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宝石学試験最難関!?FGAになるまでの道のり。

こんにちは、宝石コレクターのわいたろうです。
本業ではとあるジュエリー企業に勤めています。
2022年9月から約2年間、英国宝石学会「Gem-A」の宝石学コースを受講しFGAディプロマの取得を目指して勉強をしてきました。
ようやくディプロマの試験も終わり、
手応えもありこれは合格間違いなし(???)ということで、
これまでどのようなことをしてきたのかまとめてみました。
これ、不合格だったらめちゃ恥ずかしいやつですね。
本記事は「FGAディプロマ試験の合格者」が書いたという体で
ここは一つよろしくお願いいたします。

※合否の結果は9月中旬~下旬頃わかります。
ぜひ私のXのアカウントをフォローして、
合格を祝福する、
もしくは恥ずかしいやつだと笑う準備を整えてください。
わいたろう/バイカラーの世界(@YMfleixble) / X


①日本語で学べる2つの学校

1、英国宝石学会 Gem-A ODLコース
Gem-A直通の通信コース。私が勉強していたのはこちらのコースです。
https://gem-a.com/japanese-education/
※詳しくは日本国内のGAPPセンターへお問い合わせください。
GAPP | Gem-A

2、日本宝飾クラフト学院 宝石学部 Gem-A宝石学コース
https://www.jj-craft.com/gem-a/

こちらは通信コースと通学コースの2つがあります。

現在、世界で通用する宝石学の資格は、
GIA GGとFGAが有名です。
このうちFGAは日本語の教材と設備が整っており、
日本語で学び、日本語で試験を受けることができます。
他にも、国内で得られる日本語の資格にはジュエリーコーディネーターなどがありますね。
https://jja.ne.jp/coordinator/index.html

②2つのコースと試験

ファンデーションコースとディプロマコースの2つに分かれており、
6月末には、FGAが難関だと言われる一番の要因である、
記述式の最終試験がそれぞれあります。

1、ファンデーションコース

⇨最初の一年はファンデーションコースを勉強します。
9月から宝石学の基本的なことを学び、
6月末のファンデーションの試験の合格を目指します。
途中、3日間の鑑別実技クラスが含まれます。
試験は1日、午前・午後で2つの試験です。
どちらも理論試験で、午前は基礎的な記述試験です。
基本的な鑑別器材を使用して4石を鑑別する大問から始まります。
午後はより本格的な記述試験です。
ファンデーションコースを合格するとCert-GAの資格が得られ、
ディプロマコースの受講が可能になります。

2、ディプロマコース

⇨ファンデーションコースで学んだことの更に深い部分を学びます。
6月末のディプロマ試験の合格を目指します。
途中、5日間の鑑別実技クラスが含まれます。
試験は2日間、
1日目は理論試験が午前午後の2パート、それぞれ2時間30分ずつあります。
2日目は実技試験、3時間15分で20石を様々な条件で鑑別する試験があります。
ディプロマコースを合格すると晴れてFGAの会員資格が得られます。
ちなみにディプロマの合格証書の授与式はイギリスで行われ、
世界中の合格者が集まります。
※強制参加ではありません。

③いくらする?

私が受講した2023年~2024年度のODLコースの価格を記載します。
※最新の価格についてはGem-Aや日本宝飾クラフト学院へ直接お問い合わせください。
1,ファンデーション9ヶ月コース(2022年時点)
⇨£3,650(教材費込)(2022年時点)
+3日間鑑別実技クラス費¥110,000
2,ディプロマ9ヶ月コース
⇨£4,850(教材費込)(2023年時点)
+5日間鑑別実技クラス費¥198,000
計約¥2,000,000(支払ったとき£の為替は¥170~180くらいだったと思います。)
補習クラブやレッスンを受講すると更に追加でかかります。

④何がわかるようになる?

⇨宝石の定義、結晶系、耐久性、比重、光、色、蛍光、地質学、流通経路、整形加工、ジュエリー、処理、模造石/類似石/合成石、40種類以上の宝石とその変種について、拡大(ルーペ/顕微鏡)/偏光器/分光器/二色鏡/チェルシーカラーフィルター/屈折計を用いた鑑別

⑤どうやって勉強する?

1、オンラインの専用プラットフォーム

オンラインで質問もできます。

⇨掲示板でチューター(先生)に質問ができたり、過去問やレポートのサンプルをダウンロードできたりします。
オンラインで出題される必修課題に回答したり、アセスメントと呼ばれる必修の小テストもここで受けます。
アセスメント試験はそれぞれのコースで4回ずつあり、オンラインで制限時間付きの小テスト形式で受験します。
アセスメント試験の点数は、
本番の最終試験にほんの少しだけボーナスとして加算されるため、
小テストとはいえ重要です。
最終試験とは異なり、テキストを読みながら回答が可能です。

