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トラウマと向き合うには【ZINEレビュー】
ZINEフェス東京の前日、私はX (旧Twitter)でお品書きのポスト(旧ツイート)を探していた。
一冊のZINEが気になった。
『ごめんなさい、今年の年末年始は、ひとりで生ハム食べるって決めてるから、実家には帰りません。』
なにそれ、面白そう。
早速、当日は筆者のブースへ行き、「実家に帰らなかった本ください!」と言った。
(その際にレビューを書く可能性を話したところ快諾してくださった。感謝。)
手にしたのがこの本だ。
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そして、読了。
私は著者のサチさんの家族を全く知らない。どんな人で、会えば何を喋りどんなアクションを起こす可能性があるのか。
だが、サチさんの母親が、
サチさんの心に対して、良い方向の変化を与える相手ではない、ということは分かった。
「そんな相手とは距離をとろう!」という言説が最近の潮流ではあるが、
私の実家がある田舎では、「親は産んでくれた恩人なんだから感謝して生きなさい」みたいな言説がセンターを張っているので、年末の帰省を辞めた私は完全に<親不孝者の娘>だ。
閑話休題。
サチさんの心には、幼少期からの楽しい思い出がちゃんと残っている。
だからこそ、車で20分の距離を帰省しないことに"後ろめたさ"を感じてしまうのではないだろうか。
やーはち氏の著書「毒親育ちが大人になってから」のレビュー(下記参照)でも書いたことだが、
親が子供に与えるものは愛情であるべきだ。
申し訳なさや後ろめたさではない。
まして、恐怖やトラウマではない。
サチさんは本文の中で、こう残している。
このZINEを書いている間ずっと、責められている気がして、怒られている声が聞こえてきて、怖い。
サチさんが素晴らしいのは、その感情を描写できている事だ。強い人だと思う。
自分が恐怖を感じるものについて、人は目を背けたくなる。
幽霊の正体見たり枯れ尾花。
正体を知ってしてしまえば怖くない事だってある。
でも、怖い。
そう、分かっていても怖いものは怖いのだ。
自分のトラウマとは、少しずつ、気が向いた時に、好きなやり方で向き合っていきたい。
その勇気をこの本から貰った。
2025年1月15日