July.3 そこそこ筋肉のある男
イヴァンと共に、借りた金を返さねぇ奴らとお話し合いをし、俺は屋敷に顔を出してから帰ると伝えあいつと別行動をとることになった。
顔を出したところで特に何かあるわけでもなく、適当にいる奴と駄弁り、いい時間になったので最後に黒滝さんに挨拶をして家に帰った。
ただいまと言おうが返事は一度も返って来ないので無言で玄関を開け、リビングに向かう。明かりがついているし、テレビの音も聞こえるのであいつはきっとリビングにいるんだろうと思いながらドアを開けると、
「おや、もう帰ってきたんですか」
いた。ソファに寝っ転がっていた。
「おま…………」
全裸で。絶句した俺に対してなんだこいつみたいな視線を送っていたが、「服……」となんとか言葉を絞り出して伝えると納得したようで「あぁ」と言いながら起き上がった。
「別に男同士なんですし、そんな気にすることないでしょう?」
「いやまぁ、そうだけどよ……」
普通の野郎ならさほど気にしないが、こいつはムカつくほど顔だけはいいから、なんなら好みだし。そのせいでなんか、見てはいけないものを見ている気持ちになってくる。が、そんなこと正直に伝えても煽られるだけなのでなんとか理由をこじつける。
「ほら帰ってきて同居人が全裸で寝てたら誰でもびっくりすんだろ」
「別に僕は貴方が全裸で寝ていても気にしませんが」
「俺は気にすんだよ! いやもうなんでもいいから早く服着ろ」
投げやりに言うとやれやれみたいな顔をしてイヴァンが立ち上がる。そのまま自室に行き、着替えに向かうと思いきや急に振り返って、
「貴方、僕の顔好きですよね? だからですか?」
などとニヤニヤしながら抜かしやがる。
「うるせー! 早く着やがれ!!」
声を荒げると「怖いですねぇ」などと思ってもいないことを言い、今度こそリビングから出て行った。見抜いているくせにわざわざ言うところ、相変わらずタチが悪い。
この後、パンイチで戻ってきたイヴァンとまた一悶着あるがこのときの俺はまだ知らない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?