日本のミニマリズムをディスってみる
この期に及んで、まだ何か言いたいことがあるのかお前は、と言われそうですが、書けるうちに書いておこうと思います。
記事タイトルにあるように、日本の「ミニマリズム」をちょっとからかってみるだけで、特定の日本人「ミニマリスト」を批判するつもりは毛頭ありません。たとえ「ひょっとしてそれ僕/私のこと?」と感じても、気のせいです。スルーしましょう。
私は日本語のミニマリズムの本を読んだことがなく、日本語のブログもあまり読まないので、以下は断片的な情報をもとにしています。なので、以下に書くことは、ひょっとするとすでに古い情報で、そんなことはもう誰もやっていないのかもしれません。
生活スタイルなんて暮らしていくうちに変わりますし、それが普通です。
とはいえ、「それって、わざわざミニマリズムと銘打ってしないといけないことなのか?」ということがミニマリズムとしてまかり通っているような気がするので(日本に住んでいないので実情は知りません)、以下は門外漢としての素朴な疑問です。
日本的ミニマリズムの3つの矛盾
1.結局「モノ」に執着している
不用品を捨てる前に、「写真に撮って残しておく」というマメなことをしてる人がいるそうですが、そこまで物に執着していること自体が驚きです。それほど思い入れがあるのなら、別に捨てなくてもいいんじゃないかと思うんですが。
お子さんの図画工作なんかだったら、ある一定期間が過ぎたら、捨てる前に記念に写真をとっておく、というのはいい考えだと思います。
でも、なんでもない自分の所持品を捨てる前にわざわざ写真に撮って残すとか、未練がましいというか、その作業時間がもったいない。捨てると決めたら、さくっと捨てたほうがいいんじゃないでしょうか。でないと、たんにデジタル汚部屋を作るだけです。
それに、不用品を写真として残して、あとでしげしげとそれを眺めるとか、オタク過ぎてちょっと引きます。それって、普通の人以上に物に執着してませんか?むしろ、執着の程度が尋常ではありません。
「いや、撮った写真はほとんど見返さない」というんなら、なんのために写真にとるんでしょう?
私はそこまで物にこだわったことがないので、よくわかりません。
2.「モノ」を減らすことに固執している
逆に、物を捨てることにこだわりすぎて、わざわざ不便、不満、不健康の原因を作っている場合もあるようです。
もちろん、必要・不必要と感じるものは人それぞれですし、捨てたことで生活空間や生活そのものが改善するならそれでいいでしょう。
たとえば、私は電子レンジは断捨離しました。私には必要ないからです。でも、ビルトイン型のIH クッキングヒーター、オーブン、グリルはあります。ですが、ちゃんとした料理をしない人なら、レンジだけでいいのかもしれません(不健康そうな気もしますが)。
とはいえ、「これなくしては生きていけない」というわけでなくても、できることなら持っていた方が絶対いい物もあります。健康的かつコスパの良い食生活をしようと思ったら、冷蔵庫は当然あったほうがいいです。
それ以外でいるものとして私が思いつくのは、カーテンです。カーテンは意外と必需品です。(地下牢に住むのでない限り)
私はイギリス国内だけでも10回以上引っ越しを経験しましたが、「新しく入居した時、何はなくともまず用意すべきはカーテン」とさえ言われます。プライバシーを守る意識が日本より強いからかもしれません。
また、カーテンは温度調節にも役立ちます。長い目でみたら、冷暖房費の節約になります。ちょっと値段のはる遮光カーテンだと、防音効果があるものもあります。
そして言うまでもなく、カーテンは光を入れたり遮ったりするのに便利です。余計な日差しでデスクワークの生産性が下がるくらいなら、カーテン1枚買えば済むんじゃないでしょうか。
利点を総括的に考えたら大した出費ではないと思うのですが、「体にはよくないけど、物は少ないほうがいいから」と、必要なものまで処分するのは、はっきり言って論理的思考に欠けています。
そもそも快適に暮らすためのミニマリズムであって、なにかの修行じゃないんですから、もう少し理にかなったミニマル化をなさった方が、体のためにいいんじゃないでしょうか。
3.「カネ」に固執している
物販アフィリエイトをしているミニマリストが多いのは、日本のミニマリズムの特異な点です。
アメリカやイギリスのミニマリストブロガーにも、ブログに広告を貼っている人はいます。英語圏のブログは、えてして記事更新が少ないので、半分お飾りみたいなもんです。中には、「広告収入は慈善団体に寄付しています」と銘打っているブログもあります(そういうことは黙ってやればいいと思うんですが、慈善クリックを期待してのことなのかもしれません。)
ですが、少なくともイギリス人ミニマリストで素人のブロガーが、アマゾンとかの物販リンクを貼っているのを私は見たことがありません。偏見かもしれませんが、アメリカ人だとやってそうですが。(プロのブロガーは別です。彼らは収入を得るためにあらゆる手段を使います。仕事ですから)
これは日本同様、アメリカではミニマリズムが商業ベースに乗ったビジネスになっているのに対して、イギリスでは大してブームになっていないことによるのかも知れません。
あと、日本では、株式投資をしているミニマリストも多いですね。それって普通に「財テク」カテゴリーの話に思えるんですけど、日本的にはミニマリズムなんですか?
なかには、物さえ減らせばミニマリストだと思いこんでいるのか、ひたすらお金をためることに必死の守銭奴ミニマリストみたいな人もいてちょっと怖いです。広告か物販か株(あるいはそれら全部)の収入動向が、思考の中心になってしまっている感じです。
それらがいけないと言っているのではありません。ただ、そういう「金銭至上主義」が、なぜミニマリズムと関係するのか不思議に思うだけです。
既に何度か書きましたが、ミニマリズムに一定のひな型があるわけでもなく、厳格な定義があるわけでもありません。しかしながら、「物質主義と距離をおいて、より自由に生きる」、というのがミニマリズムの根幹のメッセージかと思います。
物質主義(Materialism)とは、ケンブリッジ辞書によると、
"the belief that having money and possessions is the most important thing in life." 「金銭や所有物が人生においてもっとも重要だとする考え」です。
これら(とくに金銭)への執着から一歩距離を置く、というのは、たしかに難しいことです。ですが、一体なにから自由になろうとしているのか分からず、方向を見失って、結局は物質主義に帰着しているのが、日本人のミニマリズムのような気がしてなりません。