、『イット・フォローズ』、『ストレイト・アウタ・コンプトン』、『スイス・アーミー・マン』、『愚行録』、『デス・ウィッシュ』など。敬愛する監督はジョン・カーペンターとイーライ・ロスとジェームズ・ガン。

 4月16日には、映画宣伝という視点から、スキップの奥村さんにお越しいただきました。奥村さんは多くの映画作品の宣伝を携われております。キックアスIT/イット “それ”が見えたら、終わり。などの映画が有名です。

 「エンターテイメントで祭りを起こす。」を経営理念に会社を運営しています。みんなで一つものに熱狂して盛り上げていくことが映画宣伝の最終目標と思ってこの理念を作ったそうです。最近の映画は、ラビリンススリラー映画「ビバリウム」の宣伝を手掛けられています。

 「ラビリンススリラー」?? 新しい造語です。

 この映画を海外で初めて見たときに「迷宮住宅地って面白い」と思いと感じ、これをジャンルにするとなんだろうと考えた結果、「ラビリンススリラー」と命名したそうです。普段から、この映画ならではの新しい何かを作りたいという思いをもって宣伝されており、その新しい何かがこれだったのだそう。

 なお、この映画は、「人生のダークサイドをシンプルにしたらあの姿に辿り着くのでは」というのが監督が描きたいところだったそうで、例えば、「ご飯は食べるけど美味しくない」、「仕事をしなければならなけど何もない。だから穴を掘る」という形でとても不気味です。そして、その世界には音もなく、実際に映画をみるとただただ恐怖に感じます。

 そうした映画にもかかわらず、なぜこんなにセンスがある宣伝ビジュアルにしているのか?そして、人気デザイナーである大島依提亜さんに依頼したのか?

 その背景には、「ミッドサマー」など、ギャップのあるホラーがムーブメントがあり、その流れに乗ろうというのが宣伝の命題にあったからだそうです。

 奥村さんは常々宣伝に対して課題を感じています。そしてコロナ禍もあり今まで通りの宣伝ができなくなりました。例えば、クチコミのための試写ができなくなったり、シニアの方がなかなか来れない状況で、シニアターゲットの映画をどう宣伝するか、だったり、テレビ局に作品を持って局内に売り込みができない、など。宣伝方法を変えなければならない気風がより強くなったと感じられています。

 そのためには、若い人材がこの業界にたくさん参加してくれて新しい宣伝の形を模索してくれること、そして、様々な経験ができる環境を整えてあげることが大事だと考えられています。

 1つ目の若い人材について大事なことを尋ねると、それは、好奇心であるといいます。作品に対して、一緒に働く人たちに対して好奇心を持てるかどうかが大事だと。宣伝業務というのは、待ってくるものではなく、こちらから仕掛けていかなければならない仕事です。そのために、さまざまなことに興味をもちながら色々なことにチャレンジしていく人が大事なのだそうです。

 2つ目の様々な経験に関しては、「ビバリウム」から始まった配給業務があります。どうしても宣伝会社だと、人様のものをお借りして発信するしかできません。一方で、配給会社という立場になると、自社コンテンツを持っているおり自ら発信していくことができます。それは、同じ宣伝会社であるフラッグの久保社長の影響だとか。

コンテンツを自ら日本に提供していくだけでなく、自社のスタッフのスキルアップを目指してやっている。買ってくれば自社で自動的に宣プロができるので、パブリシティーだけのスタッフが、宣伝プロデューサーにチャレンジできる。

 というようなことをお話しされていたそうです。それにより宣伝会社にいながら実績を積め、より大きく成長できるのです。また、そうしたスタッフが宣伝業務に戻った時も、様々な経験から、マーケットを全体で見れるようになれば、より良い提案ができるようになってくることもメリットで話されています。

 また、物販も始めました。これも顧客のニーズがあるとともにスタッフのお客様と接する視点の成長、そして、宣伝会社としてのブランド作りにつながっていけば良いのだと考えて始められたのだそうです。

 お客様である映画のグッズが欲しいという方が多かったので、販売できる場があると良いと思った。また、お客さんとダイレクトにつながる場所がもてるというメリットがあった。宣伝会社は配給会社のようにブランディングは難しいが、スキップという会社のブランディングイメージを少しでも持ってもらえたら良いと思った。

 最後に直近の夢についてお聞きしたところ、奥村さんは、「ジャンル映画をよく任されていて、そうしたオファーをいただけるが、それを次の世代に譲り、得意分野として持ってもらいたい。」と語り、自分が行なったゲームYouTuberのコラボ宣伝を例に挙げながら、今後は様々な業界と映画をつなげる橋渡しをしていきたいと話していました。

おわりに

 以上、簡単にミニシアタークラブの活動を紹介させていただきました。ミニシアタークラブでは、ミニシアターを盛り上げていくために様々な活動を続けていきます。もしご興味あればぜひご参加をお待ちしています。

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 「ミニシアタークラブ」は、現在メンバーを募集しています。上記にような事柄に加え様々な角度からミニシアターについて考えていきます。そして、普段話せないような映画の裏話まで色々なお話を聞けることができます。映画が好きな人はもちろん映像業界に興味がある人まで歓迎しています(月額 1,000円)。下記のURLよりお申し込みください(活動の中心は、Facebookの非公開グループとなります)。




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