大学開放と社会人教育

(1)日本と欧米の大学開放の違いは何か
高等教育機関が自らの教育対象を学校外の国民にも拡張していくことを「大学開放」という。
イギリスにおいては、史上初めて産業革命を達成し、資本家階級や労働者階級の発言力が大きくなっていたことも一つの理由であるが、何よりも、近代的な産業社会の成立により、高度な技術や労働力が各方面から求められるようになったことや、人々の間に高等教育を受けたいとする学習要求が高まったことが挙げられる
「大学開放に関する書簡」に象徴されるように、イギリスの大学開放は、「理念」が先行する形で始まったのである。
日本の大学開放は、18歳人口の減少という「状況の変化」が引き金になった。両者の違いは、後に、その普及・定着の範囲や成熟度に大きな影響を与えることになる。
アメリカの公立大学の多くは、国(政府)から土地をもらい、州の大学として人々の税金によって設置運営されてきた歴史があることから、高等教育機関は州民に教育サービスを提供して当然であるという意識が一般化している
アメリカは、社会人教育や大学開放は、はじめから制度に内在する論理として「当然のこと」とされており、高等教育制度自体が生涯学習志向となっている。

(2)サービス・ラーニングとは何か
サービス・ラーニングとは、学校内での学習を踏まえつつ、地域が抱えている課題を念頭においてボランティア活動を行い、その結果について学校に戻り省察を行う、という教育手法である。
これは、理論と実践を有機的に結びつけ、市民としての責任を学ばせ、地域や社会との関係において自分の人生を考えさせる、といったことを目的に行われるものである。

(3)遠隔教育の利点と課題は何か
社会人が学ぶときに阻害要因になるものとして、しばしば「時間がない」「距離が遠い」「受講料が高い」「自分なりのペースでできない」ということが挙げられる。こうした阻害要因をできるだけ克服しようとして生み出された教育方法が「遠隔教育」と呼ばれる教育方法である。遠隔教育は、学校が提供者となって行う場合がほとんどであるが、その方法論として基本的にメディアを利用して行われるところに特徴がある。遠隔教育を導入することで、学習者は、好きな時間に、どこにいても、比較的安価で、かつ自分なりのペースで学習することが可能になり、前述の阻害要因が著しく改善されることになる。しかしながら、反対に、対面のコミュニケーションの機会が圧倒的に少なくなることから、議論やプレゼンテーションの機会が減少し、教師や同級生との人間的な信頼関係が生まれにくくなるといったデメリットも生じる。

<参考文献>
笹井宏益・中村香『生涯学習のイノベーション』玉川大学出版部,2013

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