人間的自由に達するためにデザインを生きる

どこからどこまでがデザインなのか、そこに境界線はない。

デザインは、生きることそのもの。

呼吸するように、デザインを生きる。

はじめに

本書は、「武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第四回(6/8)川上元美さん」の講義レポートである。

講師:川上 元美(かわかみ もとみ)さん
1940年兵庫県生まれ。1966年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。1966年〜69年アンジェロ・マンジャロッティ建築事務所(ミラノ)勤務。1971年川上デザインルーム設立、現在に至る。
日常ワークとして、クラフト、プロダクト・デザイン、家具、空間、環境デザインなどの仕事を手がけている。また、各地方産業や人材の育成にも従事している。東京藝術大学、金沢美術工芸大学、多摩美術大学、神戸芸術工科大学等、客員教授歴任。
日本インテリア・デザイナー協会賞、アメリカ建築家協会(AIA)主催チェア・デザインコンペ1席、毎日デザイン賞、国井喜太郎産業工芸賞、土木学会・田中賞、IF賞、日本パッケージデザイン大賞、Gマーク金賞など受賞。

出典:designers.jp

誰もが知る、日本デザイン界の巨星。デザインのジャンルを超え素晴らしいデザインの数々、そしてデザインの探求、流行や時代を超え記憶される作品多々。今なおデザインの未来を追い続ける方である。

遊ぶようにデザインを生きていく

その時代の優れた素材と、最適な技術を結びつけ、プロダクト、家具、インテリア、橋、多くの活動、多岐に渡るデザインを生み出されて来た川上さん。

川上さんの頭の中の引き出しには経験や知識が宝石のように散らばっていて、その点と点がどこか繋がり、デザインとなって世に生み出されていく。

お話を伺い、人柄に触れると、川上さんはまさにブルーノ・モナーリのことばそのものだと感じた。

「子どもの心を 一生のあいだ 自分の中に持ち続けるということは 知りたいという好奇心や わかる喜び 伝えたいという気持ちを  持ち続けるということ」 

好奇心を起点に、多くのことに興味を持ちインプットすることで、自分の引き出しがどんどん増えていく。それは遊ぶように好奇心を持って生きることの証しであり、デザインというカタチになっているのは結果にすぎない。

人間的自由に達するためにデザインがある。武蔵野美術大学が目指す人材とは、まさに川上さんのような方なのだろう。デザインを通じて社会と向き合い、豊かさを追求していく。こどものように、キラキラと好奇心を持って人生を自由に生きることの素晴らしさ、自由さ、そして難しさ。

おわりに

仕事に向き合っていると、ある種の矛盾を抱えながら余白もなくそこに没入し、気づかないうちに何かを擦り減らしている。この大学院で学んでいることは、自由で創造的で執念を持った遊び心であり、自由に生きることのような気がしている。少年に戻って生きていくために、私は大学院に来たのかもしれない。そんな気づきを与えてくれた講義となった。

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