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壊すか、捨てるか。文化財の保存


 僕にとってのスターだった、山手線と京浜東北線の103系電車。たくさんの模型や玩具、本やDVD、文具やイラスト・アイコンなど、ここまで愛された電車はほかにあるだろうか。自分が好きなせいもあるが、この電車が存在しない鉄道なんて、日本が世界に誇る鉄道として何の魅力があるのかと思ってしまう。
 
 多くの日本人は、世界遺産や国宝になっている城や寺などを誇りに思うだろう。だがそれらが現存しているのは、昔の日本人が〈残す〉という偉大な決断をしたからだ。現代の僕たちはそれを傍観しているだけで、何かを未来に〈残す〉ことは考えない。
 海外では昔の鉄道車を保存する活動が盛んに行われているが、世界から見習われるくらいの鉄道を持つ日本は蒸気機関車以外、あまり積極的ではないようだ。
 新しくて、便利で、楽なもの。いつからかみんなでこんなものばかり追いかけているうちに、平成以降、日本は歴史を作ることを忘れてしまっているような気がする。お金がかかるからと文化財を捨ててしまう国と、お金をかけてでも文化財を残す国。文明だけを追いかけて文化を捨てるのと、文化こそ財産だと大切にするのと、どちらの国力が上なのだろう。これを廃棄したほうが利益が出るという不幸な判断だとしたら、その利益はどんな幸せのために使われるのだろう。
 
 和田岬線の103系、残ってくれたらいいなあ。製造から50年というのが中途半端だ。法隆寺のように1400年とか経ってしまえば誰もが拝んで崇めて奉る神さまのような存在になるのだが…。

1400年経たずとも神々しい顔に見えなくもない。


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