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2021年海外ドラマ マイ・ベスト10

2021年も終わりです。今年鑑賞したドラマは103本でした。
みなさんにぜひ知っていただきたい、2021年度マイベスト海外ドラマはこの10本です。(2021年12月15日までに配信されたものが対象)
      【海外ドラマファンのためのマガジン第131回】

10位『Mr.コーマン』AppleTV+

AppleTv+で、8月6日から配信されたダークコメディ『Mr.コーマン』。
このドラマ、事前情報まったく無しで鑑賞したのですが、ハマりました。

主人公のジョシュ・コーマンは、小学校の教師なのですが、かつては、自分で曲を作る活動もしていて、ミュージシャンとして成功する人生を夢見ていたんです。
でも、結局教師になって、夢は破れてしまった。
教師として子供に教えることにはやりがいも感じるのですが、やはり「自分の人生、これでいいのか」っていうやりきれなさを抱えているんですよね。

夢と現実の間で、「自分の人生、こんなんはずじゃなかった……」
と、思うことは誰にでもあることだと思うのですが、それをあえてドラマティックに描かないところが、「そうそう、わかる」という共感を生んでいます。

主演のジョセフ・ゴードン=レヴィット(『500日のサマー』)の絶妙な普通の人っぽさが、やりきれなさを抱えた一般人という役柄を最大限に引き出していて、ものすごく親近感がわきました。
1話30分で全10話なので、気がつけばあなたもイッキミしてしまうことでしょう。

9位『秘密結社ベネディクト団』Disney+

原作はトレントン・リー・スチュワートの『秘密結社ベネディクト団』という児童小説。小学生の子どもたちが主人公の冒険コメディです。

児童小説の定番ともいえる、「友達と一緒に世界の危機を救う」というミッションを与えられた4人の子どもたちが、とにかく輝いているディズニープラスオリジナルドラマにピッタリの冒険物語です。

子役たちが、目覚ましい活躍をしているのですが、特にレイニー役のミスティック・インショーくんは、堂々としていてバッチリ印象に残る俳優です。
海外ドラマファンには、大人の俳優たちにも注目してもらいたくて、ベネディクト氏役には、『Veep』のトニー・ヘイルが配役されていて、怪演しています。
また、『ウォーキング・デッド』シーズン9以降に登場するウィスパーラーズのベータ役だったライアン・ハーストも出演しています。

8位『ホイール・オブ・タイム』Amazon Prime

今年一番、「予想外に面白かった!」と言いたいのがAmazon Primeの『ホイール・オブ・タイム』です。
原作は、ロバート・ジョーダンの累計9000万部を超えるベストセラー小説シリーズ「時の車輪」。
鑑賞前には、「かなり本格的なファンタジー小説だ」と想像していたので、ドラマ化されたときに世界観を把握するのが難しいかな?と不安を抱いていました。
ところが、見始めてみると、とてもわかりやすく作られていました。


魔法が存在する世界で異能者(アエズ・セダーイ)と呼ばれる女性、モイレイン(ロザムンド・パイク)が、世界を救う存在になるはずの竜王の生まれ変わりを探すという物語。

大人のファンタジーなので、戦闘シーンや恋愛もありですが、『ゲーム・オブ・スローンズ』と比べると、かなりソフトなので、入り込みやすいと思います。
竜王の生まれ変わり候補の5人の若者たちも魅力的です。

7位『テッド・ラッソ破天荒コーチが行く』シーズン1&2AppleTV+

アメフトのコーチのアメリカ人が、英国プレミア・リーグのサッカーチームの監督になる。という奇想天外なコメディ『テッド・ラッソ 破天荒コーチが行く』は、コロナ過の世界に笑いと寛容さをもたらしました。

このドラマを見ていると、争うのは簡単だけれど、相手を理解しようと努力することは難しいと思い知らされます。

アメリカとイギリスという同じ言語を話す国でさえ、両国で育ってきた人々の思考や行動はまるで違うのです。
でも、異文化に触れたときに、「自分の知っていることと違う。」と、相手を完全に否定しているだけでは、理解が深まらないですよね。

「自分を知ってもらいたければ、まず相手を知る」
主人公のテッドは、この考えを心に持ちながら、その上で自分流を試みます。
今、この文章を書いていて、寛容さって、これからの世界に最も必要なものなんじゃないかな?とさえ思いはじめました。

コロナ過で、世界中の人達が外出できず、ストレスが溜まっていた時期に配信され、多くの人々に暖かい笑いを届けたという意味でも、主演のジェイソン・サダイキスを含む制作陣にお礼を言いたい気持ちです。

6位『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』HBOMax

1980年代のイギリス、ロンドン。
夢を抱いた5人の若者たちが、青春を謳歌する物語です。
ただ、彼らの周りでは、その当時は死の病気だったHIV/エイズが流行しはじめていました。

