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「人間の生き方」を学んだ資料とその記録

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改めて読み直して気づいたこと、若い時には気づくことができなかったこと、年を重ねて経験してきたからこそ気づけたことを書いたもの
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2023年6月の記事一覧

有吉佐和子さんの著書『恍惚(こうこつ)の人』の解説より

有吉佐和子さんの著書『恍惚(こうこつ)の人』の解説は、社会福祉学者の森幹郎さんである。昭和57年当時の老人問題について書かれており、今日の高齢者の方々がどのようにして自分の親と向かい合っていたのかを知ることができる小説でもある。 昭和57年(1982年)の寝たきり老人の数は30万人を越えており、限られた財源の中で、「寝たきり老人対策」が優先されていたという。 *今現在「痴呆」という言葉は使っていない 我が国の老人問題 昭和30年代の中頃から始まる高度経済成長。それ以前

「夫婦」を捉え直すための…石田衣良さんの著書『再生』

2009年角川書店より発行された、石田衣良さんの著書『再生』 この中に「東京地理試験」がある。松井定明(さだあき)という初老の男性が、新し世界へと踏み込む努力をやり続けた物語で、そこにいる妻の存在は小さく、見え隠れしている。 定さんは、高校を卒業してから40年、清掃車を運転していた。趣味は将棋。休日は区民センターの将棋教室に欠かさず出席した、将棋マニア。 定年退職をむかえ、意気揚々と将棋教室へと通った。 最初の一週間は天国だった。 ところが二週間目になると、負けがこ