2、教科書

中身は公開できません。ページめくりづらすぎて破れまくりです。

⇨基本は教科書を読んで勉強します。
英語だった教科書を日本語に複数人で訳しているためか、
同じ事象に対する表現がページによって異なっていたりと、
読みやすい、わかりやすい教科書とは言い難い代物です。
しかし、稀少な宝石素材やメカニズムなどが図と写真で解説されているため、
すべてセットで覚え、
教科書に書かれていることを理解して自分の言葉で記述できるようにならなければいけません。
自分の中で噛み砕いて理解して覚えるためにはチューターへの質問が必須だと思います。
あと、教科書のページがめくりづらすぎて専用のバインダーだと紙が破れまくります。みんな別の非公式のバインダーを購入して括り直してました。

3、試料石

ファンデーションで20石、ディプロマで20石。
ラインナップについてはGem-Aへお問い合わせください。

⇨教材の中には試料石が含まれます。鑑別機材の練習はこれで行えます。
ただし、最低限の内容ですので後述する実技クラスや実技の補習クラスでよりたくさんの石を見る必要があります。

4、鑑別実技クラス

コースの費用に含まれる鑑別機材。
左上・左下:ファンデーションコースに含まれる機材。
右:ディプロマコースに含まれる機材。

⇨ファンデーションは3日間、ディプロマは5日間の鑑別実技授業があります。これは通信ではなく、チューターと生徒が部屋に集まって行います。
社会人の方は、ここだけは休みを連続で取る必要があります。
それぞれのコースの範囲の宝石や模造石の実物を観察し、
鑑別機材の使用方法を学びながら鑑別方法を学びます。

5、過去問
⇨オンラインサイトから過去問をダウンロード可能です。
私の試験対策は過去問を自力で解いて、
わからない問題をわかるまでやるという方法でほぼ乗り切りました。
※過去問を見せてほしいというお問い合わせには対応できかねます。
コース受講者以外に見せてはならないようです。

6、補習クラス
⇨特にディプロマコースに関わりますが、
理論・実技ともに極めて内容が難しく高度であるため、
自力ですべてを理解して学び切るのは困難です。
そこで理論と実技の補習クラスが試験前の数カ月間、定期的に行われます。
試験対策という意味合いでは、チューターから回答の核心や配点の重要ポイントを教えてもらえるためこれを受ければ受けるほど合格に近づきます。
一切受けなくても合格は不可能ではないとは思いますが、
膨大な範囲の内容を理解するためには時間があまりにもかかるため、
理解を早める手段として非常に重要です。
ただし、補習クラスは有料です。
私はそこまでお金に余裕がなかったので理解しづらかった科目に重点を置いて補習を受けました。

⑥結局何が難しい?

1,記述式の理論試験

ディプロマの午後の理論試験に使われる、
もはやただのノートと化している答案用紙。
別紙で出題用紙もあります。

前述の通り、試験はすべて記述式です。
100点満点としたとき、60点を取れば合格です。
あれ?それなら楽勝では?と思われるかもしれませんが、
この60点というのがかなりのハードルです。
例えば、「蛍光とはなにか」を説明する配点が2点の問題があったとします。
宝石学を学ぶ前の私なら、
「紫外線を当てると赤色や青色などに光る効果」と答えると思います。
別に間違ってはいないのですが、これでは完答には程遠く、
2.0点中0.5点がもらえるかどうかといったところです。
ディプロマコースまで学んだ受験者は、
「紫外線やX線などの高エネルギーの放射を受けて電子が励起し、
基底状態に戻るときに生じる、熱を伴わない可視光の発光」といったような詳細な回答が必要です。
さらに、高エネルギーの放射を受けた原子が基底状態にもどるまでの流れを説明するラベリングされた図を描き、
具体例を挙げる必要もあるかもしれません。
ここまでしてようやく2点が得られるかどうかです。
つまり、2点の配点に対して0.5点ずつの重要なポイントが4箇所ほどあり、
採点者しかわからない重要なポイントをすべて満たした回答が完答となります。
もし配点が4点ならポイントは8箇所、
配点が10点ならポイントは20箇所あります。
うろ覚えで回答したところでろくに点数が得られません。
このような問題が大量に出題されるなかで、
60/100を取る難しさが伝わりましたでしょうか。
ディプロマの理論試験は午前午後ともに2時間半ずつ、休み無くペンを走らせなければ答案を埋めるのには追いつかず、考える間もなく即答していかなければ間に合いません。
頻出問題ばかりであればとにかく書き込むのみですが、
重箱の隅をつつくようなとんでもない問題も混ざってきます。

2、ミスが許されない実技試験
ディプロマの実技試験は
拡大検査のみで結晶原石や有機素材を鑑別する5石、
正確な屈折検査が試される3石、
正確な分光検査が試される2石、
そして、
拡大(ルーペ/顕微鏡)/偏光器/分光器/二色鏡/チェルシーカラーフィルター/屈折計/蛍光ランプ/液浸
のすべてを駆使してレポートする総合検査が試される10石
の計20石を3時間15分以内に鑑別します。
さらに、実技試験は鑑別用の宝石の情報が細かく記載された鑑別ハンドブックを持ち込むことができます。
ただ、試験中にいちいち読んでいる時間はほぼありません。