1980年は、今から41年前……
現在では治療薬を飲めば発症を抑えられるHIV/エイズですが、当時は、薬もなければ、なぜウィルスに感染するのかもわからない状態です。

ゲイの人達の間で大流行したので、差別も生まれました。
もともとあったゲイ差別にプラスして、エイズという病気による差別が加わります。

その真っ只中にいた、ゲイの若者達と一人の女性が、エイズという未知の病気に翻弄される様子をしっかりと描いたドラマです。

今も昔も、若者は純粋で無鉄砲。だからこそ知っておいてほしい歴史が、このドラマに詰まっています。〈日本での配信:U-NEXT〉

5位『フライト・アテンダント』シーズン1 HBOMax

クリス・ボジャリアンの小説をベースにしたサスペンスコメディ。『ビック・バン★セオリー』のケイリー・クオコが、アルコール依存ぎみのフライト・アテンダントを演じています。


ケイリー演じるキャシーは、殺人事件に巻き込まれてしまうのですが、身の潔白を証明するために、いらぬ奔走をしていまい、さらに墓穴をほってしまうというドタバタ感のあるストーリーに魅了されました。

ケイリー・クオコは、ドタバタさせたら超一流ですが、今回は殺人事件というサスペンスの要素もあるので、シリアスな演技を魅せていて、このコメディとサスペンスバランスが絶妙なので、続きを見たくてイッキミしてしまいました。
全8話、あっという間です。シーズン2も早くみたいな。
〈日本での配信:U-NEXT〉

4位『メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実』HBOMaX

映画女優×HBOMaxのリミテッドシリーズ。今回は、ケイト・ウィンスレットが主人公です。
過去には、エイミー・アダムズ主演の『シャープ・オブジェクト KIZU-傷-:連続少女猟奇殺人事件』や、ニコール・キッドマン主演の『フレイザー家の秘密』など、高い評価を受けているリミテッド・シリーズがありました。

どちらもいわゆる「イヤミス」作品だったのですが、この『メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実』も、分類的にはそうなるのかな。
でも、他の2作に比べると、「イヤ」な部分はそこまで目立たないというか、とにかく主演のケイト・ウィンスレットの素晴らしさに目を奪われてしまうドラマになっています。

世界的な映画女優であるケイトが、「ほぼノーメイクなんじゃないの?」という風貌で、田舎の警察官を演じているのですが、それが妙にセクシーで、人間味を感じてしまいました。
ミステリーとしても、もちろん「極上」の仕上がり。
犯人が誰なのか知りたくて、つい次回を見てしまう、これもイッキミ必須の名作です。〈日本での配信:U-NEXT〉

3位『ディキンスン~若き天才詩人の憂鬱~』シーズン2&3AppleTV+

才能がなかなか認められないとか、恋愛に悩んでいるとか、仕事がうまくいかないとか……
生きるって、楽しいことばかりじゃないですよね。

今年は、コロナ禍2年目で、「コロナ疲れやストレスを感じた」という人も多いと思います。
わたしも、その中のひとりで、特に今年の前半は、コロナ疲れで、負の思考に支配されがちでした。まったく文章を書けなくなった時期もありました。

そんな精神状態に陥ってしまったときに、「もう一回がんばってみるか」と前向きな気持にさせてくれて、背中を押してくれる存在が、ドラマや映画、小説、音楽といった芸術だと思うのです。

今年、私の背中を推してくれたドラマはこの『ディキンスン~若き天才詩人の憂鬱~』です。
主人公は、19世紀アメリカの詩人エミリー・ディキンスン。
現在25歳のヘイリー・スタインフェルドが、いまから約200年前に実在した人物を演じています。
ディキンスンのような才能豊かな人でさえ、毎日悩んでモヤモヤした日々を過ごしていたのかと思うと、単純ですが少しホッとしました。

ビリー・アイリッシュなど、現代の音楽を使った疾走感のある演出で、まったく古臭くない世界観なので、ぜひ多くの人に見ていただきたい作品です。

2位『ザ・モーニングショー』シーズン2AppleTV+

2019年のAppleTV+ローンチ時のメインドラマとして制作された『ザ・モーニングショー』。ジェニファー・アニストンとリース・ウィザースプーンという、高い人気と実力を兼ね備えた二人の女優が主人公を演じます。

朝のニュース番組『ザ・モーニングショー』のセクハラスキャンダルが発覚したことで、TV局のセクハラ体質が問われるという、かなりリアルな物語。

シーズン1は、リアルすぎるテレビ局での女性の扱われ方に、見ているのも辛くなってしまうくらいセクシャルハラスメントについて真正面から描いていました。
今年10月に配信されたシーズン2も同じような感じだったら、「見るのツライな」と思っていたのですが、これがまた少し違う角度からセクハラについて考えさせるストーリー展開になっていました。

