【書評】『カイジ「どん底からはいあがる」生き方の話』木暮太一

今回は、木暮太一さんの『カイジ「どん底からはいあがる」生き方の話』を読みました。
この本は、周りとの格差に苦しむ人におすすめです。
何故こんなに苦しい気持ちになるのか、自分が悪いわけではないということを教えてくれます。


目次
・日本の階級制崩壊
・減点主義の日本教育
・人に必要とされるには
・まとめ


・日本の階級制崩壊
 日本における階級制の例として、企業の年功序列制が挙げられます。
近年、企業の多様化が進み年功序列制もあまり見かけなくなりました。
本書では、このような階級社会が崩壊したことで、多くの人が苦しむことになったと説いています。

 年功序列制の特徴として、どんなに頑張っても勤続年数が長い人の上には行けない、などが挙げられます。
また同期の中でも、能力に差があっても、人より多くの成果を出しても、皆同じ階級です。
この制度が淘汰されつつあり、実力次第で誰でも上を目指せる時代になったのだから、苦しむ必要などないように思えます。

また仕事に限らずプライベートでも、SNS等の普及により個人の力で何かを実現できるチャンスが増えています。
頑張れば誰でも目標を達成し、夢をかなえられる時代になりました。
しかし頑張れば何でもできる時代になったからこそ、何もできていない自分が浮き彫りになってしまうのです。


 階級制がある時代では、制度があるから夢や目標が達成できないのは仕方ないと納得できました。
階級制が崩壊した今、夢や目標が達成できないのは「自分の力不足」と裏付けられます。
自分が無能であると認めざるを得なくなるのです。
さらにSNSなどで見たくもない他人の成功体験を目の当たりにし、自分との圧倒的な差を見せつけられます。
そして諦めや妬みの感情が生まれ、もう頑張るのはつらいと動くことをやめるのです。

 このように、階級の無い平等な社会になった結果、より不平等を感じるようになってしまったのが今の日本です。
こんな不平等な環境で暮らしていれば、誰だっていやになります。
人生何もうまくいかなくて辛いと感じても、それは自分の責任ではないので自分を責める必要はありません。
休みたいときは休んで、進もうかと思ったときに進めばいいのです。


・減点主義の日本教育
 日本教育というと、海外と比べて型にはまっているイメージがありますが、それだけではないようです。
本書では、日本の教育は減点方式であると説いています。

 というのも、学校などのテストでは満点が100点といった具合に「上限」を設けているためです。
良かったところを積み上げて評価する考えの加点方式なら、そもそも満点という概念すらないはずなのです。
そのため、ある水準が設定されそのレベルまで辿り着く事がよしとされます。
つまり日本教育は、どんなに頑張ってもそれ以上はいけず、むしろ至らないことが明白になる設計なのです。


 このような採点方式は仕事での評価にも引き継がれています。
例えば営業成績において、月100万を目標に掲げてその月を90万で終えたとします。
この場合、多くの企業では「プラス90」ではなく「マイナス10」と評価され、この結果が称賛されることはありません。
これではなかなか頑張ろうという気力も湧きません。
しかしそれではいけないと、今月は新規顧客の獲得にリソースを割きましたが失敗に終わり、成績最下位で終えたとします。
この場合も当然評価されることはありません。

 既存のビジネスをそつなくこなすことよりも、新しい領域で成果を出すことのほうが圧倒的に難しく重要です。
しかしそこにチャレンジしたことは評価されず、結果だけが評価対象となるのです。
先月と同様に立ち回っていれば90万は固かったかもしれませんし、少なくとも最下位になることはありませんでした。
こうして、わざわざ動いた結果ミスをして減点されるくらいなら、何もしないのがベストという結論に至るわけです。


 本来、失敗したらマイナスではなくゼロなだけ、どころか考え方次第ではプラスにもなりえます。
にもかかわらず、日本人は直感的にそうとは思えず失敗することを嫌います。
これが日本教育の減点方式の弊害といえますが、これを頭に入れておけば染みついた思考を切り替える一助になるでしょう。


・人に必要とされるには
 人は誰しも誰かに必要とされたいという欲求を持っています。
人脈を作る、という行動もその欲求に従った結果といえるでしょう。
本書では、人脈とは作るものではなく惹きつけるものであると説いています。


 ではどうしたら人を惹きつけるような人間になれるでしょうか。
プロセスを紐解くために、まずは人を商品に置き換えて考えてみます。

 商品には、消費者にとってその商品を買うに値するメリットが必要です。
メリットは値段が安い・長持ちするなど多々ありますが、当然これらに惹かれるかどうかは消費者によって異なります。
そのため、消費者の求めるメリットを明確にする必要があり、そこで重要なのが「消費者の願望実現」に注目することです。

 「願望実現」とは、「Aしたいけど、Bという理由でできない」の「Bしたい」の部分を取り除くことです。
例えば、教習所に行きたいけど子供の世話が忙しくて行けない、という人がいたとします。
そんな人に、業界最安値の教習プランを紹介しても、子供の世話があるので行けません。
どんなにお得です!格安です!とおすすめしても、その消費者には刺さらないメリットなのです。
この場合は、例えば託児所がありますといったメリットを伝えるのが最適です。


 このように、商品に必要なのはただ「他と比べて安い」とか「質がいい」というメリットではありません。
「こんな理由を取り除けます」というメリットが必要なのです。

 商品を人に置き換えても同じことです。
相手ができないことを自分で穴埋めすることができれば、自然と人に必要とされることでしょう。


まとめ
 以上、木暮太一さんの『カイジ「どん底からはいあがる」生き方の話』でした。

大まかな内容のまとめは以下になります。
 ・日本が平等な社会になった結果、人は不平等に苦しむようになった。
 ・日本教育の減点方式が、人の行動する気力をそいでいる。
 ・人生がつらいのは環境が原因なので、自分を責める必要はない。

本書は上記以外にも、
 ・自身の課題の見つけ方
 ・不平等は不滅
 ・「かわいそう」の本質

などなど、生きていく上でためになる情報が満載でした。
ぜひ読んでみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?