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あめんぼ生活 #12 満員電車

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満員電車は面白い。

いや、もちろん、つぶされそうになって押して押されて、つま先一本立ちで数駅耐える羽目になって、毎回二度と乗るかってなるのだけど。


ただ、たまに面白いことに遭遇する。


あの窮屈の中で最低限の面積にしつつ、会話を続ける女性二人組をみたことがある。その二人は、抱き合うような近さで、顔を互いの肩の上に来るようにした状態で、さも当たり前のような顔をして会話を続けていたのだ。

合体とはこういことか、と阿保になって思った。

一度しかないが、安息地を得たこともある。
私は、身長が低い。

148センチ。
もちろんもっと低い人もいらっしゃるかと思うが、168センチの友人に言わせれば152以下は同じにみえるそうだ。

低身長による抗議も書きたいのを堪えつつ、

148センチの私が乗り合わせたのは黒背広の群衆の中だった。
私が一応女性であることを気にしてか、周りの黒背広たちが全員私に対して背を向けた状態になった。

黒の鉄壁である。
どこに寄りかかっても、押されても、安心感があった。

これなら満員電車も悪くない、なんて思った。

恥ずかしい思いをしたこともある。

満員電車で、掴めるところもなし、疲れていたこともあり、もはやと、思い切り隣の男性の肩を借りたことがある。肩を借りつつ携帯をいじっていて、違和感に気づいたのは降りる間際だ。

私の周りはすでに満員電車ではなかった。

私は数駅の間ずっと、全く知らない人にただただ寄りかかっていたのだ。
降りる時に気づき、軽く会釈はしたが、恥ずかしくて男性の様子を見ずに駅を後にした。

思い返すと、優しい人で良かったと心底思う。


こんな風に、満員電車は少し、面白い。

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