喫茶店のバナナジュース

私が幼い時、父が私の子守を担当する日はよく、映画館に連れて行ってもらった。
無口な父と、父といる時は父に合わせて無口な私は、映画館でゆっくり映画を見るのがいい時間の過ごし方だった。
ある時、映画を見終わって小腹がすいた父が向かったのは、子供が喜ぶファーストフード店ではなく、渋めな喫茶店だった。
初めての場所にドキドキしていた私は、その喫茶店で生まれて初めてバナナジュースを飲んでみることにした。
大きなグラスに氷とたっぷりとねっとりとした、バナナジュースが注がれた。とてもあまくておいしかった。
喫茶店のカウンターで足が長いカウンターチェアに腰掛けながら、先ほど見たディズニー映画「ヘラクレス」のパンフレットを読みながら、足をぶらぶらさせて、バナナジュースを飲んだ。
あの時のにおいや音は、あの場所にしかない特別な時間だった。
私の中で映画とバナナジュースが固く結びついてしまった瞬間だった。

#映画にまつわる思い出

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