理論と同様60%を超えれば合格ですが、
総合検査10石のうち、結論、つまり何の石なのかという点で3石以上誤ると強制的に不合格になります。
これは、例えばサファイアという点で正解していても、
天然か合成かで間違えたり、張り合わせやガラス充填処理、拡散処理を見逃たりしても誤りとなります。
私は数回開催された模擬試験では落ち着いて時間内に完答できていたのであまり心配をせず当日の試験を迎えたのですが、
当日はテンパりまくって結果を導き出すのに時間をかけすぎてしまい、
時間ギリギリまで必死に検査していました。
もっと実技の補習クラスに参加して練習をするべきだったと今では思います。

3、模範解答が存在しない
過去問はオンラインでダウンロードして解くこと可能ですが、
普通は存在するはずの模範解答がありません。
代わりに、エグザミナーズレポートという採点者による総合的な所感レポートのようなものはありますが、これ読んでも答案の核心ポイントがわかりません。
採点をするには教科書を見直して重要そうなポイントを自力で拾うか、
チューターに依頼して採点をして貰う必要があります。
課題として提出した試験などはそのまま採点・添削してもらえますが、
自主的に行った過去問の答案を採点してもらうには追加料金が必要になります。
模範解答と言わずとも、
受験者としての気持ちとしては解答例は用意されてあって欲しいというのが正直な感想です。
過去問の反復を中心とした勉強をする上で非常に困りました。
いくら解いても完答できているか自信がつかないまま本番を迎えることになります。
模範解答に近いものを得るための一番の近道は、
有料の補習クラスにたくさん参加し、
頻出の問題に対してチューターのお墨付きを得た解答をまとめあげることです。

⑦2年間の勉強の感想

・勉強方法について

←ファンデーション試験前に解いた過去問    ディプロマ試験前に解いた過去問→
紙の量で比べると同じくらいになりました。
ファンデーションの試験は写真も多く、
出題もディプロマに比べればシンプルなので、記述する量はそこまでですが、
ディプロマは短い小問に対して長文の記述が必要なため、内容量は3倍ぐらいは違います。

私は学生時代からノートを作ってまとめるのが昔から非常に苦手で、
字も汚く、手を動かしてペンを走らせることに苦痛を感じる人間です。
好きって人もそんなにいないでしょうが・・・。
周りの同期はしっかりと教科書の各章ごとの重要なポイントをノートにまとめられていて感心したものです。
私には耐えられませんでした。
代わりにキーボードのタイピングは大好きなので、
スマホアプリに単語帳アプリを登録し、
PCで単語帳アプリの編集用データをとにかく作りまくり、
スマホの単語帳アプリにインポートし、
通勤中の電車の中でひたすら単語帳アプリで覚えるということを行っていました。
このアプリに2年間お世話になりました。最高のアプリです。
https://www.langholic.com/wordholic

しかし、記述式の理論試験は当然ペンで答案用紙に長文を書き込む必要があり、図を描いたりや典型的な結晶の形のスケッチもできなければなりません。
こればかりは仕方なく、試験前の2ヶ月~3ヶ月ほどで過去問をひたすら反復で解き続け、なんとか当日の試験のための感覚を掴みました。
ノートをほとんど作らなかった分、
同期よりも勉強時間の総計は少ないかもしれません。
スキマ時間の単語帳での勉強を含め、
平均したら1日1時間くらいだと思いますが、
特にディプロマ試験まで一ヶ月を切ったあたりからは平日は2~3時間、休日は8~10時間くらい詰めて勉強していました。
一日でとある年の午前午後の過去問を解くと2.5時間×2で5時間かかりますので、正しく解答できているかの自己採点の時間をいれると結局10時間くらいになります。
なお、ディプロマ試験3-4ヶ月前から科目ごとの有償の補習クラスが開催されており、
苦手科目に関しては補習クラスに参加して頻出問題に対する模範解答に近しいものをなんとか用意し、試験に臨みました。

⑧終わりに

ディプロマ試験に合格するとFGAの会員資格が得られます、
しかし、毎年の会費を支払わなければFGA会員を名乗ることはできません。
FGAはGIA GGに次ぐ世界的な宝石学の資格ですので、
ネームバリューに惹かれた部分は当然あるのですが、
名刺に書けること以外にもたくさんのメリットを享受できると思っています。

FGAは小さい頃からずっと憧れていた資格でしたので、
これに合格できたことは一つ夢が叶った瞬間でした。
私は胸を張って宝石のプロフェッショナルだと言えるようになりたいと、
今でも思い続けています。
その礎となる素晴らしいカリキュラムでした。
感覚というよりも理論派な、
宝石のことが大好きな方には特におすすめできます。
費用はかかりますし、正直、非常にしんどい2年間になります。
宝石が好きな人ならモチベーションはきっと保てます。
ぜひ挑戦してみてください。

ご不明点ありましたらわいたろうのX(Twitter)のDMへお問い合わせくださいませ。

https://twitter.com/YMfleixble

わいたろう

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