【エッセイ】終わらないかもしれない
私は、現実想像問わず、血の流れる怖い話が苦手である。
殺人事件のドラマが点いていると、目と耳を塞いで逃げるし、
お化け屋敷では、目を閉じたまま、手を繋いでもらって脱出する子どもだった。
大人になった今でも、凄惨なニュースは見られないし、
ホラーやスプラッタ、血の気の多いミステリなどは嗜まない。
京極夏彦さんや、森博嗣さんは、美しさが怖さを上回るので、
読むけれども、自宅には置いておけない。
そんな私が、いま読み始めたのが、綾辻行人さんの『Another』。
しっかり“ホラー”と書かれている。
まだ誰も死んでいない。
けれども、すでに怖い。
推理を“解決”とするミステリなら、後味の良し悪しはあれど、
読み終えることで、怖さはある程度、克服できる。
文字どおり“終わる”からである。
現実に起こった事件は、被害者や加害者だけでなく、
そこに関わる人たちに繋がっていくから、終わらない。
まともにホラー小説を読んだことはないけれど、それだってきっと、恐怖は完全には終わらないはずだ。
だって、恐怖を味わうエンターテイメントなのだから。
私だったら間違いなく、怖さが解決しないような物語を作るだろう。
読み進めても、読み終えても、怖いままのものを。
『Another』の読後感が、どんなものかはわからないけれど、
終わらないかもしれない怖さに、どきどきしながら、ページをめくっている。
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