今日(2023/8/6)の切り抜き


20230806わが友に贈る


20230806寸鉄

今日の「名字の言」
名字の言 きょう広島原爆忌――世界平和の実像は日常の中に2023年8月6日

 井伏鱒二の小説『黒い雨』は、原爆という未曽有の惨事を、庶民の暮らしの中に描いている。話は主人公・重松が憤る場面から始まる。めい・矢須子の見合いが「広島で被爆した」との流言によって破談に。「人の噂だけで業病扱いするとは何ごとか」。重松は当時の日記の写しを縁談先に送り、潔白を証明しようとした▼だが、日記を清書するうちに放射性物質を含む「黒い雨」を矢須子が浴びていたことに気付く。その後、原爆症を発病。「五彩の虹が出たら矢須子の病気が治るんだ」――かなわぬ願いを重松が抱いて小説は終わる▼広島のある女性部員は、学校から避難する途中に「黒い雨」を浴びた。当時11歳。「誰にも言うな」と父。差別、偏見、病弱な体……。尽きない不安を拭ってくれたのが池田先生との出会いだった▼昨年、「被爆者健康手帳」を取得。89歳になった今も独居の高齢者を訪ねるなど、地域のために尽くす。その心には“平和とは、人と人とが信頼を結ぶこと”との師の指針が深く刻まれている▼「世界平和」といっても、その実像は日常の中にある。先の女性宅の経机に置かれた御祈念帳には「『核兵器のない世界』を実現」と。大願の祈りを根本に、足元から平和を広げたい。(子)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?