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オフフレーバー -アセトアルデヒド-

クラフトビールはモルトやホップ、副原料と様々な香りや味わいで楽しませてくれますが、時にオフフレーバーという好ましくない香りが発生することがあります。今回はオフフレーバーの中でも“アセトアルデヒド”についてまとめてみました。

1.香り

アセトアルデヒドは一般的に、青りんごの香りとして知覚されます。

このアセトアルデヒドはりんごやバナナ、オレンジ、メロンといった果実にも存在している物質で、香りそのもの自体はフルーティな香りなので香料として食品添加物にも利用されたりしています。

しかし、ビールで知覚されるアセトアルデヒドは刺激臭も合わせて知覚され、少量のみならば青りんごのフルーティーないい香りと済まされますが、ほとんどの場合は刺激臭として知覚できるほど多量含まれることが大半なので、最後まで飲み切るのは難しいオフフレーバービールとされています。

2.発生原因

酵母由来

アセトアルデヒドは酵母によるグルコースを元にしたエタノール生成における中間生成物です。つまり、酵母は糖であるグルコースを食べアルコール(エタノール)を最終的に生成しますが、その途中段階でアセトアルデヒドを生成します。

1次発酵中に酵母の細胞からアセトアルデヒドがビール中に溶出するので、1次発酵中のどのビールにも大量に存在し容易に知覚することができます。

健全な発酵が行われれば、酵母は溶出されたアセトアルデヒドの大半を再び酵母によってエタノール生成のために消費されるので、最終的には閾値以下の濃度となることからオフフレーバーとしては知覚されません。しかし、不完全な発酵となった場合、アセトアルデヒドはエタノールへの変換が不完全となり、ビール中に残存した結果、青りんごの香りとして知覚されるようになります。

不完全な発酵となりえる条件ですが、まず酵母の健康状態が考えられます。酵母の製造・パッケージング時期、保管状態などが原因に当たります。また、発酵温度も低すぎる場合、酵母は十分に活性できず発酵不良となります。

発酵終了後においても酵母から受ける影響は非常に大きいです。酵母とビールの適度な接触期間(約10~14日間)はビールの不要物を消費してくれることが知られていますが、過度な接触期間によって酵母は自己消化を起こしアセトアルデヒドが生成される可能性もあるとされています。

酸化

1次発酵後のビールを酸素に晒したときにもアセトアルデヒドは発生します。1次発酵中に酵母により生成された中間化合物のアセトアルデヒド(CH3CHO)は酵母の健全な発酵によって、エタノール(CH25OH)に変換されます。その後、酸素に晒され酸化されることで、再びアセトアルデヒド(CH3CHO)になってしまいます。

低ホップビールではアセトアルデヒドは青りんご臭が顕著ですが、IPAなどの高ホップビールでの酸化によるアセトアルデヒドは青りんごというより梅に近い香りになる気がします。

味自体には酸味があるわけではないので、好気性バクテリアによるアセトアルデヒドとエタノール代謝由来の酢酸の生成ではないと思いますが、IPAの時だけ梅の香りになることが多いのでホップ由来ではないかと考えています。

ちなみに日本のトップを走るクラフトブルワリーのHazy IPAを飲んだ時にも同じ香りがしました。毎年造っているシーズナルビールだったのですが、その香りがしたのはそのバッチだけでした。そのバッチだけというのが疑問です。どなたか原因がわかる方教えていただけると嬉しいです。

3.対処方法

酵母対策

〇適切な量の酵母を投入する

投入量が少ない場合、酵母数に対するグルコース割合が適量時より多くなり、発酵途中で発酵不良が起きてしまいます。結果、1次発酵で生成されたアセトアルデヒドはエタノールに変換されず、知覚できるほど残ってしまいます。

投入量が多い場合は、活動することのできなかった酵母は自己消化を起こし、アセトアルデヒドなどのオフフレーバーを生成します。
では適量とはどのくらいだ?というのは、別記事でまとめたいと思います。

〇十分なエアレーションを行う

エアレーションが不足している場合、酵母が十分な酸素を取り込めず活動ができません。そのため、発酵不良となり、アセトアルデヒドが発生してしまうので、十分なエアレーションが必要になります。

ただし、メーカーによっては酵母投入前のエアレーションは不要と記載がある場合もあるので、HPなどより酵母プロフィールを確認し、判断してください。

エアレーションの必要性やエアレーション量による酵母活性の違いについては理解が乏しいので、調べ次第まとめたいと思います。

〇発酵完了前に澱とビールを離さない

完全に発酵が終了する前にビールを澱から離してしまうと、変換途中だったアセトアルデヒドが残存し残ってしまいます。十分な期間を置いたのにも関わらずアセトアルデヒドが残存している場合は、ジアセチルレスト同様、発酵温度を数度上げ、発酵を促すなどの方法をとります。

酸化対策

アセトアルデヒドは生成されたエタノールの酸化によって再度生成されてしまうため、ドライホッピング時などの過度の酸素曝露やケギング、ボトリング時の酸素への接触には注意が必要となる。どのくらい、どのような酸素曝露が問題なのかは不明なので、調べるなり、検証するなりしてご報告します。

4.まとめ(1次)

アセトアルデヒドの発生は酵母の適切な量・扱いによる影響が大きい
アセトアルデヒドの発生は酸素曝露によるエタノールよりさらに変換されるため、酸素曝露に注意が必要

具体的な時間や量といったことまで追い切れていないので、根拠に乏しいですが、今後実証実験を行い、随時ご報告できればと思います。

(アメリカ在住のきまぐれHomebrewerのTomに実証実験をお願いしているのでいつ結果がくるかわかりませんが、少々お待ちください!)

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Cominng Soon !! ~予告~

5.検証実験※後日公開

検証内容

“まとめ(1次)”よりアセトアルデヒドの発生は、酵母に対する扱いによるもの、酸素曝露によるものということがわかりました。

では具体的にどのレベルまでが許容され、どのレベル以上がアウトなのかをHomebrewingにより検証実験を行います。

発酵終了後にアセトアルデヒドへの知覚検証を行います。

検証方法

検証結果

6.まとめ(最終)※後日公開

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