加害者にも被害者にも未来があるわけで、やってしまったことからどのように未来に向かっていけばいいのか、探る視点を加えています。

日本でも、ここ数年で、社会は変化しつつあります。過去の世界では問題視されなかったことが、現在では完全にアウトになってしまうことも発生します。
過去の自分の行動が、意図せずセクハラやパワハラの加害者や傍観者になってしまっていた可能性もあるのです。
「そういう風潮の社会だったから」というエクスキューズで済ませてしまえば、過去の自分と向き合わずに済みますが、それだけではやはり世の中は変わっていかないと感じています。
過去の自分の言動を、「時代のせい」にできないのって、精神的にキツイなと自分を振り返ってもそう思います。
だけど、過去は変えられないから、グレーゾーンだった当時の言動について自分なりに向き合って分析することからはじめてみようと、いま、コレを書きながら思い初めました。

ジェニファー・アニストンが演じている主人公のアレックスも、自分の過去を考えたくもないけど、責任の有無を問わずにはいられない状況に立たされています。彼女は、TV局内のセクシャルハラスメントの、傍観者でもあり、被害者の一面もある。
加害者と親しい友人でもあり、彼の言動を容認していたと思われても仕方がないという過去を抱えていながら、セクハラを告発したヒーローでもある。
アレックスのこの複雑な心境を、シーズン2では丁寧に描いていました。

アメリカのドラマが素晴らしいと思うのは、TV局でのセクハラの実態という、いわば身内の触れられたくない部分を、ここまで深堀りして問題の根本を追求しようとするその姿勢です。
それこそが本物のジャーナリズムだし、クリエイションの根本だと感じさせてくれるます。もちろんエンタメとしても面白いんですよね。 

1位『メイドの手帖』リミテッド・シリーズNetflix

私の場合、コロナ疲れの症状が一番ひどかったのが、今年の4月頃です。
ストレスがマックスになりました。コロナ禍で在宅勤務になったので、24時間ずっと夫と一緒に過ごすことに疲れました。
ひとりになりたい。
そう強く思ってしまい、夫に相談したら、
「じゃあ、ホテルにでも泊まってきなよ。」
と言ってくれたのです。

なので、ゴールデンウィークに一日だけ、都内のホテルに一人で宿泊してきました。
家事から開放されて、誰にも邪魔されず一人で自由に過ごす時間のありがたさを痛感しました。
でも、夜、ホテルのベッドで就寝するころには、「やっぱり自宅のほうがいいな。」と、夫との二人暮らしの家が恋しくなっていました。

ホテルに一泊して、完全なる一人だけの時間を過ごしたことで、ストレスが解消されたのです。
自分だけの時間を過ごすということの大切さを実感しました。

『メイドの手帖』というドラマは、自分だけの時間を作ったことで、人生が変化した女性の物語です。
彼女の場合の自分だけの時間とは、「書くこと」でした。

主人公は、作家をめざして大学に進学したものの、妊娠してしまい、出産のために大学をやめて主婦になったアレックスという若い女性。
彼女と同年代の夫も、妻と娘のことは愛しているものの、養わなければいけないというプレッシャーで、直接殴りはしないのですが壁をなぐったり、物を割ったりして妻に恐怖心を植え付けていきます。

いわゆるDVの被害者が、幼い娘を連れて家を抜け出し、DVシェルターに入り、清掃の仕事をしながら人生を立て直していくというストーリーです。

マーガレット・クアリーが演じる主人公のアレックスは、幼い娘を食べさせるために安い賃金で必死に働きますが、その生活には、自分のためという部分が完全に抜け落ちていました。
自分の時間がないというのは、どんな状況の人にとっても、ツライものなんじゃないかと思うのです。

そんなときに彼女を救ったのが、「書くこと」です。
もともと「作家になりたい」と思っていたくらいなので、書くことが好きなアレックスは、掃除のために訪れた家での出来事をノートに書き綴っていきます。
娘が眠っている間に、ノートに向かって書くという行為が、アレックスのストレスを解消していきます。
書くことで、自分を救っていくのです。

ただ、書いている時のアレックスは、「これを書けば救われる」などとは考えていません。
書きたいから書いていく。それだけです。

このドラマ、実話を元につくられています。
ステファニー・ランドの自叙伝「メイドの手帖 最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語」から発想を得た物語です。
実際に、「書くこと」で自分を救った女性の物語。
1ミリ程しかない希望からも、自分の力で未来を広げることができる。
そう信じさせてくれた物語で、2021年のストレスフルな心に栄養を与えてくれました。
今年一番、「出会えてよかった」
と思ったドラマです。


以上が、今年のマイ・ベスト海外ドラマ10本です。
コレをかきあげて、ようやく私の2021年も終了できます。
2022年の新たな出会いに希望をいただきながら、2021年を終えたいと思います。

みなさんも、良いお年をお過ごしださい。


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