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神社の神事でも茶道でも、女性は必ず扇を手に持ちます。
しかし、舞を舞うときや、意匠として描かれる時は必ず開いた形になる。
扇ってどちらの形が正式なんだろう?という疑問をずっと持っていました。
そんな時に、吉野裕子さんの「扇」を読んで改めて扇について考えさせられました。


今でこそ扇はあおぐ為の道具に過ぎませんが、元は風を表す呪具でした。そこからあおいだ風で魔を祓ったり、広げた形が数字の八になることから末広がりで縁起が良いということで、着物や調度品の意匠として描かれるようになったようです。
古代の檜扇の出土品は糸で閉じてはおらず、菱形の箱に入っていたことから、元々は開いた形が正式で、あおぐという用途は、紙の扇(扇子)が普及してからのことだそうです。
ちなみに、扇と聞くと扇子と団扇を連想しますが、団扇は中国から輸入したもの、扇子のように摺りたためる機能は日本人が独自に考えたものだそうです。


これまで扇の起源は蝙蝠とされていましたが、吉野氏はビロウの葉が起源という説を立て、更に御幣と同じく元々は神の依り代だと結論づけています。確かに、神楽舞にも扇を持つ演目は多数ありますし、この論文を面白く拝見しました。
毎日のように扱うものなのに扇の精神性って考えたことがなかったので、民俗学の奥深さを感じた1冊でした。

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