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英国女王のメッセージ

イギリスの家庭で過ごすクリスマスにつきものなのが、エリザベス女王の「クリスマス・メッセージ」です。

メッセージは10分程で、テレビ、ラジオだけでなくネットでも観れますが、メッセージが放送される12月25日の午後3時になると、「あ、見なきゃ」とみんな揃ってテレビの前に集まる、という家庭がいまだに結構あります。

まだ私が博士課程にいた頃、イギリス人の友人が自宅のクリスマス・ランチに招いてくれたことがあります。食後まもなく、そこのお母さまから、まさにこの呼集がかかり、家族全員が「お、そんな時間か!」と、いそいそとテレビの前に集まるのを見て、ちょっと驚きました。

90歳、現役で公務をこなすエリザベス女王

今年も当然、恒例のクリスマス・メッセージがありました。高齢の女王をニュースで見るにつけ、彼女が果たしてきた役割に感服します。

エリザベス女王は御年90歳。
イギリスの慣習法にのっとって、「君臨すれども統治せず」なので、政治に直接介入はしませんが、現時点で約64年間もの長きにわたって女王の地位にあります。

在位中の君主の中では、世界最高齢であるだけでなく、世界で最長在位の君主でもあります。

忘れがちなのですが、エリザベス女王は、実はイギリスだけでなく、カナダ、オーストラリア、ニュージ―ランドなどを含む、合計16か国の女王です。

最近は徐々に仕事を息子夫婦と孫夫婦に引き継いでおられるものの、現在もご主人のエディンバラ公(95歳)とともに公務を遂行しておられます。すごいですね。

生きること自体がメッセージ

彼女は女王という立場ですから、その影響力も経済的基盤も、一般市民はもちろんのこと、日本の皇室とも比べ物になりません。でも、影響力が大きい分、当然責任も大きいわけです。

彼女はたまたま女王となるべく生まれただけで、女王になろうとしてなったわけではありません。もっとも、生まれた時から女王になるべく教育されてきているわけですから、即位する心の準備はできていただろうとは思います。

とはいえ、英国女王という大役を20代半ばで引き受けることになった彼女にしてみれば、「今さら蒸し返すのもなんだけど、エドワード伯父さん何してくれてんの」状態なわけです。(この辺のことは、ウィキペディアの「ジョージ6世 」か、映画「英国王のスピーチ」でも参照して下さい)

イギリス王室の一員であるということは、もちろん「特権階級」ですが、それと同時に、資産の管理・運営を伴う「仕事」です。

今もイギリス国民に愛される英国王室ですが、エリザベス女王にせよ、先代のイギリス国王にせよ、好む好まざるにかかわらず自分に与えられた責務をやり遂げる、という点も尊敬に値します。

いわば、職務遂行能力と呼ばれるもので、これはもって生まれたものというよりも、努力や責任感に基づいて自ら向上させるものです。

さらに、職務遂行能力は、リーダーに不可欠なだけでなく、仕事にたずさわる者すべてにとって重要な能力です。

女王は今年のメッセージの中で、「個人で成しえる善き行いはたとえ小さなものだとしても、それが結集したとき、想像を超える大きな影響をもち得る」、と語っていました。

これは組織論にも通ずるものであり、組織の中で働いたり、他の人との共同作業を通じてこそ味わえる醍醐味です。

どんな仕事に従事するにせよ、自らの責務を貫徹したとき、生きること自体が他者へのメッセージになるのだと思います。