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アドラー式子育て術「パセージ」ーほめない、しからない、勇気づける

嫌われる勇気で一躍、有名になったアドラー心理学。「理想論ばかりでなかなか実践が難しい」と捉えられがちなアドラー心理学であるが、それを子育てに活かす「パセージ」というプログラムがあります。「パセージ」は、日本アドラー心理学会認定のプログラムですが、書籍も出版されています。
今回は、3歳からのアドラー式子育て術「パセージ」という書籍の内容についてまとめていきたいと思います。

1. 子育ての目標とするもの

パセージでは親と子どもが共に対等に成長していくために、心理面と行動面にそれぞれ2つの目標を設けています。

・心理面の目標
 私には能力がある
 人々は私の仲間だ

・行動面の目標
 自立する
 社会と調和して暮らせる

この4つの目標を達成するための考え方が「パセージ」です。
適切な「行動」には適切な「心理」が必要であり、子どもがこれらの目標を達成するために援助することを「勇気づける」と表現しています。
もちろん、この目標は子どもだけでなく家族で達成していきたい目標でもありますね。

2. 賞罰教育の否定

アドラー心理学の特徴的な考え方として、「賞罰教育の否定」が挙げられます。
近年では、宿題をしなかったら夕飯を与えないなどの体罰の規制が進み、「罰を与えること」に関しては世間の見方も変わってきていると思います。
しかし、アドラー心理学では、「ほめる」ことも明確に否定しています。
賞罰教育は子供にどのような悪影響を与えるのでしょうか?
「パセージ」における罰と賞の二つの側面の考え方をまとめてみます。

(1)罰の与える悪影響
 ・罰する人がいないと適切な行動をしない
 ・信頼関係が悪くなる
 ・消極的でやる気を失ってしまう
 ・子どもが大きくなったときに同じ罰する教育をする可能性がある
 罰の与える悪影響は、すぐ頭に浮かぶと思います。
例えば、「宿題をしないと夕飯を与えないという罰を与えた」とします。罰を与えられた子どもはどう感じるでしょうか?例えば、「宿題をしないと夕食が食べられないから、仕方なくテキトーに宿題を終わらせる」「親は自分の敵だ。宿題をしたと嘘をつこう」という行動に出るかもしれません。
いずれにせよ、「私には能力がある」「人々は私の味方だ」と子どもが感じることは無くなってしまうでしょう。 

(2)賞の与える悪影響
・「賞」が目的になってしまう
・「賞」が得られないと適切な行動をしない
・ご褒美が次第にエスカレートする
・結果ばかりに目がいき、成果が出ないと安易な行動をしたり投げ出したりする
 以上の点が挙げられます。
例として、「嫌いな食べ物を食べたら、ご褒美におもちゃを買ってあげる」という賞で子どもを動かした場合、子どもは一時的には適切な行動をするかもしれません。しかし、ご褒美が目的になってしまうと「ご褒美がもらえないとわかると、嫌いな食べ物を食べない」「前回以上の報酬を要求する」という行動をするかもしれません。
いずれにしても、「結果や褒美」が目的になってしまい本質的な目標(この場合は、好き嫌いをせずにバランスの良い食事を取ること)を見失ってしまうかもしれません。

(3)賞罰教育ではなく「勇気づける」教育
 アドラー心理学では、親子関係は対等な関係と捉えています。「ほめる」「しかる」ということは他者を評価することであり、そこには上下関係が生じます。親も子どもも人生を一生懸命生きているという意味では同じ一人の人間であり、対等な関係といえるでしょう。
 親の役割は、子どもをほめたり叱ったりすることではなく、子どもの課題を援助する、つまり「勇気づける」ことです。
 次に、課題の分離という考え方についてまとめてみます。

3. 課題の分離

課題の分離とは、誰の結果に影響があるかによって課題か区別する考え方です。例えば、子どもが勉強しないと結果を被るのは子どもであり、子どもの課題になります。子どもの宿題を親がやっても意味はありませんよね。
ここで注意しておきたいのは、親が「子どものため」と思っている事は「自分が安心したいため」になっていないかということです。子どもが将来、困らないように勉強を子どもにやらせるのは、親が放任主義と思われるのを恐れていたり、世間体を気にしている、つまりは親のエゴです。親の世間体を守るために子どもに勉強をさせている、「課題の肩代わり」の状態になってしまいます。
パセージのアプローチは、共通の課題にしてみるという方法があります。例えば、親子で一緒に勉強をする時間を設けてみるなどが挙げられていました。

4. まとめ

「パセージ」では実際の子育ての事例を取り上げて、どのように子どもと接したらいいかが書かれています。子育て術に関する本は山ほどありますが、どの本も「子どもの自立」が目標だと思います。そのための手段が違うため、それぞれの家庭にあった方法を取り入れてみてはいかがでしょうか?

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