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白熊杯、大詰めだ〜

今週の「やってみた」は、白熊杯です。
先週も参加させていただきました。

今回は、短歌を1句詠んでショートショートを
やってみようかしら。
冬の光景があらぬ方向に……という展開です。

大雪の 大人雪かき 傍らで
雪遊びする 子ども見守る

「わーーい!雪だ、ゆっきだぁーー!」
子どもはのん気でいいなぁ。
大人はこんな雪の日、
大雪警報が出ようが出勤なのよ。

ぼすっ!
冷たい何かが背中に当たった。
子どもに雪の塊をぶつけられたのだ、
「やったー当たった〜!ねぇちゃん学校休み〜?
遊ぼうよ〜!」
一体いくつに見えたのだろう。
もうお酒飲める年ですけど??

「ねぇちゃんはこれからお仕事なの」
と言うと、
「えー?大雪警報出てるよ?お仕事休みじゃないの?ブラック企業なの?」
ブラック企業っ、ブラック企業っ!と手拍子しながら連呼する子どもたち。
通行人が見てるじゃん、恥ずかしい。

私は持っていた紙袋からみかんを渡した。
「これあげるからちょっと静かにして〜
実家のみかんだからおいしいよ。」
すると子ども達はにやりとしながら
「ありがとう!ブラック企業がんばってね~!」
と送り出してくれた。

歩いている後ろで、
「おばちゃん、雪かきで雪を川に捨てないでよ〜!
僕たちが遊べなくなっちゃうじゃない!」
と文句を言っている声が聞こえた。

職場に着き、仕事に取り掛かろうとしたが、
上司から「午後から電車止まるって。
だからもう帰ろう。」という指示があった。
朝、からかってきた子どもたちに言いたい…!
ブラック企業じゃないぞ!うちは!!
職場のみんなに実家のみかんを渡す今日のお仕事を終えて、帰ることにした。

子どもたちにからかわれた場所まで戻ってきた。
あれ?子どもたちがいない。お昼ごはん食べてるのかな?

一際大きい雪だるまを見つけた。
目にみかんが埋め込まれてる。
これ私があげたみかんじゃん。
ということはあの子たちか。

私はズレていた目の位置を直した。
すると、
“メノイチ、ナオシテモラッテ、スッキリ!”
という低めの声が聞こえてきた。

え?振り返っても誰もいない。
まさか……
「雪だるまさん、しゃべれるの?」
と聞くと、
“何デ、ソンナ小声デ聞クノ?”
と答えが帰ってきた……。
まじか。私ブラック企業に働いてないのに、
疲れてるのか……?

“オシゴト、オツカレサマ。キョウハ寒イネ。
マァ、マァ、スワッテ。”
言われるがままに座る。
もし通行人が来てもこれなら変じゃないだろう。

“ネェチャンとこのミカン、イイミカンダネ。”
どんどんしゃべってくるやん、この雪だるま。
「まぁ……ね。なんせおじいちゃんのみかんだからね。今はお父さんが引き継いでるけど。」

“オジイチャン、優シカッタノ?”
「おじいちゃんはまだ生きてるよ、一応ね。
寝たきりなの。そうだね。優しかったね。
私おじいちゃん子だったから。」
“フーン”
雪だるま、興味ないのか?

「おじいちゃんに見せたかったな、この景色。
私の地元じゃあ雪はなかなか降らないの。」
“イマカラデモ遅クナインジャナイノ?” 
「だからおじいちゃんは寝たき……」
“写真ニ撮ッテ見セタリ、雪ノ様子ヲ教エルコトモ
デキルヨ。”
「………なるほどね。」

私はしばらく雪だるまと一緒に雪景色を見た。
就職でこっちに来て初めての冬。
それなのに何だか懐かしい感じがした。

「そろそろ行くね。」
“マタ、コエカケテネェ〜”
フランクすぎるわ!そう突っ込みながら
雪だるまにバイバイした。

***
女性の姿が見えなくなった時、
雪だるまは言った。
「あの日の約束を忘れちゃったか。」

20年前、私の地元では珍しく雪が積もった。
私は孫娘と一緒に雪だるまを作った。
「ねぇ、おじいちゃんは、しなないよね?」
不意に聞いてきた孫娘。
保育園でそんな話を聞いたのか?

「おじいちゃんは……いつか死ぬよ。
キミだってそう。生き物はみんな死ぬ運命な……」
あっ、泣いてしまっている。
「おじいちゃん、しんじゃやーーだーー」
あーー、正直に言った私がまずかった。

「じゃあ、こうしよう!
もし、もし!おじいちゃんが死んじゃったら、
キミのそばで見守ってあげる。」
模範解答じゃなかろうか…と思いながら孫娘を見る。
「………おしゃべり、できる?」
そんな返答想像してなかった!
孫娘の顔色を見ながら話をすすめる。

「無理〜かな。体がなくなっちゃうからなぁ~。
あっ、じゃあ1回だけおしゃべりしよう。
死んじゃったら、この雪だるまの体を借りることにするよ。キミがわかるように目印はおじいちゃんのみかんね。」
孫娘の顔がニコニコしだした。
「約束だよ!」

あの様子だと孫娘は20年前のことを忘れてしまったのだろう。だが、私の約束は果たせた。
「幸せにな。おじいちゃんは見守ってるからな」
***

家に帰るとお父さんから電話があり、
おじいちゃんが亡くなったということを私は知った。


おしまいです。

書いている途中で泣きそうになりました。
(え、ドン引き(笑))
最初はどうぶつの森の雪だるまを想像してたんですけど、途中からシフトチェンジしました。
物語を書いてて、最初考えてたあらすじとは
違う展開になる人もいるのかな。

ほっこりしていただけるとうれしいです。
ヘッダーを選んでいるときに気づいた。
ほら、いつもそばにいるよ!!
おおー、おじいちゃんと同じセリフ!

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