D. エリボン『ランスへの帰郷』
C. レヴィ=ストロースとの対談書やM. フーコーの伝記書にて日本でも知られているD. エリボンの自伝をようやく読み終わる。
すでに多くの書評があるように、同性愛者であることと労働者階級出身者であることという、二つの負のアイデンティティをめぐる経験と考察が本書の中心をなしている。ともに既存の社会における負のアイデンティティであるにしても、両者に対して著者がとってきた戦略は対照的なものである。前者についてはそれを引き受けたうえでその解放に尽力していくのに対し、後者についてはそ