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ショートショート 『スランプでもファンがいれば』

私はあんずまろんさんのファンだ。

彼女のシャッフルを見ていると
自分もしたくなるし、
彼女の解釈が本当におもしろい。
未来がどうこうより、彼女の話を聞きたくて
You Tube見ている感じ。

最近彼女が最後に言うのは、
「コメント欄に願い事を書いてください」というもの。書くと実現している方続出しているらしい!
コメント欄に書くの恥ずかしいから書かないんだけど。。。
そんな時に、1つの物語が頭に浮かんだので、
コメント欄の代わりに書こうと思う。

『スランプでもファンがいれば』

某喫茶店でパソコンをカチカチカチ………
私はとてもイラついていた。

理由は息子との口ゲンカ。
急に休校になったからって、
お昼すぎまで寝てないで1時間でも勉強したら?
と言ったら、反撃された。

「いいよね、母さんは。
ボクが眠い目しながら学校行ってる間、
母さんは、テレビ見てお昼寝してるんでしょ。」

お母さんは、毎朝あなたのお弁当用意して、
朝ごはんも用意して
お父さんとあなたのことを叩き起こしてるのよ!
掃除・洗濯もやってるし、
在宅とはいえ、仕事しとるわ!!

「母さんは好きで仕事やってるんでしょ?
ボクはゲームする間も惜しんで、
やりたくもない勉強して、
クラブでの先輩後輩のやり取りもあるってのに…」

その口が達者なとこは誰に似たねん………!
もう!勝手にしたら!!と掃除をほっぽりだし、
パソコンとケータイだけ持って飛び出した。

………で今に至るわけである。

私はモノを書く仕事をしている。
たまたまご縁があり、
夕方のニュースのコメンテーターなんてことを
たまーにしていることもある。

息子が生まれて1度仕事は辞めていた。
在宅でできる仕事を見つけて、
楽しい仕事でお金をいただけるようになって。
確かに、独身時代よりも充実してるかもしれない。

でも、やっぱり仕事だから、トラブルだってある。
辞めてしまおうかなんて考えることもあるのだ。
そんな今、案件である小説の文章が進んでいない……
絶賛スランプ中である。

息子の言葉を思い出す。
そうだよ、好きで仕事やってるよ!
でもスランプだってある!
必死なほどしんどくなることあるんだよー!

あーーー!
こうなったら……
♫ピンポーンと店員さんを呼ぶ。
「豆菓子追加で!!」
コーヒーについている豆菓子って
なんでこんなにおいしいんだろう。

シロノワールも頼んじゃおうかしら。
なんて考えていると、
『あの、………毛利香(もうりかおる)さん
………ですか?』というセリフが。

………………へ?あっ、はい!
めちゃくちゃうわずった声で返事をしてしまった。
『やっぱり!!私ファンなんです!!
握手?え?サイン!して……ください!!』
彼女の興奮している声でハッとする。
今ファンに声をかけられたんだ。

サインと言わずに、こちらどうぞ。
『え!!いいんですか?!やったーー!』
ファンの女性はカフェオレと豆菓子を持って
移動した。

『私、“息子と母のゲームを巡る旅”、好きなんですよ!』
あぁ、息子と発売日にゲームを探し回ったあの話か。。
また息子の言葉を思い出した。
あ、んもーー!

私の表情が少し変わったのに彼女は気づいた。
『………もしかして、ケンカしたとか?』
あっ……
「実は……」
彼女に息子とのケンカのこと、
絶賛スランプ中のことを話した。

初めて会った人なのに、彼女と話が弾んだ。
彼女も女の子のお母さんで、家事・パートの合間に私の文章を読んでいるらしい。
それでもここまで会話が弾んだのは、
やはりファンの力というものなのだろうか。
いつの間にか、おかわりしたカフェオレも
豆菓子も空になっていた。

『すみません…!何かたくさんしゃべってしまって!』
と彼女は謝った。
「いえいえ、めちゃくちゃ楽しかったです!
すごい気分転換になりました!!」
紙のコースターにサインをかき、彼女に手渡した。
「また見かけたら、声かけてくださいね。
たまにここに来てるから!!」
『はい!またお話してください!!』

スーパーへ晩ごはん・明日の朝のパンを買って、
家に帰ると、カップ麺が置かれていた。
“お昼ごはん食べて”という付箋が貼られていた。
お昼に買ってきて食べたのだろう。
私の分も買ったのは、息子なりの謝罪なのか?

「あっ、母さん、おかえり。」
息子はゲームをしていた。
お母さん出てってる間、何してんの?
「え?母さんいった通り、寝ずに1時間勉強して、
で、ゲームをして有意義な休日を過ごしてんの。」

この屁理屈野郎!!
と叫びそうになった時、
「これ、母さんと探し回ったゲームだね。
こういうのってさ、ゲームの内容よりも、
探し回ったことの方が思い出になるよね。」
と言い出した。

どっかで聞いたことあるセリフだな。
それは私が書いた“息子と母のゲームを巡る旅”で
私が書いた言い回しだった。
私の文章を読んでいる人がここにもいた…。

「………晩ごはん、何にする?
いろいろ買ってきたんだけど…。」
「んー、肉じゃが!!
糸こんにゃくはちゃんと切ってな。」
はいはい、と私は料理を始めた。

仕事がうまくいかない、
家族とケンカ、そんなときはきっとある。
でもファンの存在、味方の存在を忘れなければ、
きっとまた前を向くことができる。

あれから私は
気晴らしにあのお店に行く。
そしてたまに彼女と話をする。

おしまい。

完全にコメダ珈琲での物語ですね(笑)
コメダ珈琲はパソコンで仕事してる人、
世間話している人、シロノワール堪能してる人
いろんな人が見れて好きです。

きっとこう喫茶店でいろんな人の物語があって、
それがまた幸せってことで……
喫茶店で仕事って憧れるな。
でもってそこでの出会いもいいな。
というのがこのショートショートにあります。

ちなみに、息子くんが言った、
「母さんはお昼寝できていいね」
のセリフは過去に私が言ったセリフです。
(最低な娘やな)

けっこう楽しかった。
芸術の秋だな、うん。

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